表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第六章~アンビションビーティング~
305/445

6-4 それは無双ゲーの如き戦場-2

 遠くから聞こえる爆発音。

 ビルを倒壊(とうかい)させるほどの轟音(ごうおん)


 普通に生きていたらまず聞かないであろう戦いの音は、友人達が頑張っている証拠(しょうこ)だ。

 ビルの屋上で強風に(なび)く髪を片手で押さえ、唯は眼下(がんか)にひしめくそれらを見た。


 もはや見慣れてしまったロボットの山。

 最初はあれのごく一部、数体ですら命の危機を感じていたというのに、今となっては雑兵(ぞうひょう)の群れに過ぎない。


 もっとも、そうでなければこの大軍勢(だいぐんぜい)(おさ)える事などとても出来ないのだが。


「とはいえ……出し()しみは出来そうにないですね」


 唯は胸に手を当てて目を(つむ)り、深呼吸をした。

 何かを決意するかのように、はたまた自身の意識を切り替えるかのように……。


「私は守ります。(いと)しき者達を、(あい)すべき者達を。……ですが、(ねが)わくばこの(いと)しき日々(ひび)も……。贋作聖剣(フェイクス)


 唯はそう(つぶや)くと躊躇(ためら)いなく地面(じめん)()って屋上から飛び降りた。

 その彼女の周りには無数の贋作聖剣(フェイクス)が生まれ、その矛先(ほこさき)(うごめ)くその軍隊に向ける。


 そして、軽やかに彼女が降り立つと同時、数えきれないほどの発砲音(はっぽうおん)が響き周囲に火花を散らしていく。


 しかし、そんなものが唯に傷をつける事はない。

 しっかりと(たて)の形状に変化した聖剣が弾丸の行く手を(はば)んでいた。


「まずは数を減らさないとですね。聖なる光の雨セイクリッド・フォトンレイン!」


 言葉と共に唯が聖剣を軍隊に向けると、聖剣の先に光が収束し無数の光線が殺到(さっとう)する。


 それらは細い線のような一撃に過ぎないが、その威力(いりょく)は十二分であり光線は一瞬にして直線状のロボットの全てを貫いた。そして……。


「切り(きざ)みなさい。光刃乱舞(フォトン・ブレイド)


 周囲に浮いた複数の聖剣が光線を放ったまま切り払い。

 目の前にあった軍勢(ぐんぜい)を焼き切っていく。 


 そして、どこからともなくその軍隊は爆発し、誘爆(ゆうばく)を繰り返して熱波を急速に()き散らしていく。

 そんな中、唯は小さく(くちびる)を動かし聖剣を地面に突きさすとその場に仁王立(におうだ)ちで熱波(ねっぱ)を受け止めた。


 そこに残ったのは爆発四散(しさん)したロボット達の残骸(ざんがい)と、衝撃(しょうげき)に耐えきれずに(くず)れた廃墟(はいきょ)の山。

 爆発が周囲を焼き()がす中、唯の周囲……いや、唯の後方だけが何事も無かったかのように残っていた。


 すでにその前に立つ者は無く、しかし少女は力強い眼差(まなざ)しで開けた視界のその先を見据(みす)えていた。


「まだ、(じょ)(くち)と言ったところでしょうか? 本当に数が多いですね。それでも私は、通すわけにはいかないんです。守りたいと、そう思ってしまいましたから」


 奥から再び()き出てくるロボットの軍勢(ぐんぜい)、それを見ても少女は(ひる)むことなく力強く一歩を踏み出した。


 今は、今だけは自分の意思を貫き通す。

 その決意(けつい)を胸に(かか)えて。


 *****


 空はうじゃうじゃと(うごめ)く軍勢を廃墟(はいきょ)の影からこっそりと見つめていた。


 正直なところ、あの軍勢に飛び込んでいくのは少々厳しい。

 他の皆は何かしらの範囲攻撃の方法を持っているというのに、未だに自分にはそんなものは一つもないのだ。


「多少自分の時間を長く出来た所で囲まれたらさすがに厳しいよね……集中切れたりしたら袋叩(ふくろだた)きにあっちゃいそうだし……」


 自分の力はそれなりに強いものだとは思っている。

 だけど、これまで使ってこなかった所為でいまいち自信が持てない。


 僕はこの力を本当に使いこなせる?

 持続時間は? 途中で使えなくなったりしない?


 そんな不安が頭をぐるぐると回る。

 でも、このままじゃいけない。良いわけがない!


 雷人の事もあるし、シルフェの事もある。

 僕は変わらないといけない。いや、変わるんだ!


「ん!」


 空は自身の両頬(りょうほほ)を力強く両手で(たた)いた。


 (ほほ)がじんじんと痛い。熱くなってくる感覚がする。

 ……ちょっと涙出て来た。強くやりすぎちゃったかな。


 でも、不安の言葉は吹き飛んだ。


「よし、行くぞ!」


 身体強化を使って思いっ切り地面を()るとロボットの群れに真正面から突っ込んでいく。


 向こうもこちらに気付いたらしく無数の弾丸が飛び()い、ロボット達が武器を振り(かざ)しながら殺到(さっとう)してくるが問題ない。


 自身の時間を二倍程度に延ばすと敵の動きが一気に(にぶ)くなる。

 そして、ゆっくりと振り下ろされるそれらを軽々と(かわ)すと思いっ切りその顔面を(なぐ)り飛ばした。


「おおおおおおりゃあああ!」


 (なぐ)り、()り、(つか)んでは投げ、振り回して叩きつけ、無我夢中(むがむちゅう)で敵を()つ。

 空は頃合(ころあ)いを見て上に()び上がると置き土産(みやげ)とばかりにウルガスさんから(もら)っておいた球状の爆弾を群れの中に複数投げ込んだ。


「よし! 退避(たいひ)退避(たいひ)! うひゃあ!」


 一旦離脱(いったんりだつ)して地面に()せ可能な限り爆風(ばくふう)()けてやり過ごすが、(はだ)()でるその熱に(うめ)き声が()れる。


 自身の時間を長くしていると瞬間的なダメージを弱めてくれるのだが、その分痛みは長く続く。この能力、良い事ばかりではないのだ。


 相手からの攻撃は相対的に遅くなるからダメージを一気に軽減(けいげん)出来るけど、自分から攻撃する時は(やわ)らかい物を(なぐ)る時でも硬い物を(なぐ)っているのと同じように感じるからその分痛いしね。本当に一長一短だよ。


 でも、ウルガスさん仕込(じこ)みのグローブのおかげで反動は軽減(けいげん)出来てるし、こうして武器を使えば本来出来ない範囲攻撃だって出来る。


「ふふふ、僕だってやれば出来るんだってところを見せないとね」


 まるで雷が落ちてビビっている子供みたいに頭を(かか)えながら丸まって地面に()せていた空は、すくっと立ち上がるとグローブを打ち合わせて決め顔を作って笑った。


 *****


 一方その頃、後方待機を命じられた芽衣はといえば、当然と言うか何と言うか。

 物凄く(ひま)そうに侵入不可区画とラグーンシティ中心部を繋ぐ橋の上にグデーっと寝転がっていた。


 時々ごろっと寝返りを打ってはお腹をポリポリ、その(さま)たるや休日のオヤジのようであった。しかし、幸いと言うべきかそんな姿を見ている者は(みはり)以外誰もいないのだ。


「芽衣、流石(さすが)にはしたないです。直さないならその姿を写真撮っちゃいますよ」


「写真って。そうは言ってもさー、やる気でないよー。また一番後ろに追いやられるなんて、お兄ちゃんは心配のし過ぎなんだよぅ。……一応(わな)は張ったし、やる事はやるけどさぁ。もうちょっとリップサービスがあってもいいんじゃないかなぁ?」


「まぁまぁ、いわゆる最後の(とりで)って奴なんですから、やる気出して下さいよ」


「もー、口を開けば皆そればっか……ん?」


 うだーと言った感じでうつ伏せながらぼやいていた芽衣は、何かに気付いてピタリと動きを止めた。


「今のって……(みはり)ちゃん?」


「違いますよ。私ではないです」


「本当に写真()ってる……いや、そんなことより」


 パシャパシャと機敏(きびん)な動きで色んな角度から写真を撮っている(みはり)横目(よこめ)に、冷や汗を流しながらギギギと音が()りそうなぎこちなさで何もない虚空(こくう)を見上げる。


「あ、あは、あはははは……見てました?」


「え? うーん、何のことでしょうか?」


「ん! いやいや、何でもないんですよ! うんうん、頑張っちゃう!」


 シンシアさんの言葉に途端(とたん)にパーッと顔を明るくする芽衣。

 (うれ)しさのあまり無意識に体が動き出し、腕をブンブンと振ってしまう。

 しかし……。


「あーでも、女の子が外でお(なか)を出して()くというのはあまり感心出来ません。好きな人とかが出来た時のために今から気を付けた方がいいと思いますよ?」


 続いた言葉にその動きはピシッと(こお)り付いたかのように止まることになるのだった。

 そのまま芽衣は(ひざ)から(くず)れ落ちるように地面に手を突き、そのまま体を丸めてダンゴムシの様になってしまった。


「あれー? 芽衣さーん? 芽衣さーん?」


「……もう……お嫁にいけない」


「行けますよー。大丈夫です! 自信持って下さい!」


「うーん、これはなかなか、またコレクションが……あ、芽衣。こっちに視線いいですか?」


「う……くぅ」


 シンシアさんも(みはり)ちゃんも、もしかしてSなんじゃないだろうか?

 そんな事を考えて丸まる芽衣の耳に遠くで響く爆音が、何かが(くず)れるような大きな音が届く。


「うぅ、こうなったら私もスカッとしたいぃ。早く来ないかなぁ」


 丸まったままで顔だけをそっちに向けた芽衣は、途切(とぎ)れないシャッター音を()びながら煙の昇る戦場を一層(うら)めしそうに(なが)めるのだった。

皆、最初の頃と比べると各段に強くなりましたね。

特に唯なんて、大分カッコいい能力になりました。


最初なんて、形状変化と光線ブッパくらいしか出来なかったのに、贋作聖剣(フェイクス)のおかげで幅が広がりまくり。流石は聖剣って感じですね。


それに比べて芽衣と哨は……うーん、色々と頑張りが必要そうですね。


「面白い」「続きが気になる」と感じたら、

 下の ☆☆☆☆☆ から評価を頂きたいです!


 作者のモチベーションが上がるので、応援、ブクマ、感想などもお待ちしています!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ