6-11 良悪の知らせ-1
「今の話マジですか!? シンシアさん!」
「マジもマジ、大マジです! どうやら特殊治安部隊の増援がようやく集結しつつあったみたいで、避難誘導は迅速に行われているみたいですが……」
「特殊治安部隊、ようやく来たのか。任せられそうですか?」
「うーん、どうでしょうか? 私も特殊治安部隊の練度がどれほどかは知りませんし、数が数なので難しいかもしれません。投入されているロボットの数は総合するとこちらよりも多いように感じます」
こっちよりも多いだって?
だとすれば、こっちからも人員を割いた方がいいかもしれないな。
……あぁ、鬱陶しい!
「雷弾加速砲!」
通信しながらもロボット達を蹴散らしていたのだが、何しろ数が多くいまいち通信に集中出来ない。
とはいえ、最初に比べると大分層が薄くなってきた。
シルフェとフォレオが持ち堪えてくれるなら一人か二人くらいなら抜けてもやれるか?
そんな事を考えていると通信から喜色のオーラ全開の声が響いた。
「はいはいはーい! 私達! 私達は暇してるよ! 町の方にたくさん出たならここを死守する必要もないよね? ここでダラダラしてるくらいならそっちの方がマシだよー!」
「芽衣、だからお前の力は周りへの影響が大き過ぎるっていつも言ってるだろ? それに機動力に欠けるお前じゃカバーもし辛い、そうだろ?」
「ちっちっち、分かってないなぁ、お兄ちゃん。私の力は日々進歩しているんだよ? 周りへの被害も最小限にするし、走りながら戦うことだって出来るもーん。お兄ちゃんの知ってる昔の私とは違うんだから!」
「そ、そうは言ってもだなぁ……」
「雷人、芽衣ちゃんが心配なのは分かるけど、もう少し信頼してあげてもいいんじゃないかしら? 哨ちゃんも付いてるわけだしね」
「そうですね。私がいる以上、芽衣を危険な目には合わせません」
「フィア、哨……」
分かっている。分かっているんだ。
芽衣が自分なりに問題点を解決しようと頑張っている事は。
心配って言うのは俺の我儘だ。
この猫の手も借りたい状況で戦える者を縛り付けているのは、どう考えても合理的じゃない。俺は、過保護が過ぎるのだろうか?
「ふふふ、そういう事だよ! フィアさんは分かってるね! ほらほら、お兄ちゃん。過保護過ぎるとモテないぞー! というわけで、行ってもいいよね! ゴーゴー!」
……このテンション、やっぱり心配なんだよなぁ。
いやしかし、芽衣の力は俺も認めている。哨もいるわけだし、何かあってもブレーキ役になってくれるはずか。遂に俺も芽衣を信じて送り出してやる時が来たんだな……。
そんな事を考えたその時だった。
端末から哨と芽衣の声が響いた。
「あ……。芽衣、どうやらここを離れるわけにはいかなそうですよ」
「え、何で? ……わぁ!? 何か一杯来た! え? ちょっと! 多過ぎじゃない!?」
「ん? もしかして、ようやく芽衣の方にも敵が辿り着いたのか?」
「あはは、そうみたいね」
「ちょっと! お兄ちゃん達、幾らなんでも通し過ぎじゃないの!? ザル! ザル過ぎるよ! 桶にして!」
「俺達だけで全部止められるわけないだろ? あー、でも安心だな。日々進歩して俺の知っている以上に成長した芽衣になら任せられるよ」
「芽衣、接近される前に数を減らさないと物量で押し切られます。迎撃しますよ。幻想兵装、殲滅モード展開」
「も、もー! もー! 分かったよー! うわっ、撃ってきた! 守って! ばりばり君! そしてー、いっけー! からめる君!」
どうやら芽衣達もようやく戦闘に突入したみたいだ。
これでこっちの奴は町の方へは行かせなくて済みそうだな。
芽衣達が守っている橋と違って町の方じゃ乱戦になりかねないし、走り回っていたら防御陣地を構築出来ない。
哨の力も遠距離主体だったはずだし、二人の力を考えればこっちで戦っていてくれた方がよっぽど安心だ。
ネーミングセンスはともかく、芽衣の能力は強いしな。
「それで、結局どうするのよ? 援護は誰が行く?」
うーん、状況を考えればやっぱり機動力のある俺かフィアだろうか?
広範囲をカバーするってなると空じゃ厳しいしな。
そう考えて声を出そうとすると、通信の向こうで突然シンシアさんが声を上げた。
「あっ! ……皆さん、良いニュースと悪いニュースがあるんですが。どっちから聞きたいですか?」
今あっ! て言ったか、あっ! て?
嫌な予感しかしないんだが?
くそ、これ以上何があったって言うんだよ。
「いや、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。悪いニュースからでいいわ!」
「はい、それでは悪い方から……雷人さん達の学校の近くなのですが、新たに異星人が現れました」
まさかの三人目の襲来です!




