表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
マキナウォルンデイズ 第七章~マキリスエスケープ~
394/445

7-6 王城にご招待

王城(おうじょう)招待(しょうたい)しよう」


 そう言ってパチンとアルチザン様が指を()らすと一瞬にして景色(けしき)が変わった。いや、転移したのか。転移時の光すらなかったが何かの能力だろうか?


 そこは(おそ)らく謁見(えっけん)の間というやつなのだろう。

 王が座るのであろう豪華(ごうか)椅子(いす)が階段の上にあり、周囲を武器を持った匠人族(ヴェルナーノ)達が囲んでいた。


 アルチザン様は椅子に向かって歩きながら周囲に立っていた匠人族(ヴェルナーノ)達に声を掛けた。


「悪いが皆の者、しばらく席を(はず)してくれ」


 アルチザン様の言葉が意外だったのか警備達が一瞬どよめき、一番上等そうな装備を身に着けた兵が前に出た。


「失礼致します。お言葉ですが陛下(へいか)、外の者を(まね)いているのに警備が席を外すというのは流石(さすが)不用心(ぶようじん)ではないでしょうか?」


「構わん。彼等(かれら)(わし)客人(きゃくじん)だ。加えて、ここは儂の城だ。不用心という事はあるまい」


 警備の人の言う事はもっともだと思うが、アルチザン様の一歩も引かぬ態度に流石に折れたらしく、一歩下がった。


「……仕方(しかた)ありません。それでは我々は部屋の外で待機しておりますので、何かあればお呼び下さい。総員、退場!」


 リーダーらしき男の声掛けで匠人族(ヴェルナーノ)の兵士達が部屋を出ていく。

 命令には従っているものの内心は納得出来ていないのだろう。こちらを(あや)しんでいるのか視線が痛かった。


 そして最後の一人が外に出たタイミングでアルチザン様が腕を一振り、すると扉がやんわりと光った。


「これで話の内容は(そと)には()れん。自由に話してよいぞ」


配慮頂(はいりょいただ)感謝(かんしゃ)します」


「そうしなければならんだろう。大勢の前で事情(じじょう)を説明するわけにもいくまい。さて、フィアよ。大きくなったな。(わし)のことは分かるか?」


「はい、もちろん(ぞん)じています。少し前まで知らなかったのですが、私のためにお力を()して頂いていたと聞きました。心より感謝致(かんしゃいた)します」


 普段あまり(かしこ)まる事のないフィアがしっかりと頭を下げて丁寧(ていねい)言葉遣(ことばづか)いをしている。王様なのだし当たり前だが、それだけ(えら)い人だという事なのだろう。


 いや、これまでフィアの身内(みうち)以外の(えら)い人には会ったことなかったな。フィアはしっかりしているし、俺が知らなかっただけか?


 そんな事を考えながらフィアの事を見ていると、アルチザン様は俺の方にも目を向けて来た。


「それで、そこの者がフィアの()り人か?」


「私の()り人……ですか?」


 薄々(うすうす)分かっていた事だが、アルチザン様はフィアの事情(じじょう)把握(はあく)しているみたいだ。


 一体どんな立ち位置なのか。気にはなるがそれよりも、今はフィアがいるから失言(しつげん)に気を付けなければ! フィアは確かに当事者(とうじしゃ)だが、絶対に事情を知られてはいけないのだ!


「ちょっと変わった言い回しだけど、恋人(こいびと)って言いたいんじゃないか?」


「え? あ、恋人(こいびと)? ……そうね、そう。そうです」


 不思議(ふしぎ)そうにしていたフィアに小声で(ささや)くと(ほほ)()め、ブツブツと言いながら両手の指を(から)ませ始めた。


 よし、疑ってはいなさそうだ。こちらの様子を察したのかアルチザン様がロナルドさんに視線を送っている。何やら目配(めくば)せをしているようだ。


 恐らく意味合い的には「話していないのか?」「話していません」と言ったような内容だろう。そういう大事な事は事前に伝えておいて欲しい。


 俺はアルチザン様がこちらに視線を向けたのを確認し、(ひざ)()いて頭を下げた。


「お目に()かることが出来て光栄(こうえい)です。フィアの恋人(こいびと)の成神雷人と申します。どうぞ(よろ)しくお願いします」


「あぁ、宜しく頼む。……それで、今回の件は黒き力(ネグロマイト)(おさ)える耳飾(みみかざ)りが(こわ)れたから()えが欲しい、だったか?」


「えぇ、その通りです。あれはアルチザン様以外には作ることが出来ませんので、こうして依頼させて頂きに来ました」


「あぁ、そうだな。(こわ)れて発散したばかりなら当分は大丈夫なはずだが、(ねん)を入れておくのは良い事だ。だが今は手元に材料が無い。まずはそれを取りに行かなければな。そなた達も付いて来るといい。知っておいた方がいいだろう」


「そうですね。知っておいた方が良いでしょう」


「はい、そのつもりです。お手数をお掛けしますが、お願いします」


 知っておいた方が良い? 話の流れからして黒き力(ネグロマイト)に関する事だよな。

 ディビナさんとロナルドさんは何のことか分かっているみたいだし、もったいぶらずに教えておいてくれればいいのに。


(わし)は少し準備をする必要がある。その間、弟にでも会ってきたらどうだ? それも必要だろう」


 アルチザン様はなぜか俺の方を見ながらそう言った。

 弟……確か刀神(とうじん)と呼ばれている人だったか?


 赤城さん達の剣、そして封印刀(ふういんとう)ケラディウスを打った名匠(めいしょう)……か。確かに興味(きょうみ)はあるな。


「分かりました。ご厚意(こうい)(あま)えさせて頂きます」


「よろしい。ではそのようにしよう」


 アルチザン様が(つえ)で床をコンコンと(たた)くと匠人族(ヴェルナーノ)の兵士が一人入って来た。


「客人達をエページュの所に連れていけ」


「はっ、承知(しょうち)しました。それでは皆様、どうぞこちらへ」


 そうして俺達は兵士の案内に従って部屋の外へと出たのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ