―トゥーナ6―
「へーい! 皆、ノッてるかーい!!」
「いえーい!!」
「……な、何だこれは?」
ついさっきまで厳かで神秘的な感じだったのに、最後の一人のお祈りが終わるやいきなり周囲が明るくなり、霊人族達の非常にポップなダンスが始まった。
はっきり言って意味が分からない。
いつの間にか服も露出の多い衣装に変わってるし。
「だ、台無しではないか!?」
「ユ―! そう言うのは野暮ってものじゃろ? 外界では祭と言えば歌って踊ってのドンちゃん騒ぎだという話は聞いておるぞ! しめっぽい降霊祭はここまでじゃ! 祭と言えど時代とともに移り変わるもの! レッツパーリィナイじゃあっ!!」
「いえーい!!」
周りの客やサイオル殿達もこの霊人族達の変貌ぶりにはポカーンとするしかなかった。
しかし、郷に入っては郷に従えという。霊人族達がそれでいいというのであれば! それを全力でサポートしてやるのが粋な計らいと言うものだ!
「ふははははは! 良いだろう! 戻って来た魂達も楽しい方が良いに決まっている! おい、お前達! 全力で盛り上げてやろうではないか!」
「よ、よーし、あたしも踊っちゃうぞー!」
「お、俺はどうすればいいんだ?」
「そういう事であれば、私も宴会用に用意した隠し芸を披露すると致しましょう」
「よーっし、ニア!」
「ふふ、えぇ、分かりましたわ。それでは派手にいきましょう」
周囲が広く光を発したかと思うと突然中央に現れる舞台。
周囲を何色ものライトが照らし、爆音のスピーカーが霊人族達の村にポップな音楽をまき散らした。
それを見て皆は一瞬惚けていたようだったが、もはやこのような場となっては黙っている方が不自然というもの。自然と歌って踊ってのどんちゃん騒ぎが始まった。
「あ、あははははは! いいわね。凄く良いわ。降霊祭なんていうから厳かでもっとつまらないものだと思っていたのだけれど、凄く楽しいわ!」
「ふはははは! チームに入った記念だ! トゥーナも全力で楽しめよ!」
「そうね。全力で楽しむとするわ! クマのパレード!」
トゥーナが叫ぶとクマのぬいぐるみが溢れ出し、ニアから楽器を受け取るとクマ達のパレードが始まった。そんな、大騒ぎの夜はあっという間に過ぎていき、気付くと朝を迎えていた。
「そなた達、今回の祭りは凄く楽しかったぞ! 絶対に次もまた来るのじゃぞー!」
「いえーい!!」
何やら気に入られたようで霊人族総出で山の麓まで送られ、俺達はその余韻を残しつつもサイオル殿を町まで送り届けた。
「ふぅ、これで依頼は達成だな」
「はい、皆さんのおかげで父にも報告することが出来、楽しい旅をすることが出来ました。本当に感謝しています。皆さんに依頼して本当に良かったです」
「ふむ、そう言われるとこちらも引き受けた甲斐があるというものだ。また何か機会があればよろしく頼む」
「はいこちらこそ」
こうして依頼を達成した俺達はトゥーナを連れてホーリークレイドルへと帰還するのだった。
*****
「そういえばあんた達、人数も増えて来たんだしそろそろチームの名前とかは決めないの?」
トゥーナの登録が無事終わった頃、チームのオペレーターであるミネアがそんな事を言いだした。しかし、チームの名前だと?
「そんなものあったか? 俺は知らないのだが、誰か知っているか?」
「いえ、私は知りませんわ」
「知らん」
「うーん、あたしも知りませんねぇ」
「私が知っているわけないでしょ?」
ふむ、誰も知らなかったらしい。
「そっかぁ、まぁ名前つけてなくても問題はないし、こういうのって結構意見が食い違ったりしちゃうから付けない事も多いのよね。でも、私としてはあった方が良いと思うんだけどなぁ。ほら、一体感って大事じゃない?」
ミネアが指を立ててウインクをする。
しかし、チーム名か。確かに一体感があっていいかもしれないな。
そう思っているとニアが胸に手を当てて前に出た。
「確かに一体感は大事ですが、別にチーム名が無くとも私達には一体感があると自負していますわ」
「ふむ、確かにそうだがチーム名というのも悪くないだろう。よし、この際だから考えてみようではないか。ちなみに我がライバルのチーム名は何と言うのだ?」
「ん? 我がライバルってフィアちゃんのチームの事?」
我がライバルはフィアではなく雷人の方だ。
ミネアは知らなかっただろうか?
「そうではないが、そうだ」
「あはは、どっちよ。でも、フィアちゃんのチームもチーム名はまだ決まってなかったはずよ。聞いた事ないし」
「む、そうなのか。まぁ、仕方がないな。さて、それではどうするか。何か良い案はあるか?」
「あたしは何でもいいよ!」
「俺はそういうのを考えるのは苦手だ。任せる」
「そんな大事な事は入ったばかりの私が決める事じゃないわね」
「誰も考える気がないではないか!?」
何でもいいが一番困るという事を知らないのか?
そっちがその気ならレオン率いる警備隊とかにしてやろうか?
嫌だろ? 嫌であろう? などと心の中で悪態を吐いているとニアがスッと手を挙げた。
「それでしたら、私達はあの夜に五人のチームになりましたわ。あの降霊祭、ユリンさんの光を全員で見ましたよね。だから、灯火に集いし者たち、トーチクラウドなんてどうでしょう?」
おぉ、何かそれっぽいではないか? レオン率いる警備隊よりも百倍は良い。流石はニアだな。
そんな事を考えて頷いていると、何やら全員の視線が俺に集まっているのを感じた。うん? なぜニアではなく俺を見る?
「灯火ね。なるほど、確かに私達は光に集まったのかもしれないわね」
「そうだね! あ、虫じゃあないけどね?」
「俺は良いと思う」
「含みのある視線が少し気になるが……確かに良い案だ。流石はニアだな」
「いえ、それほどでもないですわ」
「ミネアもそれで問題なかろう?」
「うん、思ったよりいい名前で安心したわ。レオン君とかネーミングセンス無さそうだし」
ぐ、ミネアめ、鋭いではないか。
しかし、一応俺はこのチームのリーダーだ。表立って認めるのは止めておこう。
「それはひどくないか? 何にしても、これで決まりだな。今日から俺達は灯火に集いし者たちだ! 皆、宜しく頼むぞ!」
「おー!」
こうして、俺達灯火に集いし者たちは正式にチームとなったのだった。
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特に何か共通の目的があるわけではありませんが、彼らは一つの光の下に集いました。
やはりチームには軸となるリーダーが欲しいものですね。雷人達は軸がぶれてますが……あはははは。
さて、これにて幕間灯火に集いし者たちは終了となりますが、少しだけおまけを添えたいと思います。
次回、「おまけ-お菓子作り-」お楽しみに!




