5-59 夢の記憶を心に刻み、色付く世界への一歩を踏み出せ 3
な、な、な、なんと! 今話で三百話を達成しました!
ここまで読んで頂きありがとうございます!
結構長くなってきましたが、実はまだ前、中、後編でいうと前編だったりして……。
まだまだ先は長いですが、引き続きよろしくお願いします!
仄暗い船内で、スターライトフィッシュの明かりがフィアと俺の顔を照らし出す。
フィアは何を言われたのか分からないといった感じで呆けていたが、段々と理解が追い付いたのかみるみるうちに顔が赤くなっていった。
口元は緩み、今にもはわわわわとか言いだしそうな感じだ。
……もう言ってしまったのだ。後戻りは出来ない。
言葉を口にする前にはどうしたって戻れない。
ならもう、このまま思いの丈をぶつけるしかない。
「なななな、何を? あ、冗談? じゃ……え? ない? え?」
「冗談じゃない。俺はフィアの事が好きだ」
「あ、あぁ! 友達的な!」
「恋愛的な!」
一歩後ずさるフィアと一歩踏み出す俺。
フィアは明らかに混乱していますといった感じだが、嫌われているわけではないはずだ。
そもそも、嫌いだったら二人きりでこんなものに乗るわけがない。
……その……はずだ。
「わ、私なんかのどこが?」
「……全部と言いたいところだけど、知り合ってそう長くもないし、それを言えるほどフィアを知っているとは言い難いからな。順に挙げていくとすれば……まず優しいところ、ちょっとした仕草が可愛いところ、しっかりしてるのにちょっと抜けてるところがあるところ、朝が弱いところ、料理は上手いし、頑張り屋だし、厳しくすべき時は厳しくしてくれる。真面目なところとか、誰かのために戦えるところ、人との縁を大事にするところ……ちょくちょく俺の布団に入って来るのだってなんだか信頼されてるみたいで嬉しいし、それを気にしてこっちの様子を窺ってるのも可愛いし、それに……」
「わあああああああぁぁぁ!! わあっ! わあっ! もういい、もういいから!」
俺が一つ言う度に顔をさらに赤くして恥ずかしそうにしていたフィアだったが、遂に我慢の限界とばかりに俺の顔の目の前でぶんぶんと手を振って見るなと視界を塞ぐ。
「あぁ、そういうすぐ赤くなるところも可愛くて好きだ」
「もういいって言ってるでしょ!? あなただってすぐに赤くなるじゃないのよ! な、何なのよいきなり、もぅ……。普段はすぐに慌てるくせに、今日はどうしてそんなに堂々と……まじまじとこっちを見て……え、えっと、私と付き合いたいって事、なのよね?」
「そうだって、さっきから言ってるだろ?」
「あぅ、へ、返事をしなきゃなのよね。返事、返事……」
なかなか返事をくれないな。
フィアならすぐに断るか、しばらく待って欲しいとでも言うかと思ったのだが……。
もしかして、どうやって断るかを考えているのだろうか?
フィアは優しいし、普通にありそうだ。
あぁ、時間が永遠のように長く感じる。
緊張の所為か腹が痛くなってきた。
早く結果を知ってこのストレスから解放されたいと思う反面、結果を聞きたくないと思っている自分がいる。
ちょっと冷静になってきた所為か、また恐怖が昇って来て今にもよく考えてからでいいとか、先延ばしにするような言葉が口から出てしまいそうだ。
でも、そんな事になったら四六時中結果の事を考えてしまって何も手に付かない自信がある。……いや、でも急いては事を仕損じるとも言うし……。
あぁ! 俺はどうすればいいんだ!
そんな風に頭の中の俺が頭を抱えてぶんぶんと振っていると、突然腕から振動が走った。
……おい、ちょっと待てよ。
この振動ってもしかして……。
「休暇中にすみません。皆さん! ゲートが開きました! 敵襲です! 急いで準備をして下さい!」
「……あ、あ、敵襲! 雷人! 敵襲だわ! へ、返事はそれが終わってからってことで、ね?」
……なぁ、普通こんなタイミングで来るか?
狙ってないとおかしいだろ。
一世一代の告白の最中に特大の邪魔が入るとかさ、俺は運命の女神様にでも嫌われているっていうのか?
いや、一応は言いたいことは言えたんだから、最悪ではないことを喜ぶべきなのか? 不幸中の幸いって?
ははは……どこの誰かは知らないが、こればっかりは許せないな。
「……換装」
その一言と共に俺の体は光に包まれ、いつもの戦闘服姿へと変わる。
それを見たフィアの顔が返事を先延ばしに出来たことで助かったとでも言わんばかりにぱぁっ! と明るくなった。
その表情に、俺はさらに恨みを募らせた。
「さっさと終わらせるぞ。今だけは誰にだって負ける気がしないからな」
「え? えぇ、そうね。早く行って懲らしめちゃいましょ! 換装!」
「……準備はよさそうですね。それでは、転送!」
シンシアさんの掛け声と共に俺達は光に包まれ、船内には静寂が訪れるのだった。
*****
薄暗い部屋。
そこでモニターの画面の明かりに照らされる真っ黒な少年が一人。
その部屋に突然光が差した。
「……」
真っ黒な少年は眩しそうに手で庇を作るとゆっくりと後ろを振り返った。
「やぁ、久しぶりだね」
「……なぜ明かりを点けない。そんなに暗闇が好きなのか?」
視線の先にいたのはスーツに身を包んだ中年の男。
細身で痩せぎすなその男は、とてもではないが健康そうには見えなかった。
目の下にはクマが出来ており、疲れているというのが一目で分かるような有様だった。
「んー、そういうわけじゃないけど、こっちのほうが落ち着くっていうのはあるかな。それで、今日はどうしたのかな?」
「首尾はどうかと思ってな。近くに来たから寄っただけだ」
「ふーん、君っていつも忙しそうだよね。ほら、ちょうど今回のゲームが始まるところだよ。君も一緒に見ていく?」
「いや、いい。私には仕事がある。……そのゲームとやらに興じるのは構わないが、きっちり仕事は果たせよ」
「あぁ、分かってるよ。そういう契約だからね」
「……分かってるならいい。ではな」
そう言って男は部屋から出て行った。
それと同時に部屋の電気が消え、再びモニターの明かりだけが少年を照らした。
「さてさて、リリアとナクスィアの準備も万端。例のあれも問題なく動くだろうね。さぁ、今回はどれくらい面白くなるかな?」
その時、モニターの向こうには巨大なゲートが開いたのだった。
どうも、Prasisです。
SSC ホーリークレイドル ‐第五章~クレイドルガーディアンズ‐
これにて終了です。
「面白い」「続きが気になる」と感じたら、
下の ☆☆☆☆☆ から評価を頂きたいです!
作者のモチベーションが上がるので、応援、ブクマ、感想などもお待ちしています!
さて、第五章はいかがだったでしょうか?
本章は基本的に修行パートと日常パートのみの回となりましたが、サブタイトル通り(クレイドルガーディアンズはS級社員を言い換えたものです)今章でS級社員が全員登場する形となりました。
(作中ではS級と紹介してないキャラもいますが、実はここまでで既出です)
それに加え、それぞれの恋愛事情もどんどん進展した章になりましたね。
お決まりともいえる邪魔が入ってしまったわけですが、それでも告白しました。もう逃げられませんね! ふふふふふ……。
さて、続く第六章のサブタイトルは~アンビションビーティング~です。
ここまでの話では組織との対決と修業、仲間との関係構築がメインとなってしまい、本筋の話がなかなか進んでいませんでしたが、本章でようやく進むかと思います。
組織との最終決戦な事もあり、色んなキャラがバンバン出てくる章となりますが、戦闘も設定も盛り沢山です! ボルテージ上げていきましょう! いぇい!
と次章の紹介をさせて頂きましたが、やはりというかまだ執筆が間に合ってないんですよね……。
楽しみにして頂いている読者の皆様には大変申し訳ないのですが、今しばらくお待ち下さい!
出来るだけ早く投稿再開できるように精進したいと思います!
それでは、これからも
【 SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜 】
をどうぞよろしくお願いします!




