5-16 強制夜更かし大鑑賞会
「来週のクレデビはー?」
「大変大変、大変だよ! カフェで楽しくお茶会をしてたら、街の人達がいきなり変なダンスを踊りだしちゃった! 政府の重要人物まで踊りだしちゃって、おかげで国中が大混乱! これは怪人がやっているに違いないよね! 絶対に許してあげないよ!」
「うふふふふ、殴る感触が……また味わえるね」
「そうだね! 怪人達の苦しむ姿が、ふふふ、目に浮かんじゃうよぉ……」
「クレイジーバットにデビルアイ! 何うっとりとした顔で危ないことを言っていやがるんだ! 今日という今日はお前達を捕まえてやるからな!」
「わっ、いけない! いつも怪人を助けようとする自分の職務を忘れた男が凝りもせずにやって来ちゃったよ! あんなのでも攻撃したら罪だって言うんだからおかしな話だよね!」
「そうだね……。いっその事あれも殴っちゃった方が世のためなんじゃないかな?」
「おっと、それはまだ早いよ? クレイジーバット! それは最後の手段に取っておこう!」
「ひぃ、いや、お、俺は逃げないからな!」
「それでは次回! 踊る事件簿、パーリィナイッ! 来週も愉しく、悪を成敗!」
「それじゃあ、あなたも一緒に……ね? せーの」
「クレデビ!」
このイカれた次回予告は……というか思いっ切り作品名を言っていたので間違いないのだが、魔法少女クレイジーバット&デビルアイか。
久しぶりに聞いたが相変わらずぶっ飛んでいるな。
まさか、目を覚ますなりこれを聞く羽目になるとは……。
そんなことを考えながら目を開けると、案の定と言うかフィアとシルフェとフォレオの三人がテレビの前のソファに座ってクレデビを見ている所だった。
……いや、よく見たら空もシルフェに捕まえられてるな。
強制視聴か、南無。
さて、俺は気付かれていないうちに逃げるか。
嫌いなわけではないが、捕まったらクレデビ視聴でせっかくもらった休みが消えかねない。ゆっくりゆっくり、そういえば今何時だろ……あ。
「あら、起きたのね。全然起きないんだもの。心配しちゃったわ」
「……いやぁ、疲れてたみたいで……今何時?」
「今は夜の六時ですよ。そうだ、雷人もクレデビを一緒に見ましょう。今ちょうど半分で、あと十二話あるんです」
午後の六時か……という事は丸一日寝ちゃってたのか。
まぁ疲れてたしな、仕方ない。
それにしても十二話も連続で見るって?
とんでもない、断らせて頂こう。
「いや、俺はそれ見たことあるんだよ。だから今回は遠慮して……」
「これ面白いよねー! 私の友達もこれ見てたんだよ! 懐かしいなぁ」
え、天使族でも流行ってたのか?
この作品どれだけ宇宙進出してるんだよ。て、あっ!
「当然、雷人も見るよね?」
「雷人! ここから特に面白くなっていくのよ! 細かい部分にも凝ってて、何度見ても面白いのがクレデビのいい所よね!」
さらっと逃げようとしたのに油断した隙に腕を掴まれてしまった。
空とフィアに両腕を掴まれた俺はどうにか逃げられないかと頭を廻らせるが、何も思いつかない。
そんな様子を眺めていたフォレオと目が合うと……。
「ふふふ、諦めるのです。逃げられはしませんよ」
あ、目が諦めている。
どうやらフォレオは全話一気見するほど熱狂的なファンではなかったようだ。
くそ、自分が逃げられないからって俺も巻き込もうとは、こんな一体感は求めていないぞ。
「ほらほら、座って座って」
「ちょ、おい、待てって、あ……」
気付いたらソファに座らされ、右腕にフィアが抱き着き、左腕をシルフェを背負った空に捕まれ、膝の上にはちょこんとフォレオに乗られてしまった。
これはもう……動けない……か。
詰んだ。
「分かった。分かったから、もう少し離れてくれ、暑いって……」
「ふふふ、目から光が消えましたね。これで雷人も道連れです」
「それじゃあ続きを見るわよー!」
「おー!」
そして結局、日付が変わるまでクレデビを見させられた俺は、皆と一緒にそのまま寝落ちしたのであった。
最近、意識を失いまくっている主人公がいるそうですね?
現実にあったらブラック企業待ったなし。ヤバいですね!
肉体的疲労と精神的疲労は別の物。
ちゃんと休んでるはずなのに疲れが取れない。
どういうわけかやる気が出ない。
あ~、これはいけません。
体を労わるのはもちろんですが、ストレス発散も忘れてはいけませんね。
趣味に没頭、趣味に没頭するのです!
でも、無理矢理は駄目ですよ?(疲れ切っている雷人を見ながら)
さて、次回からは遂にS級社員とのバトルが始まっていきます。
いわゆる一種のボスラッシュ!
久々のバトル展開、お楽しみ下さいませ!




