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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第一章~デーモンフォール~
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1-38 絶対忘れてただけだろ!

 この仮想空間はよく出来ている。

 しかし、完全に現実を再現しているわけでは決してない。

 現実と大きく異なる点、それは痛みである。


 前回、フィアに腕を飛ばされた雷人は現実で腕を飛ばされた事があるわけではないが、案外こんなものなのかと思った。


 確かに最初はめちゃくちゃ痛かったが、その痛みはあまり継続せず、しばらくしたらほんのり気になる程度になっていた。


 そうでなければ戦い続ける事が出来たかどうか、怪しいものである。

 その後の訓練で誤って怪我をした時に感じた痛みの痛いこと痛いこと。


 俺は仮想空間では痛みが軽減されている事を身をもって知っていた。

 そして、たまたまフィアから現実でも仮想空間程度にしか痛みを感じなくなる装備の存在を聞き、全力で頼み込んでそれを貰った。


 欲しい物がすぐに手に入る。何とも贅沢なものだ。この会社凄いなと改めて思い知らされた。

 しかし、そんな物があるならどうして最初から言ってくれなかったのかとフィアに尋ねると、


「……相手の痛みは知っておくべきでしょ? それは、私達の義務みたいなものよ」


 などと言っていた。

 フィア、その時目を逸らしてたよな? 絶対忘れてただけだろ!


 とまぁそれはそれとして、俺には戦いには痛みは邪魔なものにしか思えなかったが、無かったら無かったで怪我をしている事を忘れてしまったり、気付かなかったりして無茶な動きをしてしまう事があり危険なんだとか。


 やはり、何事も程々が一番なのだろう。引いてきた腕の痛みに俺がそんな事を考えていると、距離をとるために歩いていた目の前の少女がくるりとこちらを振り返り聖剣を構えた。


「ふぅ、それじゃあ再開しますね。今度こそ……遠慮は無しです」


「いつでもいいぞ」


 雷人はすぐに動けるように属性刀を構えつつ返答した。

 それを合図に少女は聖剣を上に(かか)げた。


 形状変化(フォームレス)による攻撃が来るだろうと思い身構えていると、彼女は腕を振り下ろして聖剣を地面に突き立てた。


 何をしているのかは分からなかったが、まず間違いなく意味のある行動だ。

 止まっていては危険と判断し、前方に向かって全力で駆け出した。


 すると次の瞬間ボコッ! という音と共に地面から複数の棘のように変形した聖剣が突き出してきた。


 すぐに動き出したのが功を奏し、何とか躱すことが出来た。

 なるほど、地面の中を通して見えないように攻撃をしてきたんだな。


 またも自分の足元の土が膨れ上がるのが見えたが、気付いてしまえばどうということはない。雷人は一気に加速し、周りにある大きめの岩の上を蹴って跳び回る。


 さすがに岩は土のように容易く貫く事は出来ないはずだ。

 そんな状態で高速で動き回る俺を捉える事は出来ないだろう。


「考えたな唯。だけど、俺には相性が悪いぞ!」


 雷人は空中に足場や盾を作りながら、時に避け、時に盾で防ぎながら唯に接近する。


「さすが雷人君、凄いです。全然当たる気配がありませんね。でも!」


 俺は左側から襲って来た聖剣を弾きながら、それを見た。

 唯は周りの地面に四本の聖剣を刺したまま聖剣を構えていた。


 すぐさま逃げ場を探るが、聖剣が上手い具合に配置されていて前方と上方にしか逃げ場が無かった。


「逃げ道を塞いだのか、やるな」


 俺は目で唯を(にら)みながらも口元に笑みを浮かべた。唯はそれに笑顔で返し、聖剣を大上段に構えた。


 なるほど、これが切り札か。振り上げられたその聖剣はとてつもない規模の光の奔流(ほんりゅう)(まと)っていた。


「終わりです。ありがとうございました!」


「こっちのセリフだよ!」


 その状況に俺は笑みを消さなかった。属性刀を放り投げ右手で構えた銃の形、その先に溜めておいた全ての弾が集まり一つとなる。


 溜め込んだ電気を一気に放出する俺の切り札、どっちの切り札が強いか勝負といこう。


 そして、俺達は同時にその莫大なエネルギーの奔流(ほんりゅう)をたがいに向けて放った。


「浄化の光を! 聖なる光線セイクリッド・フォトンレイ!」


「打ち砕け! 授雷砲(じゅらいほう)!」


 双方が放った全力の一撃は、ちょうど中間の位置でぶつかるとその余波だけで辺り一面を吹き飛ばし、一帯を光で包み込んだ。

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