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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第五章~クレイドルガーディアンズ~
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5-20 爆ぜろ不屈の快男児3

 痛い。激痛が全身を走っている。

 体をピクリと動かすことすらも出来ない。


 俺は三十秒もらっても腕一本動かさせることも出来なかったのに、俺はたったの一撃でこのざまか?

 S級がとんでもない強さなのは話に聞いて分かっていたが、ここまで差があるものなのか……。


 微睡(まどろ)む意識の中でそんな考えが頭を(めぐ)る。

 そんな中、再び背中に激痛……いや、全身に……これは、服を引っ張られているのか?

 ぼやける視界の中に光が差し、目の前にエンジュさんの顔がくっきりと見えた。


 近い。息遣(いきづか)いが感じられるほどの距離だ。


「大丈夫か? やりすぎちまったか? あぁ、やっぱり根性が足りねぇな」


「あ……あぁ」


 根性だって? 根性があれば何とか出来たって言うのか?

 ふざけるな。これはそんなもので()まる差じゃないだろ。


 俺とエンジュさんでは、次元(じげん)が違う。

 正直(しょうじき)、S級だ何だと言ってもフィア達の延長線上だという認識だった。


 これまで戦ったジェルドーやバルザックだって十分に強かった。

 総合的に見れば、俺が勝てる見込(みこ)みなんてほとんどない相手だった。


 それでも俺は一撃だけなら、ただ一撃だけならあいつ等に(せま)る事が出来た。

 だから、皆で戦えば勝つ事が出来た。


 でも、エンジュさんはそんなレベルじゃない。

 俺なんかでは想像のつかない高みにいる。

 その壁が根性(こんじょう)なんかで取り(はら)えるものか。


「……たく、お前今(あきら)めていやがるな?」


「そりゃ、そうでしょうよ……。これだけの差を見せつけられたん……ですから」


 大抵(たいてい)の事では(あきら)めない自信もあった。

 でもそれは、勝てる見込(みこ)みがあるとどこかで思っていたからだ。


 だけど、ここには俺の他には誰もいない。

 俺が勝つためには、俺の中に可能性を見つけないといけない。


 当たれば、当たりさえすれば勝てると思っていた。

 その全力の一撃を真正面から(たた)()られた今、俺に勝つ見込(みこ)みがどこにある?


 完全に、俺は思い上がっていたのだ。


「はぁ、だから根性が足りねぇんだって、お前の最後の一撃。あれが完璧な形で決まれば、多分俺でも()えられなかったぜ? あれを当てればお前が勝っただろうよ」


「はは、そんなこと……エンジュさんは真正面から(たた)()ったじゃ……ないですか」


「あぁ、そうだな? だがそれはお前の太刀筋(たちすじ)が俺の爆発で(みだ)れたからだ。まともに切られれば俺だって一溜(ひとた)まりもない。当たり前だろ? 俺だって()け物じゃねぇ、ただの人間なんだからな。……お前、どうして俺が根性(こんじょう)が足りねぇって言ってるか、分かってるか?」


「え? いや……」


 根性(こんじょう)……ただの口癖(くちぐせ)じゃないのか?


 思い出せ、エンジュさんが根性が足りないと言った時、俺は何をしていた?

 確か、目線があって……。


「そりゃあよ。お前の(ひとみ)()れたからだ。それはつまり、俺を見て萎縮(いしゅく)したってことだ。お前は本当に最後まで俺を切ろうとしてたか? 俺の爆発で太刀筋(たちすじ)(みだ)れた時、それでも切るって本気で思ってたか?」


「それは……」


 あの時、俺には爆発で太刀筋(たちすじ)(みだ)れた事が分かっていたはずだ。

 俺はその時点でどこか(あきら)めの気持ちがあったんじゃないのか?


 ただそのまま振り切ればいいだなんて、相手を切る努力を(おこた)っていたんじゃないか? 

 ……心のどこかで、負けてもしょうがないと思っていたんじゃないのか?


 ……あぁ、そうか。

 俺は、エンジュさんの前に自分に負けていたのか。


「そう、ですね。どうやら俺には、根性が足りなかったみたいです」


(みと)めたな? じゃあ、それに気付いたらどうするんだ?」


 俺に足りなかった根性。つまり、絶対に(あきら)めないって気概(きがい)を持つこと。

 体はもう動かない。だが、まだ能力は使える。


 やれることがまだあるのなら、最後まで足掻(あが)かないとな!


「こうします! これが、俺の根性(こんじょう)だ!」


「おっと!? あでっ!」


「———————っ!!」


 雷輪(カナムリング)で体全体を加速、全身を(おそ)過負荷(かふか)など知ったことか! これが今出来る! 俺の根性の証明だ!


 俺はそのままエンジュさんに向けて加速し、その頭に頭突(ずつ)きをした。

 頭が割れんばかりに痛い。いや、というか割れた。視界が真っ赤に()まる。


 そして、俺はそのまま地面に激突(げきとつ)した。

 後ろで響く高らかな笑い声をBGMに、俺の意識は消えた。


「ぷはっ! あだっ!? いっつぅ!」


 勢いのままに飛び起きてしまった俺はゴンっと盛大(せいだい)にカプセルに頭をぶつけてしまった。


 それに気付いたのか、フィアと唯が外から中を心配そうに(のぞ)()んでくる。

 何か言ってるな……大丈夫か、とでも言っているのだろうか?


「あ、はははは、大丈夫、大丈夫! 問題ないから!」


 なんとも言えない()ずかしさに(おそ)われながら、手をぶんぶんと振って見せると、後ろ(がみ)を引かれるようにこっちを気にしながらも彼女達は離れて行った。


 あー、気を使わせちゃったな。

 まぁこのカプセルは中からしか開けられないから、俺が開けない限りは何も出来ないしな。


 そんな感じに俺が顔を熱くしていると、カプセル間の通信で声が聞こえてきた。

 さっきまで実戦訓練をしていたエンジュさんだ。


「よぉ! 大丈夫か? 雷人!」


「まぁ、はい。ん? あれ、名前……」


「あぁ、マリエルから聞いてたからな。最初から知ってたんだよ。ちょっと見どころのある奴がいるってな」


「ははは、ボロボロでしたけどね」


「いや、最後のは良い感じに根性(こんじょう)を感じたぜ。だから俺の試験は合格!」


 おお! てっきりダメだと思ってたが、OKなのか。

 この感じ、入社試験の時を思い出すなぁ。

 などと考えていると、非常に言いにくそうに言葉が続いた。


「……て言ってやりたいのは山々(やまやま)なんだがな? お前は思いっ切りダウンしてたし、俺は本気を出してない。それに最後の頭突(ずつ)きは悪くなかったが、結局俺は倒れなかったんだよなぁ……。ほら、俺って根性(こんじょう)あるからさ。というわけで不合格だ! 悪いな!」


「……」


 お、おう。結局不合格なのか。

 でもまぁ、そうだよな。


 条件一切クリアしてないのは事実だからな。

 (あま)んじて受け入れよう。


 この実戦訓練で精神的には(きた)えられたし、根性も大切だと感じた。

 エンジュさんほど大事(だいじ)にしようとは思わないけどな。


 さて、とりあえず俺の言うことは一つだな。


「ありがとうございました」


「おう! 根性を忘れるなよ!」


 そして俺はボタンを押してカプセルを開いたのだった。

「面白い」「続きが気になる」と感じたら、

 下の ☆☆☆☆☆ から評価を頂きたいです!


 作者のモチベーションが上がるので、応援、ブクマ、感想などもお待ちしています!


 エンジュ・パールバティ、彼と戦う者は覚悟しなければならない。


 生半可な攻撃は効かず、避けることなく高速で迫る彼を足止めする事は困難である。

 そして、爆発など、瞬間的な高火力を有しているのも特徴である。


 *****


 はい、キャラクター的には完全にネタ枠のような根性キャラではありますが、S級という看板に偽りなし、彼は非常に強いです!


 コンセプトは根性による高耐久と、瞬間的な高火力。

 だというのに、爆発による高速移動も出来るなんて、まさに欲張りセットって感じですね。


 因みに、気付いた方はいるでしょうか?

 実はこの話のタイトルは某有名ゲームの章タイトルを真似ているんですが、思いの外しっくり来てびっくりしました。


 まさか、たったの九文字でエンジュを完璧に表現出来るとは…。

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