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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第五章~クレイドルガーディアンズ~
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5-41 千の死をこえて1

 ノインさん以降の訓練もつつがなく進んだ。


 エンジュさんからは技の威力(いりょく)を高め、必殺技はより必殺なものに。

 小技は相手を(ひる)ませ(すき)を作れるようにと特訓を受けた。


 ルイルイさんからは素早く動くための体の動かし方や空中での姿勢制御(しせいせいぎょ)、高速移動中の視線の動かし方など高速戦闘の技術に関する指導(しどう)を受けた。


 そして、マリエルさんからは剣術指南(けんじゅつしなん)

 技などではなく、基本的な刀の扱い方や移動方法などを教わった。(マリエルさんが一瞬で距離を()めてきたあれは歩法(ほほう)によるものだったらしい)


 それぞれ、三日でものにするということはもちろん出来なかったが、取っ掛かりは得た。

 後は実践して少しずつものにしていくしかないだろう。


 そして、四人からの指南(しなん)を受け終えた俺は訓練終了……というわけはなく。

 アセシノさんの元を(おとず)れていた。


 とはいえ、本人はまだいないみたいなので待っている状態なのだが……。


「お疲れ様!」


「おわっ!」


 突然視界が真っ暗に……これはもしや、というか声の時点で分かってはいるのだが。


「うふふ、だーれだ」


「フィアだろ? さすがに間違えないよ」


「あら、こんなにすぐにバレるなんてね」


 そう言うとあっさりと目を(おお)っていた手が外されたので、振り返る。

 すると気恥(きは)ずかしかったのかマフラーをクイっと上げて口元を隠し、(ほほ)をほんのり赤らめているフィアがそこにいた。


 まさか、俺にこんなテンプレートみたいなイベントが発生するとはな。

 こんな場面に遭遇(そうぐう)する事は一生(いっしょう)ないと思っていたが、人生何があるか分からないものだ。


「いや、流石(さすが)に声で分かるよ。もう付き合いも短くないんだからさ」


「……それもそうね。それで、雷人は特訓どうだった? 成果(せいか)は出たのかしら?」


「まぁ、ぼちぼちって感じだな。今回の訓練でS級の人達を見て自分はまだまだなんだって思い知ったよ」


「そうね。そう簡単には皆のレベルには追い付けないわ。それでも、雷人なら頑張っていればあれくらい強くなれると私は思うわよ? だからもっともっと頑張(がんば)りなさいよね」


 そう言ってフィアが俺の胸をこつんと(たた)いた。

 そうか、フィアは俺なら出来るって思ってくれているのか。


 他の人に言われたらお世辞(せじ)だろうと思ってしまう言葉だが、フィアのそれは本心から言ってくれている。そんな風に思えた。


「……ありがとな。頑張るよ」


「……そういう反応されると()れるわね」


 俺が笑って見せると、フィアが驚いたように目を丸くし、またマフラーで口元を隠してしまった。そういう反応をされると俺も照れるんだがな。


「……悪い」


「悪くないのに(あやま)らないでよ。あ、そうだ。ん……」


 フィアが胸に手を当てて目を閉じた。

 恐らく、サーチでも使っているのだろう。

 アセシノさんはこっちから探さないと分からないからな。


「んー、シノはまだ来てないみたいね。もうちょっと待ちかしら?」


「あーそうだな。そういえばあの人、隠密性(おんみつせい)(すご)いけど戦闘の方はどうなんだ? パッと見じゃ肉弾戦(にくだんせん)得意(とくい)そうじゃなかったし、ルイルイさんみたいに身体強化との相性(あいしょう)がいいとかなのか?」


「うーん、そういうわけじゃないけど、シノはちょっと特殊(とくしゅ)でね。あの子は暗殺系(あんさつけい)の仕事を専門にしてるのよ」


「あ、暗殺!?」


 突然の物騒(ぶっそう)な話に驚きを隠せず、そのまま口に出てしまった。


 いや、確かに能力からすればベストマッチな使い道なのだが、まさかこの会社にいてそんな言葉を聞くことになるなんて露程(つゆほど)も思わなかった。


 そんな俺の反応を見て悪い印象を与えてしまったと思ったのか、フィアが(あわ)てたようにぶんぶんと手を振った。


「あ、いや、別にあの子が悪い子ってわけじゃないのよ? でも、やっぱりどうしてもそういう仕事はあって、あの子はそういうのが得意だから優先的に受けちゃうのよね。やっぱり、殺しの仕事って誰もやりたがらないから……」


「得意って……、なんか事情がありそうだな」


「そうね。私も(くわ)しくは知らないんだけど、シノが殺し屋として生きてたところをパパが引き抜いたって話だったから……。あ、でも引かないで上げてね? シノはその特異性(とくいせい)もあって仲のいい人が少ないのよ。ちょっとシンパシーを感じちゃうわ」


 シンパシーって、フィアにフォレオに、この辺友達少ない人多いな。

 いや、友達は少なくても十分過ぎるくらいに仲のいい人は多いとは思うが、この会社の人達ほぼ全員フィアと顔見知りみたいだからな。


「確かに、自分から行かないと気付いてもらえないってなるとちょっとハードルが高いよな。しかも、そうしてると本人は(つら)いんだろ? それなら尚更(なおさら)だな」


「そうなのよね。だからもし話す機会があったらなるべく相手をしてあげてくれる? 誰とも話せないって(すご)(つら)いと思うから」


「まぁ、それは問題ないけど……あ、来たみたいだな」


 その時、部屋のドアが開いたのでフィアと共にそちらに視線を向けた。

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