表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第五章~クレイドルガーディアンズ~
299/445

5-57 夢の記憶を心に刻み、色付く世界への一歩を踏み出せ 1

 さて、色々とアトラクションを回ったが最後に遊覧潜水艦(ゆうらんせんすいかん)に乗ろうと(いさ)んでやって来たのだが……。


「見事に(はぐ)れたわね」


 この遊覧潜水艦(ゆうらんせんすいかん)にはゴールデンタイムというものが存在するそうで、一定の時間に乗ると特別な物が見られるのだという。


 そこで俺とフィアが急いで列に並び後ろを振り向くと、付いて来ていると思っていた芽衣、哨、フォレオ、唯の四人がいなかったのだ。


「きっと芽衣がさっきの売店で(ねば)ってた所為(せい)だな。まさか付いてきてないとは思わなかった」


「……まぁいいわ、最後くらい二人きりでっていうのもいいでしょ? このまま並んじゃいましょ!」


「……二人きり、そうだな」


 全員で来ている以上、そんな機会は訪れないと思っていただけにかなり嬉しい。


 というか、二人きりって言われるとそれだけで緊張してくる。

 普段はなんだかんだで誰かが近くにいるからな。


 それから、二十分ほどは列に並んでいただろうか?

 ようやく俺達の番となり、ゲートの前に案内された。


「お次の方、こちらへどうぞ! 二名様でよろしかったですか?」


「えぇ、二名で合ってるわ」


「それでは! すぐに次の遊覧潜水艦(ゆうらんせんすいかん)がやって参りますので、そちらに乗って頂きます。水面をご覧下さい」


 そう言われて指差された方の水面を見ていると少し離れた所の水面に影が浮かび上がった。


 潜水艦(せんすいかん)が浮上してきたのだろう。

 するとみるみるうちにその影が大きくなり、水面を押し上げて潜水艦が姿を現した。


「わっ! あれが遊覧潜水艦(ゆうらんせんすいかん)なのね! 私潜水艦(せんすいかん)に乗るのは初めてだから、ちょっとドキドキするわ!」


「まぁ、普通は乗る機会なんてないよな。俺も乗ったことないよ」


 全長七メートルほどはありそうな小型の潜水艦で遊覧用なだけあってガラス窓がたくさん付いているようだった。


 ……潜水艦にガラス窓が付いてるイメージあんまりないけど、大丈夫なんだろうな?

 いや、アトラクションにしてるんだから問題あるはずはないんだが……。


 そんな事を考えていると潜水艦の上部のハッチが内側からパカッと開き、中から乗客が出て来て降りて行った。


 一、二、三、四……六人か。

 二人で入るのは結構贅沢(ぜいたく)かもしれないな。


「さぁ、お客様! 足元()れておりますので、お気をつけてご乗船下さい。良い旅を!」


「ありがとうございます」


「ありがとう」


 乗客を降ろしてこちらに流れて来た潜水艦に向かって歩いて行き、外面に付いていたタラップを登って中へと入るとスタッフが付いて来てハッチを閉めて行った。


 それと同時にフィアが感激の声を上げる。


「わぁ! 中はこんな風になってるのね! 見た目は結構レトロだわ! 機械チックな感じもなかなかいいわね」


「確かにそうだな。実際の機能的には多分ハイテクなんだろうけど、内装をそれっぽく見せてる感じかな? 雰囲気があるな」


 わざとらしくちかちか光るランプや、何かを探知していそうなレーダーなど、それっぽい機器が備え付けられているが、特に機能していそうには見えない。


 多分、見せかけだけの物だろう。

 とはいえ、こういうのはなんだかテンションが上がるな。


「ほらほら、雷人! 凄いわよ! ここの水、透明度が高くて結構遠くまで見渡せちゃうわ! 暗いのに凄いわね!」


「確かにそうだな。あっ、潜航(せんこう)時に揺れるらしいぞ。フィア、一旦座って潜航(せんこう)するまで待とう、って、うわっ!」


「きゃっ!」


 テンションマックスといった様子で窓に張り付いていたフィアが潜航時の揺れでバランスを(くず)したので咄嗟(とっさ)に腕を滑り込ませて体を支える。


 フィアは本当にこういう時は危なっかしいな。

 仕事中ならこんなこと有り得ないんだが……。


「ご、ごめんなさい」


「いや、大事(だいじ)なくて良かったよ。それよりほら、もう揺れも収まったからゆっくり見よう」


「そうね……ねぇ、まだ揺れるかもしれないし、しばらくこのままでもいいかしら?」


「え? あ、いや、全然……OK、です」


 どういうわけなのか、フィアからのこのまま宣言。

 今の状態はというと、フィアが俺の胸に寄りかかっており、その体を腰に片手を回して俺が支えている状況だ。お互い水着という事もあり破壊力(はかいりょく)半端(はんぱ)ではない。


 幸いと言うか、フィアの水着はいわゆるビキニパーカー。

 腰に回した手は地肌(じはだ)を触っているわけではない。


 俺の方も一応上着は羽織(はお)っているもののその下は裸なわけで。

 前は開いているので、もたれかかられているだけでも何となくこそばゆい。

 度々(たびたび)首の辺りにフィアの吐息(といき)が掛かるので尚更(なおさら)意識してしまう。


 もしかしたら恋人とかなら普通の事なのかもしれないが……フィアさん。

 そういう事を言うと勘違(かんちが)いさせてしまうんだぞ?


 俺としてはラッキーとしか言えないので思う存分享受(きょうじゅ)させて頂きますが……いや、駄目(だめ)だ。例えこの状態を止めることになってしまう可能性があっても、言っておくべきだな……うん。


「……フィア、俺だからいいけどさ。他の奴にそういうことを言っちゃダメだぞ? 勘違いさせるからな」


「……他の相手なんて思いつかないけど、それって……」


 何やら顔を赤らめながら遠慮(えんりょ)がちに俺のわき腹の辺りに手を()えてこちらを見上げてくるフィア。


 おい、そんなの反則だろ!

 ポイント高いです! 可愛過(かわいす)ぎる!


 ……いやいや落ち着け、変なことを考えていると(さと)られてはいけない。

 平常心、平常心……。


 俺は心情とは裏腹(うらはら)に極力普通の顔を心がけてフィアを見返し、何も気にしていないとアピールする。


「ん?」


「……何でもない。あっ、ほら! 光が見えて来たわ! 外に出たのね!」


「あぁ、本当だ。綺麗(きれい)だな」


 相変わらずフィアの方が気になるが、それはそれとして窓から見える景色は最高に綺麗だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ