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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第五章~クレイドルガーディアンズ~
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5-28 神速とうたわれし者1

「え!? 雷人はノインに勝ったの!?」


「おー! 初クリアおめでとうー! (すご)いね!」


「師匠に勝ったですか? いや、雷人は高速移動が出来ますから、あの条件をクリアしてもおかしくはないですか」


「わぁ! 雷人君(すご)いです! 一番乗りですよ! 私達も負けていられませんね!」


「うーん、僕もどうにかしてクリアしないとね。いつまでも雷人に頼り切りなわけにもいかないし」


「ははは、まぁちょっと無理もしたし、手加減されてたから出来たことだからな。運みたいなもんだよ」


 俺が課題をクリアしたことで、若干(じゃっかん)重くなっていた空気が一気に明るくなった。

 テンション高めに掛けられる言葉に少し()れながらも返していると、フィアが近付いてきた。


 そして、何かと思ったら突然頭にデコピンを食らった。


「って! な、何?」


「運だろうと、手加減されていようと、ノインに勝ったのは(すご)いことよ。謙遜(けんそん)しないの。さ、私も負けていられないわ。次こそはクリアして見せるんだから!」


 フィアに続いて意気込(いきご)む皆を見て、俺は手で(ひたい)(さす)りながらも自然と笑っていた。


 そうそう、皆ちょっと固くなってたからな。

 このくらい(くだ)けていた方が実力も出せるというものだろう。


 そんなことを考えていると後ろからジトーっとした視線を感じた。

 なるべくそれには気付かないふりをしつつ耳を()ますと後ろの会話が聞こえてきた。


「ははははは、ノインが一番に負けたか! 根性が足りなかったんじゃないのか?」


「うるさいのですよ、根性馬鹿! 今回は偶々(たまたま)偶々(たまたま)油断(ゆだん)しただけなのです! それに、よくよく考えてみると私の課題の方が皆の課題よりもクリアし(やす)い気がするのですよ!」


「あははは、確かにそうかもしれないけど、自信満々に問題ないのです! って言ってたのはノインかな」


「大丈夫。課題をクリアされても()ずかしくないよ。ノインの能力は相性の良し()しが結構関わってくるし」


「うぬぬぬ……これ以上は負けないのですよ」


 どうやらノインさんが揶揄(からか)われているようだ。

 今回ノインさんは結構仕切(しき)ってたからな。どうやら皆に大見(おおみ)えを切っていたようだ。


 申し訳ない気持ちもあるが、本気でやってこその訓練だ。

 謝ることもない。


 そんなことを考えながらも視線の方角(ほうがく)を見ないようにしていると、マリエルさんから声が掛かった。


「はーい。それじゃあそろそろ次に移るかな! 組み合わせはー、私とはシルフェ、ノインとは空、エンジュとはフォレオ、そしてルーとは雷人ね。ほら、早く準備するかな!」


「はい!」


 俺達は元気に返事をすると、カプセルへと向かうのだった。


 *****


 さて、場所は再びというか闘技場(とうぎじょう)


 目線の先にいるのは体を若干(ちぢ)こまらせつつも、なんとか目線をこっちに向けているルイルイさんだ。あっ、()えきれなくなったのか目を(つむ)っちゃったよ。


 この前の訓練で打ち()けたかと思っていたんだが、まだまだ慣れてもらえてはいないみたいだな。

 仲良くなっても時間を置くと、何とはなしに不安になって話し掛けづらくなってしまうあの現象だろうか?


 ちょっとショックだが、ルイルイさんはそういうのを気にしそうだからな。

 態度(たいど)には出さないようにしよう。


「えーと、ルイルイさん」


「はひゃい!」


「……それで、ルイルイさんのルールはどんな感じなんですか?」


 俺がなるべく気にしないようにしつつ話し掛けると、数回の深呼吸の後にゆっくりと話し始めた。


「えっと、うちの場合は時間制限(じかんせいげん)付き、だよ。最初の五分間は、うちはこのまま戦い、ます」


「このまま……?」


「う、うん。このまま、ね」


 ……このまま、ってどういう事だろう?

 今と何か変わるのか?


 ……あ、そういえば最初に会った時にフィアが確か言ってたな。

 ルイルイさんは身体変化(メタモルフォーゼ)の力を使っているとか……、え?


 時間制限付きでそれって、もしかして身体変化(メタモルフォーゼ)を使ってることが(かせ)になってるのか? どうしてそんなことに……。


「えっと、たしか身体変化(メタモルフォーゼ)を使ってるんですよね?」


「っ!? ……あ、あぅ、知ってたん、だね……」


「まぁ、フィアからちらっとだけ……。今の話の感じだと使ってることで戦いづらくなってるんですよね? じゃあ、どうして使ってるんですか?」


 俺がそう言うと、ルイルイさんが明らかに動揺(どうよう)……というか何やらもじもじし始めた。

 やっぱり聞くのはまずかっただろうか? 隠してるってことは知られたくないってことだろうし。


 どうするべきかと考えつつジッとルイルイさんを見ていると、ようやくルイルイさんが口を開いた。


「は……()ずかしい、ので……」


 ……()ずかしい。反応からなんとなく分かっていたが、やっぱりそうなのか。


 ルイルイさんはかなり小柄(こがら)で、せいぜい中学生くらいな感じの見た目だ。

 身体変化(メタモルフォーゼ)を使ってこうなっているという事は、もしかして本当は高身長だったりするのだろうか?


 でもそれって()ずかしいのか?

 はっ、まさか実は超大柄(ちょうおおがら)筋肉(きんにく)ムキムキとか?


 何かの漫画でそんなのを見たことある気がする……。

 制限時間……なんというか、(こわ)いもの見たさのようなものがあるな。


 いや、でも手を抜くわけにも……いやいやでも、本気のルイルイさんと戦うまたとないチャンスでもある……。


 俺が無言でそんな葛藤(かっとう)をしていると、ルイルイさんがあわあわとしながらこっちを(うかが)っているのに気付いた。しまった。ルイルイさんを完全に放置していた。


「あ、すみません。えっと、つまり五分過ぎたらルイルイさんが本気になるからそれまでにってことでいいですか?」


「ひゃ、ひゃい。五分の間に一回でもうちに攻撃を当てる事、それが条件、だよ。あと、特殊勝利条件だけど、本気は出しちゃう、から。共通ルールの代わりに、十秒逃げ切ればそれでも勝ち、です」


「え? 十秒ですか?」


「う、うん。何か問題がある、かな?」


 いくらルイルイさんが強いとはいっても、たった十秒くらいなら逃げに(てっ)すれば何とかなると思うが、ルイルイさんの本気はそんなに(すご)いのだろうか?


 気にはなるが、そうなる前に攻撃を当てればいいだけか。


「分かりました。それじゃあ始めましょう」


「う、うん。いつでも、どうぞ」


 そう言ってルイルイさんが異空間収納から二本の短剣を取り出し(かま)えた。

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