6-9 ベールを被りし狂信者2
予想外の事態に一瞬対応が遅れました。危なかったです。
もう少しで首を刎ねられている所でした。
そう、刎ねられている所だったんです。
女の一撃をギリギリのところで防いだフォレオは勢いのままに近くのビルの上に滑るように着地し、女との距離を離した。
そして、再びこちらに迫る少女の手元に目を向ける。
その手に握られていたのは……。
「それは……段平ですか?」
その刀は持ち手の部分まで刃が続いている。
まさに全体が刃といった様相の刀であった。
いや、刀と言うよりも包丁の方が近いだろうか?
平べったい広い刃の一部が持ち手になったような。
それは、そんな特殊な武器だった。
「自分が出来ることを相手が出来ないなんて考えるのは思い上がりです。あなたが特別ということはないんですよ?」
「くっ!」
足元を水で覆って滑りながら後退し間断なく銃撃を行うが、少女は素早い動きで段平を振り回してその尽くを切り落とした。
「っの! ウォーターレイ!」
「それはさっき見ましたよ」
「っあ!?」
まさに地面すれすれ。
体を倒してされど地面にはぶつからずに滑り、ウォーターレイを全て躱して見せた。
「対応が遅い」
「くっ!」
そして勢いのままに、跳ね上がるように起き上がりながら下から振り上げられた段平がフォレオの拳銃を弾き飛ばす。
しまった!
完全に腕を跳ね上げられて胴体ががら空きです。
今から別の武器を出しても、とてもではないですが防御が間に合いません!
……気休めでしかないですが、水で防ぐしかっ……!
「っ! ウォーターヴェール!」
「……っ!?」
「……え?」
好機。今のは完全に好機であったはずです。
今段平を振り下ろされれば間違いなくうちは切られていたはずです。
それは間違いないはずなのに。
女は突然グリンと明後日の方向に首を曲げて視線を向けると、これまで感じなかったほどの殺気を放っていつの間に手に持っていた拳銃を視線の先に向けて弾丸を放っていた。
それが視線誘導ではないかという疑念とやる必要のないそれをどうしてやるんだという反論が頭の中でせめぎ合う。
好奇心に負けたうちは少女の視線の先に、同様に視線を向けた。
そして、言葉を失った。
「え、あ、は? 何……で?」
その視線の先、そこには頭を真っ赤に染め、今にも倒れそうな蝙蝠獣人族の女がいた。
それは正しく、ヘッドショットだった。
目の前にいるシルフェが手を口に当てて後退っている。
もはや、当たっていることは疑いようもない事実だ。
この女、仲間を殺したのですか?
いや、蝙蝠獣人族の女は今にも倒れそうですが辛うじて立っています。
頭を押さえている……一応死んではいないみたいですね。
……いやいや、死んでないとはいっても確実に重症です。
彼女はもはや、戦うのは厳しいんじゃないんですか?
「あなた……一体どういうつもりなんですか?」
「……あぁ、そうですね。私のこの行動はあなた方の目には奇異に映る事でしょう。これはしたり。しかし、そう不思議な事でもないんですよ。私はあの方のためならばこの命すら捧げられる覚悟があります。だというのに他人の、ましてやあのような言う事を聞くかも怪しい者の命なんて、どうして躊躇う事があるでしょうか?」
自分の命を捧げる?
ふふふ、これはまた、最近は価値観の違う奴が多過ぎて頭がおかしくなりそうです。
ナクスィア、いいですよね。
可愛らしい少女が落ち着いた話し方をするというのも好きなのですが、二丁拳銃やその体躯に見合わない武骨な武器を振るうというギャップが何ともたまりません。
ちなみに今回出て来た段平、その言葉だけで形は決まらないのでイメージし辛いかもと思いますが、どうでしょうか?
この武器は、作者が以前ロストフラグというスマホゲームのイラストを見た時に、こういう武器っていいなぁとテンションが上がってしまったが故に登場させた武器です。
というわけで、作者の文章では想像出来ないと言う方、「紅、常世へ導いて」で検索してみて下さい。
大体こんな感じのイメージです。
作者が文章で表現しないといけない部分なのに申し訳ない。




