6-16 世界を作りし吸血乙女-1
「あは! あはははは! いいわ! いいわ! 悪くないじゃないの!」
「く、くぅ、このぉ! うりゃあ! あぐっ!」
すばしっこく辺りを動き回って両手に持ったナイフで切り付けてくるリリアの攻撃に、シルフェは少しずつ傷を増やしていた。
付く傷はほぼ全てが掠り傷だが、一方のリリアはいくら攻撃を当ててもまるで手応えがない。
まるで、壁でも殴っているかのように硬い感触で、無理矢理切り裂こうとすると吹っ飛んでしまい、大したダメージを与えられない……そんな感じだろうか?
「はぁはぁ、どうなってるの? そんなに細い体のどこにこんな力が?」
「えー? 体が細いのはあなたも同じじゃない。いや、私よりはムチっとしてるかしらね?」
「な、太ってないよ!」
「あら、私は健康的でいいと思うわよ? その方が切り甲斐があるってものよね、うふふ」
「むぅ、これでも食らえ!」
無数の光の矢を一射で撃ち放つとシルフェはその後ろに続くように走って接近する。
それに対して、リリアは光の矢をものともせずに腕の飛膜を盾の様にして防ぎ、そのまま切り掛かって来た。
本来なら守るべきであろう飛膜を盾に使うなんて、本当にこの女はよく分からない。
だけど、その行動のおかげで一瞬リリアの視界が塞がれた。
だから、気付いてないよね?
私の腕に向かってナイフが振られる中、私は思いっ切り腕を振り下ろした。
「あはは、少しずつ痛ぶってあげ……っ!? 何? 腕が……いや、体が?」
体が少し浮き上がり、じたばたとしてみせるリリア。
どうやら上手く体が動かないみたい。上手くいった!
「これは……ワイヤー? へぇ、あなたこんな細い物まで作れたのね」
「ふふん、元は髪だからね。さぁ、これでもう防御は出来ないよ。よく分からないけど、あなたは体が凄く硬いみたいだからね。横から攻撃すると弾かれて逃げられちゃう。でも、上からなら逃げ場はないよね!」
そう言うとシルフェはふわっと浮かび上がり、髪を伸ばして千切ると手に天槌を作り出した。そして、そのまま思いっ切り振り下ろす。
「いっくよー! それっ!」
そして、身動きの取れないリリアの頭に向けて振り下ろした。
しかしどこからそんな力が出るのか、ワイヤーを無視して無理矢理に腕を動かしたリリアが腕を差し込んだ。
しかし、最大限に重量を増やしたハンマーによる一撃は大地を軽々と割るほどの力を秘めている。
これまでの様に吹っ飛べば力も受け流せるだろうが、下は地面だ。もはや逃げ場はない。
このまま、叩き潰しちゃうんだから!
シルフェはそのまま全力でハンマーを振り下ろし、そしてゴシャっという音が響いた。
リリアの腕から鮮血が垂れる。それでも尚、リリアは地面に崩れ落ちる事もなく立っていた。
「え!? これでも駄目なの!?」
「あは、あはははは♡ いいわ、いいわね! 今の一撃! 私を殺すっていう意思を感じたわ! それはつまり、あなたは私に勝てると思ってるって事よねぇ? ねぇ、それが効かなくて今どんな気持ち? 渾身の一撃を耐えられちゃって、どんな気持ちなの? あは、あはははは♡」
驚愕するシルフェを見て、リリアは愉快そうに笑う。
その表情に無理をしている様子はなく、強がっているわけでないことは明白だった。
「うぐ、まだあなたはワイヤーから逃げられてないよ! もう一回!」
「あは♡ ブラッディ・ニードル!」
「え? あぅ!?」
もう一度ハンマーを振り下ろそうとした瞬間、突如その腕から流れていた血が形を変えて棘となり、シルフェに襲い掛かった。
それを見るやシルフェは後ろに跳び下がったのだが、その棘はシルフェの首筋を掠め、危うく死ぬところであったという事実に血の気が引く。
首筋に手を当てるとそこからは少量の血が流れており、その事実をより鮮明に実感させた。
血液操作系の能力は色んな作品に出て来ますが、傷をつけるとそこから反撃が来るというのは非常に厄介ですよね。
やられればやられるほどに手数が増える。
逆境に強い相手と戦うには精神力が必要ですね。




