6-47 レッドドラゴン-2
「……雷人、フィアさんは僕が見てるから雷人は行ってきなよ」
「え、でもそういうわけにもいかないだろ……」
「この先何があるか分からないし、幾ら赤城さんでも一人じゃ厳しいかもしれない。僕達が最優先するべきなのはラグーンシティを守る事だよ。フィアさんの事は僕に任せて敵を見極めてきて。大丈夫だよ。雷人がいない間くらいはちゃんと僕が守ってみせるからさ」
空は胸を叩いてそんな風に言った。
本当に、空にはいつも迷惑を掛けてばかりだ。
でもここで俺がするべきなのは遠慮をすることじゃない。
空がこう言っているのだ。
俺は信じて、期待に応えるだけだ。
「空……分かった。行って来る」
「うん。あ、そうだ。これ持っていきなよ」
そう言って空が何やら指輪を差しだしてきた。
これは……?
「何かの指輪か?」
「いや、多分ジェルドーが持ってた刀でいいんだと思う」
「ジェルドーの持ってた刀? これが?」
「うん、あの時渡された刀が光ったかと思ったらこうなってたんだ。フィアさんのあの凄まじい攻撃でも刃毀れ一つしなかった凄い刀だし、預かった物ではあるけど危険になったら使った方が良いと思うんだ」
空の手から指輪を受け取る。
確か……封印刀ケラディウス……だったか?
大事な物なんだろうけど、確かに頑丈さはお墨付きか。
刀神の作った特別な刀って話だし、そういえばあの時はいつの間にかジェルドーの手に握られていたな。……よし。
「わっ!」
「……出た」
何となく指輪に生命力を流し込んでみると、手の中にその刀が現れた。
確かに、あの一戦の後だというのにその刀身は鈍い光沢を放っていて綺麗なままだ。
まだ使用していない新品だと言われても信じそうなくらいだな。
もはや疑う余地もない、間違いなく業物だ。
……あぁ、そうだな。使えるのなら使うべきだろう。
託された品ではあるが、俺にとっては仲間達の方が大切だ。
確実にこの一件を無事に終わらせるために、これは使わせてもらうとしよう。
「分かった、使う事にする。あんまり迷惑ばっかかけてられないもんな。ありがとう。空」
「オーケーオーケー、話は決まったな。それじゃあ行こうぜ。未来の彼女のためにもきっちりやらないとな」
「……はいっ!」
*****
そうして俺と赤城さんは大部屋にあった出口から先へと進む。
どうやら電灯は設置されているようなのだが、点く様子はない。
どこかにスイッチがあるのか、それとも電気が通っていないのか。
どちらにしても点けられないのなら意味はない。
大部屋からの明かりはすぐに届かなくなり通路は真っ暗になる。
そこで俺は足元を照らすようにカナムを走らせた。
「おっ、悪いな。実は足元が見えなくて困ってたところだ。生憎と灯りの類は持ってきてなくてな。俺の能力は暗闇に対応していないし、実はここに来るまでも何回もぶつかったり転んだりしてたんだよ」
「はい。知ってます。赤城さんの能力はシンプルな身体強化ですもんね」
赤城竜司、若手エースで今や第一部隊の隊長を務める傑物、特殊治安部隊の顔ですらある彼だが、その能力は珍しくもなんともないただの身体強化だ。
では彼がどうしてそこまで上り詰めることが出来たのか。
それは単純な話。
彼が誰よりも努力家であったためだ。
雑誌の記事で読んだことがある。彼は昔はパッとしない隊員だったが暇さえあれば体を鍛え続け、その成果である鍛え抜かれた肉体は何物をも寄せ付けない鋼鉄の肉体となったと。
実際、彼はどんな現場にも臆することなく飛び込み、災害があれば逃げ遅れた人々を救助して、テロがあれば犯罪者を真正面から捕まえる。それでいて、彼は無傷で現場から帰って来るのだ。
流石に盛られているかもしれないが、崩れたビルの中から要救助者を庇いながら無傷で生還したなどという話まで持っている。
所謂、生きた伝説なのだ。
実際、何回もぶつかったり転んだりしたと言っているが、服は汚れているものの彼の体に傷は見られない。
流石は赤城さんだと言えるだろう。
彼の二つ名、レッドドラゴンの異名は伊達じゃないと言う事だ。
「ははは、流石に俺も有名人だな。もっとも、犯罪者達にも能力がバレてるっていうのはあまりいい事じゃないんだが。有名過ぎるのも考えものだな」
「そんなこと、赤城さん相手じゃ分かってても止められませんよ。どんな攻撃だって真正面から受けても無傷なんですから!」
「……あぁ、そうだな。シンプル・イズ・ベスト! 結局、それが一番強いって事だ」
何だ? 一瞬赤城さんの表情が曇ったような気が……いや、気のせいだな。
足元しか照らしてないからうっすらとしか見えないし、きっと見間違いだ。
そんな事を考えていると赤城さんはニカッと笑い親指を立てた。
そして、何やら前方から光が漏れているのが見えた。
「あ、光が見えます」
「おっと、ようやくお出ましか? さて、鬼が出るか蛇が出るか!」
そして、俺達は新たな大部屋へと足を踏み入れたのだ。
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赤城竜司、雷人がヒーローを目指すきっかけになった人物。
何があっても無傷で、強力な力で突き進む。
出来るなら相手にはしたくないキャラですね。
犯罪者達に合掌。
それでは次回「神機デュシェル-1」、神機とは一体?




