7-7 エページュ・ラルセイ
兵士の案内で城の中を歩いていく。
景観は流行で変わるという事だったが、城内の内装までしっかりとスチームパンクな感じを醸し出していた。
周囲を照らす明かりも暖色系の物が多く使われ、アンティークな印象を保っている。匠人族はなかなかに凝り性なんだな。
フィアと一緒に周囲の景色を楽しみながら歩いていると、案内してくれていた兵士がある扉の前で止まった。
「エページュ様の工房はこちらになります。それでは、私はこれで」
「ありがとう。助かったよ」
ロナルドさんが扉にスッと近付いてノックすると返事の代わりに扉が開いた。
そのまま中に入って行ったので、俺達も続いて中に入ると、そこは明らかに邦桜よりも進んだ文明といった内装の部屋だった。
一言で言えば未来の研究所。ディスプレイのようなものは存在せず、ホログラムのような画面が空中に投影されている。
技術開発研究所でも一部見た事はあったが、ここは全てがそうなっているみたいでよく分からない機材とテーブルと椅子、その他はホログラムによって賄われていた。
「凄い……でも一気にスチームパンク感はなくなったな」
「そうね。でもこれはこれでテンション上がらない? うちだと仮想空間でもないとここまでの最先端な部屋はないもの」
「ふん、一々俗世間の流行なんぞに乗っていられるか。機能美が足りんだろう、機能美が」
思ったよりも近くで響いた貫禄のある声に反射的にそちらを向く。
するとほんの数メートル横、何もなかったはずの空間が揺らいだ。
このタイミングからして刀神の登場か。
そういえばあのアルチザン様の弟だからな。とすれば一体どんな巨漢が……。
「ん?」
揺らぎから誰も出て来ない? いや、目の端に何かが見え……。
そこにはあのレジーナよりもさらに小さい、身長一メートルくらいの小さなお爺さんが立っていた。
「ちっさ!」
「あ? 誰がチビじゃこらぁ!」
「おわっ! すみませんっ!」
思わず声が出てしまいブチギレられてしまった。
この人、ゴーグルをつけてイカしたお爺さん技術者といった見た目の顔なのに想像以上に背が低い。いやこれ、下手したら小学生よりも小さいぞ。
「うちの者がすみません。お久しぶりです、エページュ様」
「ふん、兄貴から連絡を受けた時は冷やかしにでも来たのかと思ったが……もしやお前が何か碌でもないものでも見たのか?」
「いえ、今回は何も。ですが、近付いてはいるのかもしれませんね」
険しい顔のエページュ様を見て不思議に思ったのか、フィアが「近付いてるって何の話かしらね?」などと聞いてきた。
俺はさっきから冷や汗がだらだらだ。
いつ爆弾発言が飛び出すか分かったものではない。
俺は努めて平静な顔を装った。
「さぁな。俺にはさっぱり分からん」
「まぁそうよね。……ねぇ、汗が凄いけど大丈夫? ここそんなに暑いかしら?」
「大丈夫だよ。ちょっとテンションが上がり過ぎただけだから」
「今テンション上がる要素あった?」
フィアが心配そうにこちらを見つめているが、言ってしまったものは仕方がない。俺はポーカーフェイスに努める。俺には言い訳の才能はなかった。
「それで、俺に何の用だ? まさかそこの小僧と小娘の刀を打てというんじゃないだろうな? 俺の刀は頼まれれば打ってやるほど安い物じゃないぞ」
「ははは、まさか。そのような事は言いませんよ。せっかく来たので顔を見せに来ただけです」
「ふん、顔を見せにか。それにしては家出小僧もおらんようだがな」
「ふふふ、ウルガスも頑固なところがありますから、まだその時ではないのでしょう」
「そうかよ。あの小僧が何を考えとるかは知らんが、変な意地を張りおって。まぁいい。おい、そこの小僧と小娘、お前らが普段使ってる獲物を見せてみろ」
「え?」
「見てくれるんですか?」
突然エページュ様からそう言われ、俺達は驚いた。
ちょくちょく話に出ていた刀神が登場です!
せっかくだから武器を強化してくれないかな~。くれないかな~。
となればお決まりのあれが必要ですよね。




