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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
幕間―灯火に集いし者たち~トーチクラウド~―
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―トゥーナ2―

 さて、出立(しゅったつ)当日の朝となった。昨日はニアに頼んで十分な備品を作ってもらい、余った時間で観光を楽しんだ。


 この星の特産であるソフラン牛からクロフィが直接血を吸おうとした時には(あせ)ったものだが、ソフラン牛を使ったステーキやシチューは何とも絶品で、皆の気分も絶好調だ。


 まったくもって準備は万端だ。後は依頼をきっちりとこなすのみ。そう意気込んで皆で町を囲う城壁の外を目指す。その道すがら、レオン達の行く先で突然悲鳴(ひめい)が上がった。


「何事だ? お前達、様子を見に行くぞ」


「えぇ、急ぎましょう」


 急いで悲鳴の聞こえた方へ向かうと、そちらから群衆(ぐんしゅう)が走って向かってきた。どうやら何かから逃げているようで、その群衆(ぐんしゅう)を押し分けて進むと何やら一人の少女が男の集団に囲まれている現場に遭遇(そうぐう)した。


 少女は何やらひらひらとした、所謂(いわゆる)ゴシック・アンド・ロリータと呼ばれるタイプの服装に身を包んだ、見た目十歳ほどの少女だ。


 クマのぬいぐるみを大事そうに(かか)えている辺りがその幼さを強調(きょうちょう)している。その少女がどういうわけか二十人ほどの男達に囲まれているのだ。


 一体何があったのかは知らないが、少女一人に対してこの数の男達というのは尋常(じんじょう)ではない。男達は全員が物騒(ぶっそう)な武器を所持(しょじ)しており、中には既に抜いている者もいた。


 恐らくそれが原因で誰かが悲鳴(ひめい)を上げ、それに()られて民衆(みんしゅう)がパニックを起こしたといったところだろう。


「仕方ない。お前達、仕事ではないがこの状況で見過ごすのは主義に反する。助けに入るぞ」


「あぁ」


「分かりました!」


「はい、行きましょうか」


 同意を得るや大きくジャンプして男達の輪の中に入るとレオン達は少女を囲むようにして男達の前に立ちはだかった。


「あぁ!? 何者だお前ら!」


悲鳴(ひめい)が聞こえたので来たのだが、状況を説明してもらえるか?」


「そのなり、衛兵(えいへい)じゃあねぇな。おい! いきなり出て来て何を言ってるんだ? てめぇ。お前もぶっ殺されたいのか!」


(おだ)やかじゃないな。俺達は少女一人をどうしてこんな大人数で囲んでいるのか、その説明を求めているのだ。(おそ)ってくるというのなら反撃(はんげき)させてもらうぞ」


「うるせぇ! 正義(せいぎ)気どりしてんじゃねぇよ! 俺はそいつに俺達を虚仮(こけ)にした落とし前をつけさせねぇと気が済まねぇんだよ! おい、お前ら! こいつ等もまとめてやっちまえ!」


「おおっ!」


 男達は全員が武器を抜き放つと一斉(いっせい)(おそ)い掛かって来た。全くもって血の気の多い事だ。


「問答無用か。ニア、シュタント、クロフィ! 死なない程度に(たた)きのめすぞ!」


「了解です!」


「分かった」


「了解ですわ!」


 三人に指示を出すと、レオンは真正面から(おそ)い掛かって来た三人の武器を刀で軽々と切り飛ばし、三人(まと)めて()り飛ばした。


「ふんっ!」


「あいったー!」


「あいったぁ!?」


「あ、あいったああああ!?」


 三人は十メートルほど吹き飛ぶとゴロゴロと転がってもう起き上がらないようだった。


 その他も、ニアの空気銃で吹き飛んだり、シュタントの大剣で(なぐ)られて吹き飛んだり、クロフィに(なぐ)られて吹き飛んだり、なぜか全員があいったぁ! と(さけ)びながら吹き飛んでいく。


 その掛け声で吹っ飛ばされるのが流行(はや)っているのだろうか? それにしても……。


「想像以上に弱いな。だから()れているとも言えるか?」


「て、てめぇら何者だ! 俺達にこんなことをしてただで済むと思ってんのか!? 俺達は泣く子も(だま)るカイゼル一家だぞ!」


 カイゼル一家? 確かサイオル殿の言っていたこの辺りで有名だという盗賊(とうぞく)か。


「なるほど。それを聞いては()がすわけにはいかんな。ニア!」


「分かっていますわ!」


 ニアベルはレオンに名前を呼ばれるや手を天高く(かざ)した。すると盗賊達の上に(あみ)が現れ、盗賊達に(から)みついた。


「な、どこから!? 何だこれ! (から)みついて()がせねぇ!」


「しまいだな」


 レオンは網が絡まって身動きの取れない男に向かって近付いていくと(こぶし)を振り上げた。

 それを見て男は顔を青くする。必死に網を外そうとしているようだが、藻掻(もが)けば藻掻(もが)くほどに網は絡みつくばかりで外れる気配はない。


「ま、待て、悪かった。悪かったから」


「誰が待つものか。自身の行いを反省(はんせい)するのだな」


「ぐぎっ!? あ、あいったぁ……」


 レオンが男の頭目掛けて(こぶし)を振り下ろすとゴスッと言い音が響き、男は気を失って倒れた。


「レオ君! こっちも終わりましたよ!」


「こっちもだ。これで全員だな」


「もう安心ですわ」


 いつの間にか他の男達もニア達によって捕縛(ほばく)されていた。そして、騒ぎを聞きつけて来た衛兵達にスムーズに身柄(みがら)を引き渡すことが出来た。


 さて、襲われていた少女の方は無事だろうか? そう思い振り返ると少女はこちらをじーっと見上げていた。


「危ないところだったな。大事(だいじ)無いか?」


「えぇ、問題ないわ。ありがとう。それにしてもあなた達強いのね。もしかして傭兵(ようへい)なのかしら?」


 少女は見た目通りの可愛らしい声だったのだが、こんな事態の後だというのにやけに落ち着いていた。見た目に反して少し大人びている印象だな。


 あの数の荒くれ者に囲まれていたのだから、てっきりもっと取り乱しているものと思ったのだが。存外強いのだな。


「まぁ、そのようなものだな。問題なさそうで何よりだ。どうしてあのような連中に(から)まれていたのかは知らんが、今回助けられたのは偶々(たまたま)だ。今後は気を付ける事だな」


「えぇ、そうね。ご忠告(ちゅうこく)ありがとう。ところでお兄さん達、相談があるのだけれど。私をお兄さん達のチームに入れてはくれないかしら?」


「……は?」


 小さなゴスロリ少女は(わず)かにほほ笑みながらそんな事を言った。レオン達は少女の突然の提案に全員が言葉を失うのだった。

 ……小さい見た目で落ち着いてるのっていいですよね。


 今回の幕間ラストとなるトーゥナ編は6話+おまけ1話の予定となってます。

 ちょっと長めですがどうぞお付き合い下さい。

 というわけで次回「トゥーナ3」、お楽しみに!

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