5-46 肌は晒せど空気は読めず
その後、少しして残りの女性陣もようやく出て来た。
さっきフィアのを見た手前、自然に視線がその水着姿へと向いてしまう。
唯は水色を基調としたパレオの水着だ。
水色から薄紫へのグラデーションが綺麗で、海を感じさせる花の柄も似合っていて可愛らしい。
シルフェのはフレアビキニというやつだろうか?
肩の所で結ばれた紐で固定されており、その水着は腕の方まで包んでいる。
シルフェの大きな胸から水着がカーテンのように垂れる様は非常に可愛らしいと言えるだろう。
次にフォレオは白と紫を基調としたビキニだったが、フィアに対抗したのか下は紐だし、上も前の部分で紐によって留められていた。
そして、その上に薄手の若干透けそうな感じの上着を着ており、下にはホットパンツを穿いている。
フォレオは体形があまりグラマーではないのでマシではあるが、なかなか扇情的な水着だ。
何と言うか、結構皆攻めている印象だな。遊びだからこそ本気とかそういう感じなのか?
そんな中で芽衣の水着はというとスタンダードなワンピースタイプ。
うんうん。普通でよろしい。
芽衣にはまだビキニとかは早いからな。
そして最後は哨だが……紐ビキニは今更として、何でスケスケひらひらなワンピースを着てるんだよ! スケスケとはいえただのビキニよりは露出も減っているはずなのに扇情的に見えるから不思議だ。
恐らく対象は空なんだろうが、毎度毎度こんな風に煽ってるようなことをして。
本当に、哨はどこでこんな知識を得て来るのだろうか?
そんな事を考えているとフォレオがジトーっとした目でこっちを見ているのに気付いた。
まさか俺の視線を感じ取ったのか? だが、見るなと言うのは無理というもの……。
しかし、俺のそんな考えとは裏腹にフォレオがジトっとした視線を向けたまま言った。
「……女性が肌を晒して水着を着ているのですよ? こういう時は何か言うべきではないですか?」
「全くですね。せっかく今日のために水着を新調しているんですから、感想を言うのはもはや義務と言ってもいいでしょう。兄さん、そういう所がダメダメなんですよ?」
「そうだよ、そうだよ! お兄ちゃん? こういう時はとにかく褒めるものなんだよ? ほらほら、空君も何か言う事があるんじゃないの? シルフェちゃんもこんなに頑張ってるんだからさぁ!」
そんな事を言いながら芽衣がシルフェの豊かと言って差し支えない胸を下から掴んで持ち上げた。
「ひゃああああっ!? ちょ、ちょっと、芽衣ちゃん!?」
「め、芽衣? それはちょっと……あぅ」
突然の芽衣の行動に悲鳴を上げるシルフェと空を掻く哨。
そんな二人を気にする事も無く芽衣は目を輝かせながら両手で掴んだそれを揉みしだいた。
「おぉー、柔らかいし結構重い。こんなのを自由に堪能出来るだなんて、空君は幸せ者だよね」
「じ、自由にって! そんなことしてないよ!?」
「あぅ、こ、これは見ないで~!」
芽衣のにやにや顔で放たれる爆弾に空が分かりやすく動揺していた。
その反応になのか、それとも人にされているからなのか、流石にシルフェも恥ずかしかったらしく胸を抱くようにして隠した。
しかし、腕で隠すには大きすぎるその胸は隠すどころかむしろ盛り上げられてしまい、余計に強調されていた。おい芽衣、ここは外なんだから自重しなさい。
「大丈夫。見てない。見てないから!」
「……なんだか、それはそれで複雑だよ……」
そんなやり取りをしながら顔を真っ赤にする二人。
最近は慣れてきていた様子の空もさすがに耐えられなかったか。
「見てないはずない、絶対見てた。兄さん、やっぱり大きな方が良いの?」
哨は何か暗いオーラを放ちながら自分の胸を持ち上げるようにしてブツブツ言っててちょっと怖いな。
俺はやむを得ないと歩いて行き、尚もシルフェの胸を堪能している芽衣に拳骨を食らわせた。
「痛い!」
「おい芽衣。駄目だろそんなことして」
「うー、でも空君は奥手だからこのくらいしないと駄目だよ」
「やっても駄目だろ? ただでさえ駄目なのに、こんな場所でやったら他の客にも見られるし、シルフェが恥ずかしがってるだろうが」
「うぅ、もうお嫁にいけない。だから空が貰ってね?」
「……考えておくよ」
「……え!?」
空の思わぬ言葉にシルフェを含めた全員が一瞬固まって空を見る。
空の奴、今なんて言った!?
「空、あなた一手飛ばしましたね!?」
「きゃああああ、これって、これってラブコメ展開よね? あれ? ラブロマンスかしら?」
「わぁ、何にしても奇跡の瞬間です。異種族間夫婦の誕生です!」
「そ、そんな。優柔不断なお兄ちゃんが……」
「いや、まだOKしたわけじゃないからね!?」
状況に理解が追い付き興奮冷めやらぬといった様子のフォレオ、フィア、唯とショックを受けている哨に対して空が慌てて突っ込んだ。
確かにOKはしていないが、ただただぼやかしていたこれまでと比べるとな。
考えると表明しただけでも前向き、大きな前進だ。
ただ逃げていると思っていたが、空も前向きに考えているんだな。
俺もぼやぼやしてはいられないか。
「そんなこと言ってー、空君満更でもなさそうじゃん。シルフェちゃんの事嫌いじゃないんでしょ? エッチなことしたいって思ったんでしょ?」
「……そりゃ思わないことはないけど、それとこれとは話が別だよ」
「……空、私とのこと考えてくれるの?」
「……ずっと返事をはぐらかしてたのに、こんな僕の事をずっと好きって言ってくれてるんだからね。流石にもうその気持ちは疑ってないよ。でも、まだ駄目なんだ。もうちょっと返事は待ってくれないかな?」
そんな事を言う空にフォレオがむっとした表情で諭すように言う。
「空、あんまり引き延ばすのは良くないですよ? 保留のままじゃシルフェだって落ち着かないでしょうし、何より男らしくありません」
「……フォレオ、そう言ってやるなよ。空にも思うところがあるみたいだし、これは二人の問題なんだからさ」
「それは……そうですが」
「大丈夫。目処はもうついてるから。それが終わったら返事をするよ」
真剣な顔でシルフェの目を見ながらそう言う空の顔はいつもの少し頼りない顔とは違い、非常にカッコ良かった。空も、成長しているんだな。
ふとフィアの方に視線を向けると目が離せないとばかりに二人を見つめている。
フィアは一体どんなことを考えているのだろうか?
……いや、今はまだその時じゃない。
そう考えて視線を戻すと瞳を少し潤ませたシルフェが空の目を真っすぐに見返していた。
「信じていいんだよね?」
「うん」
迷うことない即答。
それは空の意思の硬さを、誠実さを物語っていた。
シルフェもそう思ったのか、涙を拭うと満面の笑みを浮かべた。
「……分かった。私待ってるね! でも、返事を待ってる間も攻め時なんだから! もっと、もっと攻めるよ! 行こっ!」
「あ、ちょっ! そんなに急がなくても逃げないから! じゃ、じゃあ皆、また後で!」
「またねー!」
あっと言う間に走り去っていく二人と取り残された俺達。
そんな中、どういうわけか芽衣と哨以外の皆の視線が俺に集まっているのに気付いた。
え、何だ? これは一体何の視線だ?
女性陣は一体、俺に何を訴えてるんだ?
……あ、あれか!
「いや、皆、水着凄く似合ってるよ! 唯のは花柄が海を連想させて夏っぽくていい感じだし、フォレオのも新鮮で可愛いし、芽衣はシンプルながらその白色が芽衣の純真さを表してると言うか、えっと、センスいいね!」
「……どうも、でも今じゃないです」
「そうですね……。少し、遅かったですかね」
「お兄ちゃん、このタイミングだとなんかプレイボーイでチャラ男みたいだよ? 空気は読まないとー」
「え、プレイボーイでチャラ男!?」
何やら顔を赤らめながらもそんな事を言うフォレオと唯。
そして、芽衣は俺が全員を口説いているとでも言いたげだった。
いや、だって話は脱線したけど、元は褒めろって話だったじゃないか!
「まぁ、まぁ、雷人なりに空気を読もうとしたんでしょ? ほら、そんなことよりも私達も早く行きましょ! 休みは全力で楽しまないとね!」
そんな三人をフィアが背中を押しながら歩きだした。
女心……難しくてさっぱり分からない。
空、頼むから俺を一人にしないでくれないか……?
そんな心の声は誰に届くこともなく泡と消えるのだった。
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恋愛関連、ぐぐぐっと進行中であります!
ですがとりあえず、まずは遊んで楽しみましょう!
次回、水着回のイベントをいまいち思いつかなかった作者による水遊び回です。
結局これしか書けないんだ。乞うご期待!




