4-58 再戦の日を見据えて
「あー! お前らなぁ! 後夜祭をすっぽかすんじゃねぇよ! あの後、大変だったんだからな!?」
教室につくと同時、隼人が俺達に詰め寄ってくる。
後夜祭か。そういえばすっかり忘れていたな。
でも、それに出なかったことでどうして責められるんだ?
「えーっと、後夜祭でなんかあったのか?」
「あ、あれじゃない? パフォーマンス対決の結果発表」
空に言われて思い出した。そういえば学生が投票して発表は後夜祭だったのか。
それどころじゃなかったから気にもしてなかった。
「なるほど。それは悪かったな。だけどこっちもそれどころじゃなくてな」
「いや、俺はまだいいんだけどよ。お前ら、後で光葉に謝っとけよ?」
「天音さんに? 何で?」
「あぁ、結果から言うとBチームのお前らが一番の得票率だったんだが、SSCの連中含めて全員ドロンした所為で残ったメンバーが光葉だけだったからな。称賛の声から、お前らがいないことに対する不満から、色んなのを一人で受ける羽目になってたからな。光葉の奴があからさまにげっそりとしてるとこなんて俺は初めて見たぞ」
「そ、それは悪いことをしたな」
「そうだね。後で一度謝りに行こうか」
「おう、そうしろ? まぁでも、それはそれとして……」
「なんだよ?」
「これは甘んじて受けろな?」
そう言って隼人が指差した先には獲物を見つけたと言わんばかりにギラギラした視線を向けるクラスメイト達。
後から来た唯も含めて、その日の俺達はパフォーマンスを見て感動した、的な内容の話を自由時間の間中、延々と聞かされる羽目になるのだった。
*****
「見つけた。遂に見つけたぞ! これで儂は! 全宇宙を統べる者となるのだ!」
高価な美術品が並ぶ部屋の執務机。その上に広げられた何かの設計図を見ながらテンションが振り切った様子で叫ぶ老人。
そんな部屋に誰かが入ってきたのにその老人が気付いたのは完全に偶然だった。
「む、ジェルドーか。一体何の用だ?」
「特別用事ってこともなかったんだけどよぉ。面白そうな話してるじゃねぇか。ついに見つけたってぇ?」
「そうだ。これを手に入れた暁には、望み通り貴様を殺してやろうではないか」
「あぁ? 何寝ぼけたこと言ってるんだぁ。ボケたのかよ爺さん。俺の望みは爺さんに殺されることじゃねぇ。その宇宙を統べることが出来るとかいうクソロボットをぶっ壊して、俺が宇宙最強だって証明することだってんだよぉ」
「ふん。貴様が宇宙一? 笑わせてくれる。せいぜい今のうちに吠えておくがいいわ。二週間後、入念な準備をしてかの星に攻め込むぞ。貴様もせいぜい体調を整えておくことだな」
しっしと出ていくように促されたジェルドーは部屋を後にし、廊下を歩く。
「けっ、食えない爺さんだなぁ。さて、二週間後か。今度は俺が叩きのめしてやるからよぉ。待ってろよなぁ?」
再戦の日が決まったことで笑みを深めるジェルドー。
その目は、ギラギラと怪しく輝いていた。




