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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第六章~アンビションビーティング~
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6-2 降り立つ二つの影法師-2

「それが、さっきから打診(だしん)はしているんですが……どうもどこも抜けられる状況ではないらしく、うちからの増援は厳しいと言わざるを得ない状況です」


「……へ? な、なな、何を言っているですか? 抜けられる状況じゃない? 誰一人ですか? そんなことってありますか!?」


「あ! どうやら特殊治安部隊(スキルナイト)からは増援(ぞうえん)を出してくれるみたいですよ! 到着までは時間が掛かりそうですが、これで少しは楽になるんじゃないでしょうか?」


特殊治安部隊(スキルナイト)ってそれ、もしかしなくてもクライアントじゃないですか……? いいんですか? それで……」


「うーん、うちの体裁(ていさい)的には良くないと思うけど……動いてくれるなら頼るしかないわね。さっきフォレオが言ってたみたいに出し()しみしていられる状況でもないし」


特殊治安部隊(スキルナイト)がようやく重い腰を上げたんですね。それじゃあ、しばらくは時間(かせ)ぎをする感じでしょうか?」


「そうだろうな。(いく)らあの二人組が強かったとしても受けに(てっ)すれば時間稼ぎくらいは何とかなるんじゃないか?」


「相手の目的が何かは分からないけど、少なくとも僕達がするべきことは決まってるしね。何が何でもロボット達を通すわけにはいかないよ」


「うんうん、私も頑張っちゃうよ! やろうと思えば出来ないなんてことはないもんね!」


「そうだね。そうだね。ふっふっふー。遂に私のデビュー戦! 宇宙人の相手は私が受け持つよ!」


「いや芽衣、お前はロボットの方だろ」


「何で!? こんなにやる気に満ち(あふ)れてるんだよ!?」


 そう言って芽衣が力こぶを作るようなポーズをとって見せる。

 いや、細腕過ぎて力こぶなんて見当たらないんだが。


「何でって、お前は防衛向きだろ? 動き回るよりも特定の場所を守ってた方が絶対に強いって兄ちゃん分かってるんだからな」


「そうですよ、芽衣。芽衣は対人戦の経験も少ないですし、そちらの方が活躍(かつやく)できるはずです」


「哨ちゃんまで、それはそうかもしれないけどさぁ……」


「まぁまぁ、芽衣ちゃん。皆で力を合わせるには適材適所って奴が重要だからさ。それに、芽衣ちゃんが後ろで(ひか)えているからこそ僕達も安心して全力で戦えるんだよ。なんなら、一番重要な役割なんだよ?」


「……それ前にも聞いたやつ。空君、手抜きは良くないよ」


「そうですね。兄さんは口が上手くないんですから、説得したいならもっと頑張ってもらわないと」


「う、あはは、二人とも辛口だなぁ」


「さ、そろそろ遊んでいる(ひま)もないわよ。とりあえずフォレオがあの半耳長族(ハーフエルフ)、シルフェが蝙蝠獣人族(ウェスペルティ)を相手して、残りでロボット達を殲滅(せんめつ)するってことでいいかしら?」


「うちは(かま)いませんが……てっきり自身が向かうって言うと思ってました。意外ですね」


「確かにそうだね。どうして?」


「どうしてって、シルフェやフォレオよりも私の方が範囲殲滅(せんめつ)が得意だからよ。まさかあの数相手に銃とか接近戦で戦うつもり?」


「……出来ないわけではありませんが、確かにフィアの方が向いてはいるでしょうね」


「うーん、確かに光の矢であの数を()つのは体力的に厳しいかも。うん、分かったよ!」


 芽衣は不満全開(ふまんぜんかい)といった表情のままだが、全員がとりあえずの方針に納得した。


「それじゃあ最後に、全員無事で戻ってくること、無理だと思ったらいつでも助けを求める事、いいわね?」


「あはは、お母さんみたいだね」


「……今のお母さんみたいだったか?」


「どうでもいいところに反応しないで下さい。問題ありませんよ」


「ふふ、()まらないわね。それじゃあ皆、行くわよ!」


「おう!」


「はい!」


「いっくよー!」


 全員が屈伸(くっしん)をしたり体を伸ばしたりと戦闘に向けて意識を高めながらも笑い、そしてフィアの号令で全員が動き出した。



 ******

 雷人達が現状を確認していた頃、それを遠くから(なが)めている二人組がいた。

 蝙蝠獣人族(ウェスペルティ)と思われる女性リリアと、半耳長族(ハーフエルフ)の少女ナクスィアである。


「あれが例の恩寵の巫女(シビルグレイス)? ただの小娘って感じねぇ。あれが本当にそんなに(すご)い存在なのかしらね?」


「……今更(いまさら)何を言っているのですか? これまでにも映像で見たことがあるでしょう。はぁ、本当に興味(きょうみ)がないんですね」


「だって、戦えるわけでもないのにそんなの見ちゃったら我慢(がまん)出来なくなっちゃうじゃない? うふふ、でもそれももう少しの辛抱(しんぼう)なのよね。あぁ、私の相手は誰がしてくれるのかしら? あっちのマームの小娘? それとも天使族イジェルタの小娘かしらね? もしかしたら、恩寵の巫女(シビルグレイス)もあるかもしれないわねぇ」


「……殺してはいけないっていうの、忘れていませんよね?」


「え? あぁ、そういえばそんな話もあったわね。でも、もしかしたら勢い余って、なぁんてこともあるかもしれないわよ? うふふふふ」


「……そうなりそうだったら私があなたを殺しますので」


「あら、それならあなたとも殺し合えるじゃない。それも悪くないかしらね」


 くすくすと笑いながらそんな事を言うリリアにナクスィアが無言で銃を向け、引き金を引いた。

 (かわ)いた銃声と共に鮮血(せんけつ)が飛び散り、地面を()らした。


 しかし、そんな状況でもくすくすという笑い声は消えなかった。


「あぁ怖い怖い。冗談よ。私もまだ死にたくはないわ。だって、まだまだ面白いことがたくさんありそうなんだもの。だからそんな顔しないでいいのよ? ねぇ?」


「はぁ、冗談ですか。本当にそうならいいですけれどね。今のは警告(けいこく)です。次はありませんよ」


「あは、しっかり当たるように()っておいてよく言うわ。あー、はいはい。銃口(じゅうこう)は降ろしてねぇ」


 リリアはそんな風に何でもないかのように手をひらひらとさせる。

 そして、空中で赤黒いそれに(はば)まれた銃弾が地面に落ちて金属音を響かせた。


 それを見てナクスィアは銃口(じゅうこう)を降ろしながら小さく(つぶや)くのだった。


「あれが当たるわけはありませんから、本当……危ない女です」


 そして、二人の見つめる先で八人の少年少女が動き始めたのだった。

遂に最終決戦の狼煙(のろし)が上がりました。

今回出て来ている敵の二人はこれまでの各章の最後で少しだけ登場していたキャラクター達ですね。


何だかあまり仲は良くなさそうですが、一体どうなる事やら。


これより本格化するバトルに次ぐバトル、使用する能力もどんどん判明していきますので、どうぞお楽しみ下さいな!

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