6-63 小人族の女性
あの後、浜辺から戻った俺達はお疲れ会で付き合う事になったことを皆に報告した。
皆お祝いしてくれたが、空は現在保留中だからな。どことなく居心地が悪そうだった。
とは言ってもあいつ等もくっつくのは時間の問題だろう。
何せシルフェの好意は確定で、空もまんざらでもないことは鈍い俺でも分かる。
保留にしている理由については知らないが……空にも思うところがあるのだろう。
そして俺と空はホーリークレイドルに入りたいことを皆に告げた。
これについては皆喜んではくれたものの心配もされた。
今回の一件では何度も死にかけているからな。
しかし、それについてはフィア達だって同じだ。
誰も彼もが一歩間違えれば死んでいた。
あれはそれほどに危険な仕事だった。
フィア達が俺達を心配するように俺達もフィア達が心配なのだと説明すると、何とか納得してもらう事が出来た。
とはいえ、俺達はもっともっと力をつけなければならない。
今のままではフィアを守るなんて到底出来ないからな。
そんなこんなで昨日のパーティーはお疲れ会兼歓迎会となったのだが、実際の所フィア達に告げただけではホーリークレイドルの正社員になることは出来ない。
次の日、俺達はホーリークレイドルに出向いて改めて契約を行ったのだが、どういうわけか俺とフィアだけが社長室に呼ばれた。
正社員になる上でのことなら空も呼ばれないとおかしいし、何よりフィアが呼ばれる理由にならない。一体なぜだ?
「……まさか、フィアと付き合う事になったのがもう耳に入ってるのか?」
「いや、私パパにそんな事報告してないわよ? フォレオがするとも思えないし」
「はっ、まさか……シンシアさんに聞かれてたのか? それは流石に恥ずかしいな」
「いやいや、シンシアはプライベートの盗み聞きはしないはずよ。……多分」
そこで自信なさげに声を小さくしないでくれ、不安になるだろ。
……大事な場面ではこの端末はちゃんと外すようにしないと駄目だな。真実がどうであってもやっぱり気になってしまう。
「何にしても覚悟は決めないとな」
「うーん、反対されたら駆け落ちとかするのかしら? それってちょっとドラマチックね!」
「そこで興奮しないで……」
「冗談はこのくらいにして、着いちゃったわね」
何を言われるかなんて考えた所で分かるものでもない。こうなったら出たとこ勝負だ。
お義父さん! 娘さんを俺に下さい!
「……よし」
フィアは俺が覚悟を決めるのを待ってくれていたようで、俺の声を聞くとようやくドアをノックした。
すると、中から聞き覚えのある声が返って来た。
「入りなさい」
「失礼します」
ドアが開くと同時に部屋に入る。
部屋の様子は変わりなかったが以前と違う点が一つ。
そこには相も変わらず狐の面を着けているロナルドさんの他に、マリエルさんと見たことのない小柄な少女がいた。その少女は見た目で言うとノインさんと同じくらい、小学生くらいの見た目だった。
とはいえ、見た目では全然判断出来ないということは嫌と言うほど経験している。
匠人族やノインさんのような例があるからな。
少女は腰くらいまである明るめな水色の透き通る長髪を携えていて、その手には何やら水晶のようなボーリングの玉くらいの大きさの球体が抱えられていた。
俺の視線に気付いたのか、ロナルドさんがその少女の背中を押して前に出るようにと促した。
「二人とも来てくれてありがとう。こちらは私の秘書をしているディビナだよ」
「初めまして。私はプレシア・ディビナ。紹介の通りロナルドの秘書をしています。不束者ですが、どうぞ宜しくお願いします」
「え?」
まるで結婚でも申し込むかのような言い回しに素の疑問符で返してしまい、一瞬の静寂が訪れる。すると、ロナルドさんが場を取り持つかのように切り出した。
「……あー、いや、ディビナは緊張していてね。少し畏まり過ぎたみたいだ。気にしないで欲しいな」
「おや? 何か間違えたでしょうか……?」
「うーん、特に間違えてはいないから気にしなくていいかなぁ。ディビナはそのままの方が可愛いよ」
「……可愛いですか?」
わずかに首を傾げて見せるディビナさん。
うーん、仕草がどことなく大人びている。
声色も落ち着いているしどうも中身は大人っぽいな。
そんな考えが顔に出ていたのか、フィアがスッと横にきて耳元に口を寄せる。
「ディビナは大人っぽい上にあの見た目だからほぼ確実に誤解を受けるんだけど、彼女はあれでもギリギリ成人ってところよ。私達でいうと二十歳くらいね」
「なるほど、そうなのか。見た目的にも性格的にも二十歳には見えないな。……ちなみにディビナさんは何て種族なんだ?」
「小人族よ。大人になっても私達でいう子供のような容姿なのが特徴の種族。色んな星にいるから細かく考えればたくさん種類もあるはずだけど、まぁその総称ね」
「なるほど、ノインさんみたいに長寿だからとかではなくあれ以上成長しない感じなのか」
「そうだけど、私達よりは長寿な種族だからね。さっきは二十歳くらいって言ったけど、それよりは長生きしてるわ。大丈夫だと思うけどノイン同様に注意してね」
「あー、了解」
小声でそんなやり取りをしているとロナルドさんがコホンと一つ咳払いをした。
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新たな種族、小人族が出てきました。
大きくならないという意味では匠人族も同じような感じですね。
小人族の一種と言ってもいいかもしれないです。
そんな感じで細かく分類しようと思えば出来てしまいますが、
特にする必要も無いので総称で小人族です。
次回「黒き力」、お楽しみに!




