6-45 例え火の中であろうとも-2
「フィア! 大丈夫か!?」
勢いよくぶつかるようにフィアを抱きしめ、その頭を胸に抱く。
すると、その真っ赤に光る瞳が俺を見上げて大きく見開かれた。
そして、吹き荒れていた熱波はまるで何事もなかったかのように消えていった。
「ア……ア、ライ……ト? イキ、テ……?」
いきて? あ、そうか。
フィアは俺が死んだと思っていたのか。
……もしかしなくても、暴走の原因って俺か?
まぁあの状況だからな。俺も間違いなく死んだと思ったし、勘違いするのも無理はない。
……そう考えると、嬉しいのと同時に少し気恥しくなってくるな。
いや、そんな事よりもまずはフィアを安心させるのが先だ!
「あぁ、そうだ。雷人だ! 俺は生きてるぞ、フィア!」
「あ、あ……らい、とぉ。よか……たぁ……」
驚愕の表情がへにゃっと緩んだ笑顔に変わり、その目から涙が流れる。
そして、瞳の赤色の光がすーっと薄れて青色に戻り、体から立ち上っていた黒い霧が立ち消える。それと同時にフィアがこちらに倒れ込んで来た。
「わっ、と……収まったって事でいいんだよな? おい、大丈夫か? フィア?」
「…………」
「フィア? まさか……!」
軽く揺すっても返事のないフィアに、俺は焦って首元に手を当てた。
脈は……あるな、息もある。
何だ、寝ちゃっただけか……。
「はぁ、焦ったぁ……」
俺は落とさないように膝裏に腕を通してフィアを抱き上げるとそのままゆっくりと下に降りた。
すると空が慌てたように駆けよって来た。
「空! 何とかなったぞ! フィアは寝ちゃってるけど、とりあえず無事だ!」
「無事だ、じゃないよ! またそんなに怪我して! 無茶ばっかりして、少しは自分の心配をしたらどうなの!?」
「怪我? あ……いててててててて! つ――っ、気付いた途端に、痛みが……」
よくよく自分の体を見てみると、全身が真っ赤で皮膚も所々焼け爛れていた。
案外大丈夫だと思っていたのだが、そうでもなかったらしい。
空にぐちぐちと説教をされながらフィアと共に治療を受ける。
すると瞬く間に傷は治ってしまった。
「はぁー、相変わらず空の治療は凄いな。もうすっかり痛くない」
「怪我してすぐならちょちょいのちょいだけどね。だからって僕を当てにして無茶はしないでよね。本当に、雷人は気付いたらころっと死んでそうで怖いよ。目を離せない子供みたいだ」
「子供……ははははは」
「笑い事じゃないよ?」
笑って誤魔化したのだが、全く笑っていない目で見つめられてそれも引っ込んでしまった。いや、その、そんな目で見ないで……。
「はい、すみません。でも、空だってシルフェが同じ風になってたら飛び出していくんじゃないのか?」
「それは……そうかもしれないけど、それとこれとは話が別だよ。僕は自分の傷を自分で治せるけど、雷人は治せないんだからさ」
「それはまぁ、確かに……いつもお世話になってます」
「……はぁ、まぁフィアさんが無事で良かったよ。本当、さっきのは何だったんだろうね?」
「さぁな。あの時の黒い霧、花蓮に催眠を掛けた奴と同じような雰囲気を感じたけど、何か関係があるのか?」
「うーん」
二人で頭を捻ってみるが、現状では圧倒的に情報が足りていない。
考えるだけ無駄だな。
「……考えても仕方ないな。それより、この奥にはまだ黒幕が残ってるはずなんだよな」
そう言って先に進む真っ暗な道を見つめる。
確か、何かを探しに来てるんだったか?
ここまでするんだ。とてもじゃないが碌でもない物だろう。
とっとと行って捕まえてやりたいところだが……。
「俺もさすがに消耗してるし、フィアはこんなだし、このまま追い掛けて大丈夫なのか?」
「うーん、確かにそうだよねぇ。とは言っても僕が来る時にはまだ上も片付いてなかったんだよね」
「そっか、となると増援を呼ぶのも難しいか。……一度確認して、優先度を確認した方がいいかもしれないな。この先に何があるのか知らないし、持ってかれるのは癪だけど物によっては見逃した方がいいかもしれないし。あくまで俺達の最優先はラグーンシティを守る事だからな」
「それは確かに……戦力不足だから無理矢理にっていうのは避けたいもんね」
「ほうほう、戦力不足か。なら、これで解決したか?」
「んっ!?」
突然の声に二人して武器を構えながらばっと後ろを振り返る。
するとそこにいたのは……。
「あ、あなたは……!」
「面白い」「続きが気になる」と感じたら、
下の ☆☆☆☆☆ から評価を頂きたいです!
作者のモチベーションが上がるので、応援、ブクマ、感想などもお待ちしています!
意識を失う、暴走する、そんなヒロインを目覚めさせるのはいつだって主人公だ!
口付けじゃないのは口惜しいですが、さすがにそこまで余裕はありませんでしたね。
何にしても、これで因縁の対決はとりあえず終了しました。
しかしながら、ジェルドーは今章のラスボスではないのでまだまだ話は続きます。
どうぞ、お付き合い下さいませ!
次回、「レッドドラゴン-1」、お楽しみに!




