6-28 最速のヒーロー・イン・ドリームワールド-2
「……はぁ? ちょっと、今良いところなんだけど、あんた誰? 私の邪魔をしないでくれるかしら?」
見えないから何も分からないけど、誰かが来た?
いやでも、私はあんな声知らない。
「だ、誰なの? ホーリークレイドルの人?」
「ホーリークレイドルというのは知らないが、私は怪しい者ではない。私は特殊治安部隊は七剣聖が一人! 韋駄天阿門だ! 私が来たからにはもう大丈夫だ、少女よ! よく頑張ったな!」
「ねぇ、何ふざけたこと言ってるわけ? 死にたいの? 死にたいのよね? 殺すわ!」
その直後、複数回打ち合ったような金属音が響き、前方の方で何かが光って一瞬だけ人の姿が見えた。
あれは、何だっけ?
何か特徴的な物を着ているのが見えたけど。
うーん、何かで見たことがあるような……あ、そうだ!
確かフィア達が見てた映像の中にあんなのがあったような気がする。
確か、ヒーロースーツ? とかいうやつに似てると思う。
全身が黄色基調の色合いで凄く目立つ色だ。あの人は派手好きなのかな?
「ふぅん? 雑魚だと思ったのに、思ったよりはやるじゃない」
「ふむ、これは強いな? 正面からでなければ切られていたかもしれんな! しかし、私は最速のヒーロー韋駄天阿門! 私の前には悪の栄えた試しなし! そこの女、運が尽きたな。同情するぞ?」
「へぇ、何よ? あんたも悪くないわね。良いわ。あんたのその自信、それもへし折って泣かせてあげる! さぁ、私にいい夢を見せて?」
「いい夢、そうねぇ見せてあげましょうか?」
「……また邪魔者が私の世界に入って来たわけ? 何よ? あんたも泣きたいのかしら?」
「え? え? もう一人? また誰か来たの?」
正直、真っ暗闇の所為で周りが見えず、状況の分からないシルフェにとっては声しか聞こえないのでさっぱり分からないのだが、何やらやんわりとした声が聞こえてきた。
なんだか聞いていると安心するような声だね。
リリアの怖がらせようとする声とは真逆、安心を与える抱擁力を感じさせる声だ。
「もう、阿門ちゃんったら、また一人で先走って。追いかける私の身にもなってくれないといけないと思うわ」
「はっはっは、すまんな夢姫! 私は最速のヒーローだからな! 誰よりも速く、助けを求める者の前に現れなければならないのだ!」
「もう、阿門ちゃんったら、しょうがないわねぇ」
「……惚け? あんた達、もしかして私を前にして惚けてるわけ? あー、今ちょっとイラっと来ちゃったわ。丁寧にやってあげようかと思ってたけど、むしゃくしゃしてきちゃった。いいわよ。そっちがその気ならすぐにでもどん底に落としてあげる!」
そこで再び複数の金属音が響き、一瞬だけ火花が散る。
一瞬しか見えなかったけど、夢姫って人をリリアが攻撃したのを阿門って人が守ったみたいだね。
そんな状況なのに、特に緊張感も感じられない安心しきったような声で夢姫が呟いた。
「あら怖い」
「はっはっは、何、夢姫が追い付いたのならばもう話は終わっている。さぁ、夢の世界へ行こうではないか!」
「そうね。それじゃ夢の世界へ招待しましょ! 夢姫の楽園!」
何だか状況がよく分からないけど、声を聞いてる限りだとあの阿門って人と夢姫って人が襲われてるのは分かる。それはやっぱり防がなきゃね!
「煌めけ! アローレイ!」
あの男の人の位置は分かってる。
何となく女の人の位置も、それを避けるように放たれた光の矢は辺りを照らし出して……あれ?
「何をする気か知らないけど! あんた達はもうおわ……はぁ!? あぐっ!?」
一体何が起こったのだろうか?
シルフェの放った光の矢はこれまで闇に吸収されてほとんど周りを照らせなかったのに、その光が突然強くなって周囲を照らし出した。
そして、突然姿が見えるようになり状況が理解出来なかったのか、一瞬動きの止まったリリアに光の矢は吸い込まれるように直撃した。
「あ、あれ? えっと? はっ! もしかして、この窮地に私の力が覚醒した!?」
「はっはっは、ナイス射撃だ、少女よ! だが残念ながらこれは君の力が覚醒したとか、そういう事じゃあない! 周りをよく見てみるといい!」
「え? まわ……り? って、えええええええぇ!?」
そう言うや突然阿門とかいう男の人が光り出した。
そして周りの闇が晴れていき、見えたのは……何とも言えない光景だった。
「な、ナニコレ?」
そこには月と太陽が同時に輝いていて、見上げた空の半分は夜、半分は昼の明るさ。
だというのに周りは確かに夜とか関係なしに明るくて、そして何やら何とも形容しがたいグニャグニャとした輪郭の……正直生物とも思えない何かが走っていたり、飛んでいたり、いや本当に。
「ナニコレ!?」
そうとしか言えない光景が広がっていたのだった。
新キャラは特殊治安部隊のメンバーでした!
果たしてこの助っ人は吉と出るのか凶と出るのか。
うーん、それにしても急に男は光り出すし周りは不思議な景色になってるし、
いやぁほんとに……ナニコレ!?




