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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
マキナウォルンデイズ 第七章~マキリスエスケープ~
401/445

7-13 密入星の強行

どうも、Prasisです!

早いもので本作も400話を迎えました。

この調子でいけば次章で500話も行けるかな?

引き続き頑張りますので、応援よろしくお願いします!

 うーん、真っ暗なので誰のどこに体が当たっているのかはさっぱり分からないが、そこかしこから(やわ)らかい感触がする。


 最初はどうにか体勢(たいせい)を整えようとしていたのだが、どこに触れてしまったのか誰かの扇情的(せんじょうてき)な声が聞こえた所で(あきら)めた。


 もう遅いかもしれないが、俺は社会的な死を()けるべくどこに触れているかは確認しないし、もう動きもしない。

 ……でも、耳元(みみもと)からフォレオの声が聞こえるという事はこの頭の下の(やわ)らかさはフォレオの……いや、考えるのは止めよう。


「それよりフォレオ。耳元(みみもと)(さわ)ぐのは止めてくれないか? ただでさえ(せま)くて身動き取れないんだからさ。俺は今耳も(ふさ)げないんだぞ?」


「それより? それよりって言いましたか? それに何で平然(へいぜん)としてるんですか? 女の子三人と男が密着状態(みっちゃくじょうたい)で長時間とかおかしくないですか? おかしいですよね? 何で平然(へいぜん)としてるんですか?」


「あはははは、大事な事だから二回言ったんだね」


「……そもそも雷人はフィアのか、彼氏になったんですよ。他の女性とのスキンシップは()けるのが当然です。こんな状況は流石(さすが)に心優しい女神(めがみ)なフィアでもいい気はしませんよ」


「それを言われると耳が痛いな。でも、そうは言ってもなぁ」


 コンテナの中は暗いのでよく見えない。

 表情が見えないのでフィアがどう思っているかは確かに分からないんだよな。


 相手は見知らぬ相手ではなくフォレオとシルフェだし、事情も分かっているのだからフィアが怒ることはないだろう。でも、それが本心かと言われればそれはまた別の話だ。


 そんな事を考えていると、フィアは予想通りに落ち着いた声で返答した。


「まぁまぁ、不可抗力(ふかこうりょく)だししょうがないわよ。ん……それよりフォレオあんまり動かないでよ。その……当たるでしょ?」


「あた……、雷人! 耳を(ふさ)いで下さい! この状況はあまりにもあんまりだと思うのですよ!」


 フィアの扇情的(せんじょうてき)な声に俊敏(しゅんびん)に反応したフォレオが俺の(ほほ)を思いっ切り(はさ)んだ。ぱぁんっと良い音が響いた。


「いたっ! ちょっ、そこは耳じゃなっ!?」


「んぅ、ちょっとフォレオ。だから動かないでって言ってるじゃない」


「あー! あー! あー!」


「だから耳元で五月蠅(うるさ)いって!」


 (せま)いコンテナ内だというのに耳元でフォレオの大声が響き耳が痛い。

 もうなりふり構ってはいられず思いっ切り手を引き抜いて耳を(ふさ)いだ。


 その時、(ほほ)(はさ)んでいたフォレオの手がスライドして俺の口の中に(すべ)()んだ。


「もがっ!? ほひっ! ほほはふひは!」


「にゃーっ!? 生暖(なまあたた)かいぬめっとした感触が!」


「ちょっ、暴れないでっ! たっ! もうっ! フォレオ! 流石に怒るわよ!」


 滅多(めった)な事では怒らないフィアが(つい)に怒りを(あら)わにした。

 (ろく)に身動きが取れず、口の中と耳に拷問(ごうもん)を受けている身としてはそのままの勢いで是非(ぜひ)ともフォレオを止めて頂きたい。


 そんなひっちゃかめっちゃかな状況の中、一人黙っていたシルフェが(つぶや)いた。


「いた、いたた。もー、皆暴れないでぇ。あれ? あ、なんかそろそろ着くみたいだね。それじゃあ、えいっ!」


「へ?」


「え?」


「あ……」


 ガラガラガラッと盛大(せいだい)な音を立てながら光が差した。

 暗闇に慣れていた眼には外の光は(まぶ)しすぎて何も見えない。


 目元を手で(おお)いながらゆっくりと辺りを確認すると……切り(きざ)まれたコンテナの壁と何やら驚いた表情で俺達を見ている船員達の姿が見えた。


 周りを囲む船員達は銃で武装をしていて、明らかにこのコンテナに異変を感じていたみたいだ。


「……あー、まぁあれだけ(さわ)げばバレるよな」


「ちょっ、うちの所為(せい)だって言うつもりですか?」


「実際そうよね? 反省しなさい」


「えっと、何でもいいけど早くしよう? もう着くみたいだよ」


本艦(ほんかん)は間もなくマキナウォルンに到着(とうちゃく)します。着陸時に()れる危険がございますので、安全のためどこかにお(つか)まり頂くようにお願い致します。繰り返します。本艦は……】


 艦内(かんない)にマキナウォルン到着を知らせるアナウンスが流れていた。

 なるほど、シルフェはこれを聞き取っていたのか。


 船員達は密航者(みっこうしゃ)がコンテナを破壊して飛び出してくるとは思っていなかったのか、(あわ)てた様子でどこかに向かって逃げ出した。


 俺達を捕まえるための増援を呼びに行っているのか、それともマキナウォルンに知らせようとしているのか。どっちにしてもまずい。


 見ていた船員は……六人か。

 動きはあまり良くない。これなら出来そうだ。


「よし、密入星完了までバレないために目撃者を捕まえるぞ」


「そうね。それじゃあフォレオとシルフェはあっち、雷人は私とこっちをやるわよ」


「了解! 修業の成果を見せるもんね!」


「むぅ、不本意(ふほんい)ですが自分の失態(しったい)は返上します。行きますよ!」


 そして戦闘能力がほとんどなかった船員達をあっさりと捕まえた俺達は、(しば)って適当な部屋に放り込むとシルフェの光学迷彩を使って密入星を敢行(かんこう)したのだった。


*****

 足場もなく床を()う無数の配線。広く金属質な部屋の奥にポツンと一つの椅子(いす)があった。真っ暗な中、その椅子(いす)には小柄(こがら)な少女が座っていた。


 宙に浮かぶホログラムのような無数のウインドウが周囲を球形に囲んでいて、その光が長い白銀の髪を照らしだす。


 暗い部屋の中で、その白銀の髪は月の光の様に綺麗(きれい)に輝いていた。

 それに対してうっすらと影が差す少女の顔がふいに上がり、その雪の様に真っ白な(はだ)(あら)わになる。


「……応答、侵入者ですか? そうですか、本当に来たのですね。把握(はあく)……そうですね。とりあえず泳がせましょう。分からないように追跡してその様子を逐次(ちくじ)報告をして下さい。……外の人間ですか。何か企んでいるのだとしたらその真意(しんい)、私が見定めてあげましょう」


 その表情はどこか悲し気で、しかし(わず)かに微笑(ほほえ)んでいた。

ちらっとですがマザーが登場しました!

あっさりと侵入がバレてしまった雷人達、果たしてどうなる!?

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