7-13 密入星の強行
どうも、Prasisです!
早いもので本作も400話を迎えました。
この調子でいけば次章で500話も行けるかな?
引き続き頑張りますので、応援よろしくお願いします!
うーん、真っ暗なので誰のどこに体が当たっているのかはさっぱり分からないが、そこかしこから柔らかい感触がする。
最初はどうにか体勢を整えようとしていたのだが、どこに触れてしまったのか誰かの扇情的な声が聞こえた所で諦めた。
もう遅いかもしれないが、俺は社会的な死を避けるべくどこに触れているかは確認しないし、もう動きもしない。
……でも、耳元からフォレオの声が聞こえるという事はこの頭の下の柔らかさはフォレオの……いや、考えるのは止めよう。
「それよりフォレオ。耳元で騒ぐのは止めてくれないか? ただでさえ狭くて身動き取れないんだからさ。俺は今耳も塞げないんだぞ?」
「それより? それよりって言いましたか? それに何で平然としてるんですか? 女の子三人と男が密着状態で長時間とかおかしくないですか? おかしいですよね? 何で平然としてるんですか?」
「あはははは、大事な事だから二回言ったんだね」
「……そもそも雷人はフィアのか、彼氏になったんですよ。他の女性とのスキンシップは避けるのが当然です。こんな状況は流石に心優しい女神なフィアでもいい気はしませんよ」
「それを言われると耳が痛いな。でも、そうは言ってもなぁ」
コンテナの中は暗いのでよく見えない。
表情が見えないのでフィアがどう思っているかは確かに分からないんだよな。
相手は見知らぬ相手ではなくフォレオとシルフェだし、事情も分かっているのだからフィアが怒ることはないだろう。でも、それが本心かと言われればそれはまた別の話だ。
そんな事を考えていると、フィアは予想通りに落ち着いた声で返答した。
「まぁまぁ、不可抗力だししょうがないわよ。ん……それよりフォレオあんまり動かないでよ。その……当たるでしょ?」
「あた……、雷人! 耳を塞いで下さい! この状況はあまりにもあんまりだと思うのですよ!」
フィアの扇情的な声に俊敏に反応したフォレオが俺の頬を思いっ切り挟んだ。ぱぁんっと良い音が響いた。
「いたっ! ちょっ、そこは耳じゃなっ!?」
「んぅ、ちょっとフォレオ。だから動かないでって言ってるじゃない」
「あー! あー! あー!」
「だから耳元で五月蠅いって!」
狭いコンテナ内だというのに耳元でフォレオの大声が響き耳が痛い。
もうなりふり構ってはいられず思いっ切り手を引き抜いて耳を塞いだ。
その時、頬を挟んでいたフォレオの手がスライドして俺の口の中に滑り込んだ。
「もがっ!? ほひっ! ほほはふひは!」
「にゃーっ!? 生暖かいぬめっとした感触が!」
「ちょっ、暴れないでっ! たっ! もうっ! フォレオ! 流石に怒るわよ!」
滅多な事では怒らないフィアが遂に怒りを露わにした。
碌に身動きが取れず、口の中と耳に拷問を受けている身としてはそのままの勢いで是非ともフォレオを止めて頂きたい。
そんなひっちゃかめっちゃかな状況の中、一人黙っていたシルフェが呟いた。
「いた、いたた。もー、皆暴れないでぇ。あれ? あ、なんかそろそろ着くみたいだね。それじゃあ、えいっ!」
「へ?」
「え?」
「あ……」
ガラガラガラッと盛大な音を立てながら光が差した。
暗闇に慣れていた眼には外の光は眩しすぎて何も見えない。
目元を手で覆いながらゆっくりと辺りを確認すると……切り刻まれたコンテナの壁と何やら驚いた表情で俺達を見ている船員達の姿が見えた。
周りを囲む船員達は銃で武装をしていて、明らかにこのコンテナに異変を感じていたみたいだ。
「……あー、まぁあれだけ騒げばバレるよな」
「ちょっ、うちの所為だって言うつもりですか?」
「実際そうよね? 反省しなさい」
「えっと、何でもいいけど早くしよう? もう着くみたいだよ」
【本艦は間もなくマキナウォルンに到着します。着陸時に揺れる危険がございますので、安全のためどこかにお掴まり頂くようにお願い致します。繰り返します。本艦は……】
艦内にマキナウォルン到着を知らせるアナウンスが流れていた。
なるほど、シルフェはこれを聞き取っていたのか。
船員達は密航者がコンテナを破壊して飛び出してくるとは思っていなかったのか、慌てた様子でどこかに向かって逃げ出した。
俺達を捕まえるための増援を呼びに行っているのか、それともマキナウォルンに知らせようとしているのか。どっちにしてもまずい。
見ていた船員は……六人か。
動きはあまり良くない。これなら出来そうだ。
「よし、密入星完了までバレないために目撃者を捕まえるぞ」
「そうね。それじゃあフォレオとシルフェはあっち、雷人は私とこっちをやるわよ」
「了解! 修業の成果を見せるもんね!」
「むぅ、不本意ですが自分の失態は返上します。行きますよ!」
そして戦闘能力がほとんどなかった船員達をあっさりと捕まえた俺達は、縛って適当な部屋に放り込むとシルフェの光学迷彩を使って密入星を敢行したのだった。
*****
足場もなく床を這う無数の配線。広く金属質な部屋の奥にポツンと一つの椅子があった。真っ暗な中、その椅子には小柄な少女が座っていた。
宙に浮かぶホログラムのような無数のウインドウが周囲を球形に囲んでいて、その光が長い白銀の髪を照らしだす。
暗い部屋の中で、その白銀の髪は月の光の様に綺麗に輝いていた。
それに対してうっすらと影が差す少女の顔がふいに上がり、その雪の様に真っ白な肌が露わになる。
「……応答、侵入者ですか? そうですか、本当に来たのですね。把握……そうですね。とりあえず泳がせましょう。分からないように追跡してその様子を逐次報告をして下さい。……外の人間ですか。何か企んでいるのだとしたらその真意、私が見定めてあげましょう」
その表情はどこか悲し気で、しかし僅かに微笑んでいた。
ちらっとですがマザーが登場しました!
あっさりと侵入がバレてしまった雷人達、果たしてどうなる!?




