表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
幕間―灯火に集いし者たち~トーチクラウド~―
381/445

―ヘイゼル・ディン・レオン2―

「ん……うん?」


 レオンはうっすらと目を開けた。(おぼろ)げな意識を覚醒(かくせい)させるため、そのまま腕を上げて伸びをする。


「んん……。寝てしまったか」

「おはようございます、レオ。今紅茶を入れますね」


 目の前にはニアがいた。

 どうやら自分が寝ている間に帰ってきていたようだ。


「ん、あぁおはよう、ニア。頼む」


 レオンが答えるとニアはお茶を入れるために立ち上がる。

 レオンは目を閉じ、先ほどまで見ていた夢を反芻(はんすう)する。


 久しぶりにニアとの最初の出会いを思い出し決意を新たにする。

 周りを見渡すが、ニアの他には誰かがいる様子はない。


 ニアが紅茶を入れて戻ってきた。

 置かれたティーカップを口に運び一口(すす)る。すると紅茶の香りが口一杯(くちいっぱい)に広がった。


 相変わらず、ニアの入れる紅茶は格別(かくべつ)だな。

 ティーカップをテーブルに置きレオンは告げた。


「ニア。ちょっといいか?」


「はい、何ですか?」


 レオンの言葉にニアはティーカップを机の上に置いた。

 それを確認し、レオンは続けた。


「先程な、夢を見ていたのだ。(なつ)かしい夢だ。ニアと出会った時のこと……あの頃のことは覚えているか?」


「はい、覚えていますわ。鮮明(せんめい)に。あの時レオと出会わなければ今の私はなかったですわ」


 思い出しているのか、ニアは遠くを見ているかのような表情をする。

 レオンは鼓動(こどう)を早くする心臓をどうにか(おさ)えようと心を落ち着かせながら言葉を(つむ)ぐ。


「あの時出会い、それから長い時を一緒(いっしょ)に過ごしたな」


「そうですね。色んな遊びをしましたし、色んな所を旅しましたわ。とても……大切な思い出です」


 ニアは紅茶に広がる波紋(はもん)(なが)めながらそう答える。

 髪を()でる仕草(しぐさ)一つとっても非常に絵になる美しさである。


「これまでニアには迷惑(めいわく)をかけたな。俺は危険な所を何度も助けられた。幾度(いくど)となく助言(じょげん)も受けた。今の俺があるのは……ニアがいたからだ」


「急にどうしたんですの? レオ、何かあるんですか?」


 ニアが心配そうにこちらを見つめる。


 心配させたいわけではないのだ。

 まどろっこしい遠回りは止めて、そろそろ本題に入らなければならないだろう。


 レオンは意を決して立ち上がった。


「ニア。俺は、実を言うとニアに出会った時に一目惚(ひとめぼ)れをしていたのだ! そしてその後、一緒(いっしょ)にいる中で俺は、俺にはニアしかいないと確信した! これまでも幾度(いくど)となく迷惑(めいわく)を掛けてきた。これからも……掛けるかもしれない。しかし、何があろうとも俺はニアを守り抜くと、そう(ちか)おう! だからニアよ! フレゼア・ニアベルよ! 俺と、結婚してはくれないだろうか!」


 そう言ってレオンはニアを見つめながら地面に(ひざ)を突き、ケースに入った指輪を差し出した。ニアは呆然(ぼうぜん)とレオンの顔を見つめて(たず)ねた。


「私で、私で良いのですか? これは夢ではないのですよね?」


 レオンは咄嗟(とっさ)にニアの手を(つか)(さけ)んだ。

 もうカッコをつけている余裕などなかった。


「ニアでなければ駄目(だめ)なんだ! 俺は他の誰でもなく! ニアがいいんだ!」


 レオンの言葉にニアは目に涙を浮かべ、そして満面の笑みで答えた。


「……はい、不束者(ふつつかもの)ですが、よろしくお願いしますわ」


 その言葉にレオンは腰の力が抜け、地面に尻餅(しりもち)をついた。


「本当か? 本当だな? ははははは、やった、やったぞ!」


 レオンは一頻(ひとしき)り笑った後に赤面(せきめん)し、自分の口元を手で(おお)った。


「す……すまん。見苦しいところを見せたな」


「いえ……私もとても(うれ)しいですわ。あの、レオ。一つよろしいでしょうか」


 ニアが上目遣(うわめづか)いでこちらを見上げてくる。

 いつも見ているわけだが、その可愛さは(とど)まる所を知らない。


 そんな彼女が自分の(つま)になるのだと思うと、どうしようもない気持ちになる。

 しかし、ここで手を出し信頼を()くような行動はしない。


 ここまで待ったのだ。もはや(あせ)る必要もない。

 慎重(しんちょう)に事を運ぶべきだろう。


「何だ? 気遣(きづか)いは無用だ! 何でも言ってくれ!」


 レオンがそう言うとニアは顔を赤らめ()じらいながら言った。


「では、その……ぎゅって、して頂けませんか?」


 レオンは一瞬(いっしゅん)(ほう)けたが、すぐに頭を切り替えた。

 ここは男を見せる時である。


「分かった。行くぞ」


 レオンがぎこちない動作でニアの背に手を回すと、ニアが自分の胸に顔をくっつけてくる。緊張するが、暖かく心地いい。香水(こうすい)だろうか? 良い(にお)いがする。


 二人は抱き合ったまま一分ほど動かなかった。

 そこでレオンはやり忘れていたことを思い出し一歩離れた。

 ニアの目がレオンを見つめている。


「ニア、手を出してくれ」


「……はい」


 差し出された指に指輪を入れる。

 実感として自分の中に思いが(あふ)れて一杯(いっぱい)になる。


「ニア、俺は必ずニアを幸せにすると(ちか)おう」


「はい、私も精一杯(ささ)えさせて頂きますわ」


 二人の間に甘い空気が(ただよ)った次の瞬間、部屋の扉が開きドサドサドサッと何かが倒れる音がした。そちらを見ると三人の人物が地面に(たお)れ込んでいた。


「む、しまったな」


「重いー、重いですよ二人とも! 早く降りて、降りて下さいー! 痛たたたた!?」


「あ、あははー。いやー、ははは……ごめんね?」


 それはシュタントとクロフィ、そしてレオン達の担当になったオペレーターのミネアだった。


「お、お前達!」


「……どこから聞いていらしたんですの?」


 その問いにシュタントとミネアが顔を見合わせる。そして、クロフィが満面の笑みで答えた。


「夢の話からですよ! ひゅーひゅー、仲睦(なかむつ)まじいですなー!」


「それでは全部ではないか……」


「皆に聞かれるのって、とっても()ずかしいですね……」


 二人は赤面(せきめん)し、レオンは顔を手で(おお)った。


「ええい、構うものか! ニアと俺はこれから婚姻届(こんいんとど)けを出しに行く! 結婚式には貴様等も招待(しょうたい)してやるから参加するがよいわ!」


「い……今からですの!? 話が急過ぎではないですか!?」


「早いに越したことはあるまい。では行ってくるのでな。留守(るす)を頼むぞ」


「了解ですよ! ごゆっくりー!」


 これまでの変わらない日常は終わりを告げた。

 これから素晴らしい日常が始まり、この仲間達と共により高みを目指すのだ。


 未来は、希望に満ち(あふ)れているのだから!

「面白い」「続きが気になる」と感じたら、

 下の ☆☆☆☆☆ から評価を頂きたいです!


 作者のモチベーションが上がるので、応援、ブクマ、感想などもお待ちしています!


 思い立ったが吉日、思い立ったが吉日ですよ!

 仲睦(なかむつ)まじく、末永(すえなが)くお幸せに!


 それでは次回、「―トゥーナ1―」

 こちらは思ったより長くなってしまいましたが、どうかお付き合いくださいませ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ