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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第五章~クレイドルガーディアンズ~
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5-4 荒ぶる狐と根性男

 あの後、俺は事情を聞いたフィアからこってりと(しぼ)られた。


 幸いなのは空とシルフェにまでは波及(はきゅう)しなかったことか。

 あの二人はわりとお寝坊(ねぼう)さんだからな。


 さて(くだん)のフォレオだが、どうやら昨日から俺達の家に引っ越してきていたらしい。部屋はフィアの隣、俺とは反対側の部屋だ。


 なんにしても、次やったらもう許されないだろう。

 今後は要注意だな。


 そんな事件も無事終わって現在、唯も含めた俺達はホーリークレイドルへと来ていた。

 すると前を歩くフィアがこちらを振り返りながら不思議そうな顔をする。


「そういえばあんた達、学校には行かなくて良かったの?」


「あぁ、椚祭(くぬぎさい)のライブ対決で見事一位になったからな。会長の権限で卒業資格は得たことに出来るんだ。登校が必須(ひっす)じゃなくなった以上、今は力をつけることが何よりも大事だろ」


「そうですね。S級の皆さんが(いそが)しい中、わざわざ時間を作って訓練をしてくれるというのにこちらが手を抜くわけにはいきません!」


段々(だんだん)と敵も強くなってきててあんまり余裕もないもんね。ここらで一気にパワーアップしておかないと!」


 これからの訓練を想像してやる気を口にする俺達にフォレオ達がうんうんと(うなず)く。


「そう? それならいいんだけど……。まぁやるからには全力でやった方がいいものね」


「今回は基礎的な能力の向上を目的とした訓練と、実戦的な戦闘訓練を(しゅ)として行うみたいです。S級社員と戦える機会なんてあまりありませんから、この機会を(のが)さないのは良い判断ですよ」


「S級かぁ。どれくらい強いのかなぁ? ちょっと楽しみだねぇ」


 ワクワクといった様子で歩いていると、フィアが訓練室の中に入って行ったのでその後に続く。


 すると、見慣れた金色の美しい髪を持つ女性と気の小さそうな銀髪ケモミミ少女、そして、九本もあるしっぽが特徴的な小さな女の子がいた。


「お、皆来たみたいかな。やほー」


「あ、お疲れ様……です」


「時間には間に合ったみたいですね。皆ちゃんとしてるみたいで感心(かんしん)なのですよ。それに比べてあの男ときたら……」


 その言葉に周りを確認してみるが、確かに聞いていた人数と比べると一人足りないな。


 確か事前に聞いた話だと……エンジュさんだったか?

 急用でも出来たのだろうか?


「あ、でもまだ時間までは一分くらいありますし、少し遅れてるだけかもしれませんよ?」


 唯が助け舟を出した次の瞬間、扉の向こう、廊下(ろうか)の方からどたどたと走る音が聞こえてくる。


 するとそれに反応したのか突然ノインさんが大声を上げた。


「んぁー! あの男は! 皆、左右に()けるのですよ!」


「え? おわっ!」


「は、はい!」


 元から少しずれた位置にいた空やシルフェは問題なく、咄嗟(とっさ)のことで動けなかった俺はフィアに引っ張られた。しっかり者の唯はちゃんと横に退()いた様だ。


 そして、次の瞬間。


「セーーーーーーーーーーフ!!」


 ドカーンと漫画みたいに扉が爆発(ばくはつ)して吹き飛び、回転しながら飛んでいく。

 その先にいたノインさんは(なん)なくそれを(かわ)し、突然空中に現れた剣や槍、(たて)が扉を空中で受け止めた。


 そして、ドアと一緒に飛び込んで来た黒髪の男は羽織(はお)った上着を爆風でバタバタとなびかせながら仁王立ちで俺達の前に降り立った。


「うなぁーーー! 何がセーフですか! アウトに決まってるのですよ!!」


 呆然(ぼうぜん)とする俺達の前で、ノインさんは飛び込んで来た男目掛けて飛び掛かるとその顔面に渾身(こんしん)()りを何発も叩き込んだ。


「お前は! 普通に! 入れって! いつも! 言っているのですよ!」


「すまん! だが、そうしないと間に合わなかったからな!」


「ドアを(こわ)すよりも! 数秒遅れる方が! マシなの! ですよ!」


 尚もゲシゲシとノインさんがその男の足に()りを加えているが、その男は何食わぬ顔で仁王立(におうだ)ちをしている。


 絵面的(えづらてき)には可愛(かわ)らしく見えるが、さっきからドゴッ! ドゴッ! と音がしているあたりあの()りの威力(いりょく)は多分そんなに可愛いものではないはずだ。


 この男、一体何者? って、聞かずとも分かるんだが嫌な予感しかしないな。

 そんなことを考えていると(くだん)の男がこっちに気付いて向き直った。


 (かがや)かんばかりの笑顔だ。凄い。


「お! お前達が話に聞く新人達だな? 俺の名前はエンジュ・パールバティ! S級社員の一員だ! よろしくな!」


「は、はい。成神雷人(なるかみらいと)です。よろしくお願いします」


「お? 声が小さいぞ! 根性が足りないんじゃないか!?」


「へ? 根性ですか?」


「そうだ! 大抵のことは根性で何とかなる。さぁ、根性を見せてみろ!」


「さっきから大声出してうるさいのですよ! この根性(こんじょう)馬鹿! 少しは静かにするのですよ!」


「うぐぇ! なに、根性(こんじょう)があれば……このくらい、平気だ……」


 突然空中に現れた複数の鈍器(どんき)がエンジュさんの腹に突き刺さった。

 しかし、エンジュさんはそれでも仁王立(におうだ)ちのままで()えている。


 うん、まぁ、根性ってことはただ我慢(がまん)してるだけだもんな。

 ……若干体が震えているのは見なかったことにしよう。


「何というか。随分(ずいぶん)と個性的な方ですね」


「僕、ノインさんがあんなに(あら)ぶってるところなんて想像出来なかったんだけど……」


「あー、あの二人は水と油って言うか、相性が悪いって言うか。エンジュ兄さんが言われても全然直さないからどんどんエスカレートしちゃってるのよね。大丈夫、大丈夫。あんなでもなんだかんだで仲は良いから」


 うーん、あれは個性的とか仲がいいで済ましていいものなのか?

 わりと本気でそう思うが気にしたら負けだな、うん。


 目の前で繰り広げられる状況に(あきら)めを覚え、そのままに受け入れることにした雷人なのであった。

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