7-15 隠密行動2
フィアが指さす先に視線を向けて……大通りのど真ん中、その地面に引っ張って開けられそうな蓋が付いていた。おい、まさかあれなのか?
「いやぁ、あれは、無理だろ」
「もしかして、あそこにある蓋の事? 近くをロボットがたくさん行き交ってるけど」
「幾らセンサーを誤魔化せるとはいえ、あそこに突っ込んだら見つかってもおかしくないですよ。流石に無謀ではないですか?」
「うん、そう。そうよね。どうしようか? あはは……」
見えないが全員が苦笑いしているのが分かる。
エページュ様に用意してもらったジャミング装置は俺達でいう所の「あれ? 勘違いかな?」と思わせる程度に誤魔化す装置だって話だ。
流石に数十、数百体ものロボットが行き交う中を通れば異常と検知される可能性が高い。
もしかしたら上手くやれば見つからないかもしれないが、それを試すにはリスクが高過ぎる。
相手は瞬時に情報を共有出来るロボットだからな。存在を知られてしまえば取り囲まれて脱出が不可能になってしまうだろう。
カミンさんと合流も出来ていないこの段階で無理をするわけにはいかないよな。
「フィア、カミンさんのいる所ってどの辺なんだ? 遠いのか?」
「えっと、大雑把にここから千キロって所かしら」
「せっ、は? 遠すぎないか?」
「んー、その距離だと飛んでいきたいね。あれ? そうだよ、飛んでいっちゃ駄目なの?」
「駄目ね。空は地上以上に厳重に警備されているみたいだから、姿を隠したとしても見つかる可能性が高いらしいわ」
「そっかぁ、残念」
「千キロって、地下通路ってそんなに続いているんですか? もしかしてそれって列車が走ってるのでは?」
「当たり、多分地下通路を通って線路に着いたら地下鉄に飛び乗る感じね」
「飛び乗るって、なかなかアグレッシブな方法を提案するなぁ。なぁ、そういうことなら他にも入り口があるんじゃないのか?」
「あるとは思うけど今の私達に見つけられるかしら? もっと簡単なルートがあればそっちを提案してるだろうし」
「まぁ、そうだよな。なぁ、このルートってカミンさんが送ってきたんだよな?」
「緊急信号と一緒にルートとかの情報も送られてきたって話だから、カミンさんの提案でいいと思うけど」
「つまり、現地民が考える合理的なルートって事ですよね。それなら腹を括るしかないでしょう」
そう言ってフォレオが何かを取り出した。
それって、いつもの狙撃銃とロケットランチャー? 光学迷彩の所為で銃とロケットランチャーだけが浮いているように見える。
「ちょっ、何出してるんだよ」
「何って、フォレオスペシャル一号と三号ですよ」
「いや、そういう事じゃなくてさ」
「問題は通行量が多い事なんですから、適当な騒ぎを起こして動きを止めるなり何なりすればいいのですよ。三人とも、いつでも行けるように構えてて下さい。やりますよ!」
「ちょっ、えっ、いいのか? いいんだな?」
「ほら雷人、腹を括りなさい。フォレオに任せておけば大丈夫よ。こう見えてこれまでに幾つも依頼をこなして来てるんだから」
「よーし! それじゃあ入り口の蓋を開けるのは私に任せて! 髪を巻き付けておいたからいつでも開けられるよ」
シルフェまで手際が良い……だと! あぁ、くそ。だったら俺は……。
「全力で走り抜ける。全員俺に捕まれ!」
その時、フォレオが両手にそれぞれを構えて引き金を引くと上空に撃ち出された弾が鋭角に曲がって空中で衝突し、大きな爆発を作り出した。
大通りを行き交うロボット群が足を止めて爆発を見つめる。
そんな中を俺はフィアとフォレオを両脇に抱え、シルフェを背中に背負いって全力で走る。
目立ってしまうフィアの炎が使えない今、全員を抱えて俺が走るのが一番速い。
フォレオの起こした爆発の陽動に加え、シルフェの光学迷彩とエページュ様のジャミング装置も合わされば一瞬で通り抜ける俺達を補足するのはロボットとはいえ難しいだろう。
声を出せば流石にバレてしまうので心で叫びながら走り抜け、タイミングよくシルフェが開いた穴に飛び降りた。
いやぁ、隠密行動には向かないとんでもないコースを指示してきましたね。
本当に脱出する気があるんでしょうか。
現地民が考える合理的なルート……ヤバいですね!




