表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第六章~アンビションビーティング~
356/445

6-55 邦桜を巡る一件の終幕

 フィアと共にゆっくりと縦穴を(のぼ)って行く。


 視界に広がるのは縦穴と星の散らばる綺麗(きれい)な夜空のみ。

 もはや間違いない、俺達の勝ちだ。


「はぁー、流石(さすが)に疲れたな。久々(ひさびさ)に全力を出したぞ」


「そうね。私も疲れちゃった。……早く上に行きましょうか」


 全力を出しても意識は失ってないし、最初の頃よりは幾分(いくぶん)か成長したというのを感じる。


 でも、ほぼほぼ体力を使い切ってこうしてフィアに支えられているというのは少々(しょうしょう)(なさ)けない気もするな。抱き着かれているのは(うれ)しい限りなんだが……。


 そんな事を考えつつフィアの顔を見ていると、俺の視線に気付いたのかフィアが俺の(あご)を押して上を向かせようとしてきた。


「ちょっ、痛いって。何々(なになに)?」


「もう、私ばっかり見てないで上を向いて警戒(けいかい)してなさいよ。まだ地上がどうなってるか分からないんだからね。出た瞬間に(おそ)われる可能性だってあるかもしれないんだから」


「……まぁそれはそうなんだけど、あの神機とかいうのを倒したんだから多分大丈夫だろ」


「……神機って、あの神機?」


「よく知らないけど、多分その神機なんじゃないか?」


「私も(くわ)しいわけじゃないけど……本当にあれが神機なんだったらこんなものじゃないと思うんだけど」


「あぁ、確か乗ってた(じい)さんも十分な出力が出せてないって言ってたな。本当にそうだったのか」


「なるほど、最後に確認されたのは随分前(ずいぶんまえ)って話だしその可能性もあるか。ってそれもあるけど、確か神機には複数の形態(けいたい)があって、例え(こわ)れたとしても(かく)が無事なら別の形態(けいたい)に切り替えが出来たはず……。まぁさっきのは跡形(あとかた)もなくなってたし、(かく)も破壊出来ただろうから関係ないか……」


「ん、そろそろ地上に出るぞ……」


 その時、俺達は正直(しょうじき)油断(ゆだん)していた。

 もう神機は倒したものだと考えていたからだ。


 俺達を照らすわずかな明かり、それを(さえぎ)る巨大な影、真っ赤な機械の怪鳥(かいちょう)

 さながら朱雀(すざく)と言えるだろうそれが俺達を見下ろしていたのだ。


「なっ! まさか、核の破壊を(まぬが)れて……!」


「やられる前に地上に辿(たど)り着いてたのか!」


貴様等(きさまら)だけは必ず今ここで殺してやる。死ねぇ!」


 朱雀(すざく)の腹、そこに備え付けられた無数の砲筒(ほうとう)が火を()いた。

 もはやそれを全て防ぐだけの力は俺達には残されていなかったが、この(じい)さんは一つ思い違いをしている。


 ここは地上だ。地下じゃない。

 ここにいるのは俺達だけじゃないのだ。


 放たれた無数の弾丸は俺達に届く前にその全てが弾かれた。

 そして……。


「そーれ!」


「ぐぉっ! な、何者だ!」


「ふう、本当に世話(せわ)()ける人達ですね。いつもいつも()めが甘くて、うちがいないと全然ダメなんですから。ピンチにならないと気が済まないんですか?」


「ふっふっふー! 今回はいまいち良いとこなしだったからね。最後くらいはもらっちゃうよ!」


 薙刀(なぎなた)をくるくると回して弾丸を防いだフォレオと髪の毛ハンマーで朱雀(すざく)(なぐ)り飛ばしたシルフェ。


 全く、頼りになる仲間達だ。


「悪い。もうほとんど力を使い果たしちゃっててな。後は任せてもいいか?」


「そうね。おいしいところは(ゆず)ってあげるわ」


「何が(ゆず)ってあげるですか……」


 (あき)れたような表情(ひょうじょう)のフォレオ。

 しかし俺達の前から動く気はなさそうだ。守ってくれているのだろう。


 そんな中、体勢を整えた朱雀(すざく)が飛び立とうとしていた。


「くそっ、もう新手(あらて)に見つかったのか! ……(ねた)ましい限りだが、ここは一度引いてやる。貴様等(きさまら)は必ずこのコレオライ・ザレフが殺してやる。覚悟(かくご)しておけ!」


「はぁ、逃げるんですか? とは言っても、もう逃げ場なんてありませんよ?」


「何を……な、何だこいつ等は! いつの間に!」


 よくよく見てみると周りには複数の人影があった。

 唯、芽衣、哨はもちろんの事、あれは韋駄天阿門(いだてんあもん)さんに、水瀬夢姫(みなせありす)さん?


 あっちの燃えるような赤の着物の人は炎堂紅葉(えんどうもみじ)さん、その隣にいるスーツの人は冷泉氷室(れいぜんひむろ)さんか?


 おぉ……そういえば赤城さんが来ているって言ってたな。

 本物を生で見るのは初めてだ。


 こうして見ると錚々(そうそう)たる面々(めんめん)だ。

 あ、あっちには風人に花蓮(かれん)(まつり)もいるな。

 ははは、今回のオールスター勢ぞろいか。流石(さすが)にこのメンバーに囲まれて逃げるなんて不可能だな。


 そんな事を考えていると、突然横が光ったかと思うとふっと虚空(こくう)から空が現れ、どこからか赤城さんも()んで来て瓦礫(がれき)を吹き飛ばしながら着地した。


「あ? 何だ、また見た目が変わってるじゃないか。だがまぁ、もう終わりだな。観念(かんねん)しろよ。な?」


「ふざけるな! 木っ端(こっぱ)が集まったからなんだと言うのだ! 貴様等なんぞに止められるものか!」


 そんな風に声高(こえたか)らかに()えたザレフだったが、そこからはもう飛び立つことすらも(かな)わなかった。


 最後に現れた玄武(げんぶ)と呼ぶべき亀のような形態もすぐに動きを止められ、赤城さんによる全力スマッシュを五回ほど()えた所で(かく)破壊(はかい)、なし崩し的にお縄についたのだった。


 そうなった時には最初の元気はどこへやら、憔悴(しょうすい)し切った様子でもはや抵抗する様子は見られなかった。


 こうして、ザレフは宇宙警察(ポリヴエル)に引き渡され、俺達の邦桜(ほうおう)(めぐ)る一件は幕を閉じたのだ。



 *****


 フィア達のチームの(ひか)え室、戦場各地を映していたモニターを食い入るように見ていた小さな影が脱力(だつりょく)してソファに倒れ込んだ。


「はぁ、今回もなんとかなったみたいですね。良かったのですよ……」


「ノインが何度も(あば)れて大変だったけどね。主にルーが」


「わ、私は別に、大丈夫、だよ?」


「……悪かったのですよ」


 そんなノインに治療医(ちりょうい)であるミューカスがお小言(こごと)を言うと、ルイルイはぶんぶんと手を振ってそれを咄嗟(とっさ)否定(ひてい)した。


 しかしノインも迷惑(めいわく)を掛けていた自覚はあるようで、目を()らしながらも小声で謝っていた。


 それを見るとミューカスは視線を横にずらし、(きつね)の仮面を頭の横側に着けた男に視線を向ける。


「それはそれとして……ロナルド。フィアのあれ、そろそろ限界なんじゃないの?」


「だよなぁ。流石(さすが)にもう隠しとくのは無理だろ」


 ミューカスの意見にエンジュが賛同(さんどう)、もとい全員が(うなず)いたところでロナルドは困ったように笑った。


「やっぱりそうだよね。うーん、どうやって話したものかな?」


「私の方を見ないでくれるかな。私はとりあえずあの黒い(きり)については素直(すなお)に話すしかないと思うけど、ディビナはどう思うの?」


「はい。問題ないでしょう。ロナルド、それでいいのでは?」


「……そうだね。こればっかりは本人が向き合わないといけないことだし、隠していても危険なだけだ。話せる情報は話すとしようか。さて、皆待機(たいき)していてくれてありがとう。事態(じたい)も何とか解決したみたいだしもう休んでもらって大丈夫だよ」


「そうするのですよ。……あれ? シノはどうしたのです?」


 ロナルドの言葉で皆がゆっくりと立ち上がる。

 そんな中、ふとアセシノが見当たらないことに気付いたノインが声を上げた。


「あん? ……そういえば姿が見えねぇけど、疲れて能力が出ちまってるだけだろ?」


「んぅ? そうかしら? それだと今出てきてないのが違和感(いわかん)なんだけど」


 全員がきょろきょろと周りを見回しているがアセシノの姿は見えないし、当然声も聞こえない。


 そんな中ドアが開く音に全員が視線を向けると、そこでは見覚えのある看板(かんばん)がぶんぶんと()れていた。


「あれ? シノ、いつの間に外に出ていたのです? お手洗いにでも行っていたのですか? フィア達の方に夢中で気付かなかったのですよ」


【問題ないよ。今日はもう解散?】


「そうね。フィア達も無事よ、安心しなさいな」


【うん、大丈夫。それじゃあね】


 看板にそう文字が流れるとまるで手を振るかのように看板が()れ、スーッと消えて行った。


「本当、あの子はいつも(せわ)しないわね……」


「そんなに(せわ)しないか? 別にいつもいないわけじゃなくて誰も気付いてないだけだと思うけどな」


「ははは、それはそうだけどね。シノはちゃんと頑張っているさ。……さて、僕は急いで準備をしないとね。マリエル、ディビナ、手伝ってくれるかい?」


「もう、しょうがないかなぁ」


「はい、行きましょうか」


 そして、全員が部屋を後にしたのだった。

「面白い」「続きが気になる」と感じたら、

 下の ☆☆☆☆☆ から評価を頂きたいです!


 作者のモチベーションが上がるので、応援、ブクマ、感想などもお待ちしています!



またもや復活したと思ったらすぐにボコボコにされてしまいましたね。

すぐに逃げないのが悪いんです。


さて、一章から続いて来ました一件がようやく終幕しました。

如何(いかが)だったでしょうか?


え? 長い?

ははは、ですよねー。


自分の書きたい事を詰め込んだらこんなことになってしまいました。

しかし、後悔はありません!


さて、本章ではまだいくつか書かなければならない内容が残ってますので、もうしばらく続きます。

もう少しお付き合い下さいませ。


それでは、次回「いつも通りの朝にそれぞれの想いを抱えて」、久々のいつものあれです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ