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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第五章~クレイドルガーディアンズ~
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5-15 最後の基礎訓練

「昨日はひどい目にあったよ」


「あはは、大変だったんですね。フォレオさんはしっかりしてそうですから、なんだか意外です」


 訓練最終日、俺は唯と一緒にマリエルさんの元を訪れていた。

 俺の話を唯と(とも)に聞いていたマリエルさんは(なや)ましげな顔で苦笑いをしていた。


「あはははは、そういえばフォレオにはあんまり料理をさせたことはなかったかな。大丈夫、あの子も練習すればきっと出来るようになるかな!」


「そうですね。とりあえず、しばらくは俺かフィアで教えていこうと思いますよ。このままだと、不味(まず)いを超えて毒を作りそうですからね」


「そうしてもらえると嬉しいかな。さ、それじゃあ気を取り直して訓練に移るかな!」


 マリエルさんは両手でパンと柏手(かしわで)を打ち、笑顔で説明を始めた。


「今回は基礎を作ることが目的かな。それで、予定通りならノインが周囲索敵(さくてき)の強化と長距離の走り込みによる体力作り、ルイルイが瞬発力(しゅんぱつりょく)と相手の動きを読む追い込みの訓練、エンジュが体全体の筋力強化をしてきたはずかな」


「えーと、そうですね。はい、確かにそんな感じでした」


「はは、訓練方法はなかなかに頭がおかしかったですけどね……」


「うーん、確かにちょっぴり危険かもしれないけど、これが一番手っ取り早いかなぁ」


 俺の言葉にマリエルさんは腕を組んで(うな)るが、特に方針を変えるつもりはなさそうだ。


「それで、今日は何を?」


「私の担当は短距離持久力(じきゅうりょく)の強化かな。ノインがやってくれた一定以上の速さで走り続けるっていう長距離的な体力も必要だけど、戦闘ならこっちの方が重要かな」


「……それってもしかして」


「……あはははは、私にも分かりますよ。何だか(いや)な予感がします」


「お、二人とも分かっているみたいかな? それじゃあ、行ってみようか? 倒れるまで全力ダッシュ無限回(むげんかい)♪」


「む、無限……?」


「お、お~」


 薄々(うすうす)分かってはいたが、はっきりと()げられたその事実に俺と唯は光の消えた目で(おう)じるのであった。


 *****


「やっと、お、おわ、た」


「は、はひぃ。疲れ、ましたぁ」


 午後六時、ようやく訓練から解放された俺と唯はろくに動けないままに地面に倒れ込んでいた。


 訓練室は空調(くうちょう)()いているがそれでも(たき)のように汗が流れ出ている。いやぁ、やっぱり想像通りにひどい訓練だった。


 全力ダッシュがキツイのは言うまでもないが、倒れるまでやるというのは本当の話で動けなくなるまで休むことは一切出来なかった。


 そして、倒れればそのまま医務室へと放り込まれる例のループだ。

 しかも、訓練内容がダッシュという性質上(せいしつじょう)、これまでの他の訓練と比べてそのサイクルが非常に早い。


 何度も何度も医務室から出てくる時はミューカスさんの顔が見られなかった。

 いや、本当にこの短期間でお世話になり過ぎた。


 これまではほとんど無かったというのに、今ではもはや医務室通いの常連(じょうれん)さんだ。

 まぁ、それも今日で終わりなのだからしょうがないという事にしよう。

 それはそれとして……。


「め、めちゃくちゃ眠いんだが……」


「そ、そうですね。気を張っていないと、気を失いそうです……」


「あはは、しょうがないかな。ミューカスの治療は自然治癒を速めてるだけだから、体は回復しても精神的な疲労はどんどん()まっていくかな。予定はズレちゃうけど、明日は休みにしようか。ゆっくり休むのも必要なことかな」


 マリエルさんの言葉に安心したのか、段々意識が薄れてきた。

 やっぱり体は治っても寝てる時間はさほど長くないから、精神的には特に回復してないのか。とりあえず、今は何も考えずに()たい。


「お言葉に、甘え、ます……」


「すみません、私も……」


「はいはーい! それじゃあ後は任せて、ゆっくりお休みかなぁ!」


「なんだか最近、こういうの多いなぁ」


 マリエルさんの明るい声がだんだんと聞こえなくなっていき、意識は落ちた。

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