6-1 降り立つ二つの影法師-1
大変長らくお待たせしました!
一月半くらい? 思っていたよりも確認と修正に時間が掛かってしまいました……申し訳ない。
それではそれでは! 第六章、~アンビションビーティング~開幕です!
転送された先はいつもお馴染みの侵入不可区画。
そしてやって来て早々、俺達は目の前で起きている事態に目を丸くしていた。
「ちょっと、何よ……あれ」
「一、二、三、四、五、六、七……幾つあるんだ? あれ」
「うぅ、せっかくお楽しみ中だったのにぃ……ってうわぁ! 何あれ!? 凄い数だね!」
「ちょっ、シルフェ!? お楽しみ中って、ウォータースライダーを一緒に滑ってただけだよね!? 誤解される言い方しないで!?」
「誤解なんだぁ。それは残念だなぁ。真実にしちゃってもいいんだよ? そ・ら・君」
「え……? いや、ダメです。ダメですよ。何を言ってるんですか、芽衣」
「……この状況であんなことを言える胆力。私も見習うべきでしょうか?」
「あれは見習わなくていいですよ……。それよりもあれ、さながら全戦力投入といったところですか? 本当、止めて欲しいったらないですね」
俺達が見据えるその先。
そこには大小様々なゲートが複数開いており、そこから次々とロボット達が投下されていた。
これまでの百や二百など比べるべくもない。
千どころか万だっていきそうな大群がそこにはあった。
遠目で見るだけでも、うじゃうじゃと蠢くそれらは見ていて気持ちの良いものではない。
これまではやはり様子見だったのだろう。
これを見てしまえばこれまでの侵攻などお遊びのようなものだ。
それにしても……。
「やっぱり、来るわよね」
ゲートから現れた二つの影。
もちろん相手がロボットだけだとは思っていなかったが、これまでの事を考えるとな。
この数に加えて二人の異星人ははっきり言ってやばい。
今回ばかりは本気でダメかもな……。
さてその影はというと、一つはぱっと見ベールを被った聖職者っぽい恰好の少女。
首元に十字架を下げているあたり何かしらの宗教の関係者なのだろう。
髪は金色でふわっとした印象のセミロングだ。
そして、身体的な特徴と言えばやはりその耳だろう。
凄く長いというわけではないが、少し長めの耳で先が尖がっている。
これまでの経験からいくとエルフに近い感じだろうか?
どうもイメージ通りの森の民って感じではないがありそうだな。
立ち姿はかなり様になっていて、ブレる様子も無く芯の通った様なピンとした感じだ。
これまでの事からいって彼女も傭兵なのだろうか?
小柄だしそうは見えないが、人は見かけによらないものだからなぁ。
一方、もう一つの影はというとワンピースにコートを羽織った姿で、腕の下の大きな膜と大きな耳が特徴的な獣人らしき女性だ。
見た目からして恐らく蝙蝠だろうか? まさかモモンガということもないだろう。
その女性は強気そうな瞳を爛爛と輝かせてこちらを見ながら、にまーっと笑みを浮かべていた。
こちらはというとエルフらしき少女とは一転、若干の粗雑さを感じさせる佇まいだった。
だが、どこか洗練されているようで隙があるようには見えない。
どこから仕掛けても即座に対応してきそうな。そんな印象を抱かせた。
そんな二人を見て、フィアが忌々し気に呟いた。
「ほんと、珍しいところを揃い踏みね。悪魔族、天使族、竜人族ときて、果ては半耳長族に蝙蝠獣人族ですって? 全く、一向に飽きが来ないわね」
「……あれハーフエルフなのか。それに、ウェスペルティ?」
「エルフは確かもう少し耳が長いのよね。私も数人しか見た事ないからあんまり分からないんだけど……。蝙蝠獣人族っていうのは邦桜的に言うと蝙蝠の特徴を持った獣人族の総称よ。暗いところが好きな種族だからあんまり人前には出ないって話を聞いた事があったんだけど、どうやら例外はいるみたいね」
「珍しいだけなら問題ありませんが、竜人族が敗れた上での侵攻ですからね。苦戦は間違いない……というか。そもそも、あれほどの数のロボットがいるとなるとうち等だけで完璧に防ぐのは不可能に近いと思いますよ。シンシア、誰か手の空いている人を探して声を掛けて下さい。もはや出し惜しみを出来る状況ではないですから」
こんな状況にあっても冷静といった様子のフォレオ。
確かに、今は体裁を気にしている時ではない。
これでマリエルさん達でも来てくれれば鬼に金棒。こんな状況でも乗り越えることが出来るだろう。
そんな風に一瞬気が抜けそうになるのも束の間、シンシアさんからの返答は重たい口調で告げられた。




