4-53 秘伝の一撃
「ウォータースケート!」
「逃がしはせん! 波動歩! そして、波動陣!」
「ふぅ、ウォーターヴェール!」
フォレオの動きに合わせて無理矢理に方向を転換したセルビスが迫り、体を捻って地面を殴りつける。
広がる衝撃波を水の膜で無理矢理打ち消したフォレオはセルビスの懐に入り込む。
「波動掌! 波動脚!」
「食らいませんよ」
直接セルビスの腕に拳銃で弾丸を打ち込むことで迫る腕を弾く。続く膝蹴りも弾いて躱す。
衝撃が爆発するように走り、肌の表面を強風が撫でるが、直撃しなければどうということもない。
瞬間に異次元空間からフォレオスペシャル三号、もといバズーカを取り出したフォレオはセルビスの腹にその口をぴったりとくっつけ、ゼロ距離で引き金を引く。
吹き荒れる爆風を水の膜が防ぎ、直撃したセルビスは吹っ飛んでいったが、感触的に致命傷にはなっていないだろう。
自分への被害を無くすために多少威力は落としたが、なんとも頑丈なことだ。
フォレオは異次元空間にフォレオスペシャル三号を放り込むと薙刀を取り出した。
それを素振りだとばかりにくるくると振り回し、平然と立ち上がったセルビスに向けて構える。
「ほう、ここにきての武器種変更か? わざわざこの場面で出したのだ。それが切り札と言ったところか?」
「えぇ、さすがにそろそろ終わらせようかと思いまして。あなたの芸のない単調な攻撃にも飽きてきましたしね。確かに当たれば強力なのでしょうが、その程度ではいつまで経ってもうちには当てられませんよ」
「そうか。では名残惜しいが、これで決着としよう。我が拳法、秘伝の一撃。受けるがよい」
「そうですか。では、うちはそれを返り討ちにするとしましょうか。ハイドロウィップ」
そう言ってフォレオは薙刀を構える。
薙刀の両端からは水の鞭が伸び、背中からも複数の水の鞭が生える。さぁ、決着の時です。
「波動走!」
ゆったりと構えたセルビスが両手を後ろに突き出すと同時に爆発的に加速する。
これまでとは比べ物にならないほどの加速です! しかし、対応出来ないわけではないですよ!
そして、フォレオの操る複数の鞭と薙刀がセルビスに向けて放たれた。
「ハイドロビート!」
「波動鎧!」
数多の水の鞭がセルビスにぶつかるがその勢いは止まらない。
体に纏う波動の鎧が全ての鞭を弾いていた。
「食らうがいい。奥義……双竜波!」
フォレオの目の前まで突き進んで来たセルビスの両腕が、フォレオの逃げ道を塞ぐ。
一撃必殺であるが故の確実に当てるための挙動。
だが、フォレオはそれを見てもなお笑みを浮かべた。
「うちの切り札を甘く見ないことですね」
この戦闘中最速の速さで迫る両腕はもはや避けられるものではない。しかし、それならば避けなければいいのだ。
フォレオの持つ水を纏う薙刀がセルビスの突き出された両腕をまるでガイドの様に逸らす。それを見て、セルビスの目が見開かれた。
フォレオの切り札である薙刀術は決して敵を打ち倒すためものではない。
基本的に敵の攻撃を受け流すことや、敵の力を利用して攻撃を仕掛けるためのものだ。
それによって、これまで以上の破壊の力を持っていたセルビスの一撃は、フォレオに当たることなく後ろに逸らされた。
辛うじて残っていた離れた位置のビル群が倒壊し、その一撃の秘めた力を誇示する。
だが、フォレオには傷の一つもついてはいない。
自然とフォレオの笑みが深まる。
「さぁ、これで……」
「見事である……だが終わりだ!」
「な!?」
完全に後ろに逸らした一撃。
さらに、体勢が崩れるように誘導したというのに、そこから流れるように体を回転させて裏拳が放たれたのだった。




