5-14 見た目はご馳走、中身は……
オーブンから取りだしたそれを見て、フォレオとシルフェは首を傾げていた。
「……何か料理本に載っていた写真と見た目がかなり違いませんか?」
「うーん……分かった! 多分本に載ってたのは見た目が上手く出来たものを載せてるからじゃないかな? きっと初めての私達じゃそこまでは難しいんだよ」
「それもそうですね。じゃあ、見た目は何とか整えてみましょう。むむむむむ……!」
料理に含まれる水分を動かすイメージで料理の見た目を整えようとすると、見た目がみるみる写真に近付きおいしそうな見た目に変化した。
おぉ、初めてやりましたが、やれば出来るものですね。
さすがはうちです。
「よし、これで大丈夫そうですね」
「わぁ! おいしそうだね! カレーの良い匂いもするし、ちょっと食べてもいいかな?」
「おっと、つまみ食いは駄目ですよ。まずは皆に食べてもらうんです。うち等の初料理なんですから」
「うーん、それもそうだね。それじゃあ、早く運んじゃおうよ!」
「そうですね。あ、ちょうどフィアもお風呂から出て来たみたいです。シルフェは空を呼んで来て下さい。配膳はうちがやっておきますので」
「うん、そーする! そーらー! ご飯だよー!」
そう叫びながら走っていくシルフェを見送りつつ、ご飯を食卓へ運んでいく。
うちにもちゃんと料理が作れました。雷人やフィアの称賛の声が楽しみですね。
フォレオはそんなことを考えながらニコニコ笑顔で料理を食卓へと運ぶのであった。
*****
「雷人。雷人。起きなさいよ。ご飯の時間よ」
「ん? ……はっ! ご飯の当番俺だった! 待ってろ、今急いで作るから!」
「ふふふ、その必要はありません。うちとシルフェで作りましたから」
「私も作ったんだよ!」
そう言われて見てみると、食卓には何やらおいしそうな見た目のドリアが並んでいた。
立ち上る湯気とカレーの臭いが食欲をそそる。
そういえば、二人が作るという話を聞いたような気がするな。
「そういえばそうだったか。悪かったな。任せちゃって」
「いえいえ、大丈夫ですよ。うちも料理くらいは出来るので」
「うんうん、私も出来るので」
そう言って、胸を張るシルフェとフォレオ。
確かに、旨そうなカレードリアだ。
料理が下手な可能性を危惧していたが、完全に取り越し苦労だったみたいだな。
「それじゃあ、冷める前に食べちゃおうよ。お腹も減って来たしさ」
「そうね。熱いうちが一番おいしいし、早く食べましょ」
「そうだな。それじゃ」
そう言って椅子に座ると全員で手を合わせた。
「頂きます!」
「空は私が食べさせてあげるね!」
「あー、うん。そうだね。熱そうだから少し冷ましてくれると嬉しいかな」
「うん。ふー、ふー、はい、あーん!」
「あーん」
もはやシルフェの行動に慣れ切っている空を横目にドリアを自分の口へと運ぶ。
カレーの香りが鼻孔をくすぐり、その濃厚な味が舌一杯に……、舌一杯に……。
「おぇ……」
妙に甘く、とろみがあり、なぜか酸味もあり、泥臭さとカレーのハーモニーが奏でられ、さらには何やらぬちゃっとした感覚と青臭さが一緒になって襲い掛かって来た。
そして、自身の名前を呼ぶ声をBGMに、意識は再び闇の中へと消えていった。
危うく三途の川を渡りかけた俺達はミューカスさんの元で目覚めた。
はぁ、またもや呆れられてしまった……。
それ以降、俺達はフォレオとシルフェには俺かフィア抜きで料理を作ることを禁じたのであった。
※使用食材イメージ
・小麦粉→片栗粉 ・チーズとバター→レアチーズとマーガリン
・ニンジン→牛蒡 ・牛乳→飲むヨーグルト ・塩→砂糖
・玉ねぎ→長ネギ ・鶏むね肉→生ハム
※注 作者は普段料理しない人間なので、どんな物が出来上がるかは分かりません。
料理の過程は勝手なイメージです。なので、絶対に真似はしないで下さい(笑)。
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フォレオは努力することで大抵のことは出来るようになるのでなかなか分かりませんが、油断するとポンコツ感が表に出てしまいます。
常に冷静でいるといいながら結構調子に乗り易いですし、普段は抑えられているものの感情もまぁまぁ豊かだったりします。
きっちりかっちりし過ぎるよりも、ちょっと抜けてるくらいが可愛いですね。
これがフォレオクオリティ。




