5-2 打ち上げは嵐の中で2
「えっと……何でここに?」
「ちょっ、シルフェ! 食べかけは、はむぅ!? ん、んぐっ、うぅ……ごくん。あ、頭がぁ!」
シルフェにアイスを無理矢理口の中に突っ込まれて頭を抱える空。
あー、キーンてなってるなこれ。ご愁傷様、じゃなくて!
「な、何で皆がここに、打ち上げやるなんて伝えてなかったはずだけど」
そう言うとフィアとフォレオがジトーっとした目でこっちを見てきた。
シルフェはたくさん食べれてご満悦のようだ。
「帰りが遅いからシンシアに場所を調べてもらったのよ。もう、何かあったのかと思ったじゃないの!」
「連絡しない方が悪いんですよ。いざ来てみたら何やら馬鹿騒ぎしていますし、何をしているのか聞いてみたら昨日やっていた喫茶店の打ち上げで奢りだって言うじゃないですか。それだったら手伝いをしたうち達にも食べる権利があって当然です」
二人の言葉に俺は自身の腕に着けられた端末を見る。
なるほど、これはGPSの役割も果たしてしまうのか。
これは隠し事が出来なさそうだな。
それはそれとして……。
「あー、うん。確かにそうだな。じゃあ、まぁあれだ。対価は払おうな?」
「あはは、爆弾投下ですね。私は向こうに行っててもいいですか?」
「唯ちゃん。もう遅いみたいだぜ。あ、俺はドロンするんで、ごゆっくりどぞー」
「はい、空。あーん」
「あはは、もうどうにでもなれ。あむっ」
「……え? 何の話よ」
「あれ? 何だか人だかりが出来ていませんか……?」
この後、クラスメイト達に囲まれたフィア達は質問攻めにあい、俺達も再燃したそれに巻き込まれるはめになったのは言うまでもないだろう。
*****
「ひ、ひどい目にあったわ……」
「まさかこんなに注目されていたとは少しも思いませんでした……。もしや、本当にうち等もアイドルやれるのではないですか?」
「んー! おいしかったねー! また、あの焼肉っていうの食べに行こうね!」
唯や隼人達と別れてようやく家に帰ってくると、すっかりやつれた様子のフィアとフォレオがソファに倒れ込む。
一方でシルフェは生き生きとした様子で腕をぶんぶんと振っている、これは強い。
俺もそれなりには疲れたがフィア達ほどではなかったな。
まぁ、シルフェにべったりとくっ付かれていた空は周りからの注目も大きくて一番ぐったりしているがな。
「な? 俺達が呼ばなかった理由が分かっただろ?」
「そうね……。勝手に行ったのは悪かったわ。でも、遅くなる時は連絡しなさいよね。遅くなる方は大丈夫だと思ってても、待つ方は心配するものなのよ?」
「そうですね。連絡してくれればこんなことにはならなかったはずですよ」
少し不満げにこちらを見上げるフィアと恨めしげにこちらを見るフォレオ。
心配してくれるのは素直に嬉しいな。しかし……。
「いや、多分連絡してても来てただろ。まぁでも、悪かったよ。次からは連絡するようにする」
「分かってくれたならいいわ……。そうだ。あんた達に言っておくことがあったのよ」
「ん? 言っておくこと? 何だよ」
「今回かなり危なかったことをパパに報告したんだけど、仕事もかなり片付いてきたみたいでね。マリエル姉さんにノインとルー、それとエンジュ兄さんから本格的な訓練を受けられることになったわ。明日から特訓開始ね」
思い出したかのようにさらっと口にされたその言葉は、明日からの日々が忙しくなることを意味していたのだった。




