表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第四章~スクールフェスティバル~
229/445

4-46 仮初めの覚悟は崩れ、付けを清算するは今4

 内側から何かが()み上げてくる感覚。

 この感覚は、フィアが死んだと思い込んだあの時の感覚と同じだ。


 体が熱い。だが、ダメだ。冷静さを欠くな。

 あのくらいなら、まだ空なら回復出来る。


 まだ、大丈夫。間に合うはずだ。

 そうだろ……?


「バルザック! こっちを見ろ! 雷弾加速砲(カナムブラスター)!」


 足場を作り、全力で()る。

 それだけでなく、雷弾を雷輪(カナムリング)で加速させて飛ばし、バルザックの注意を引こうとする。


 視線の先では、空が腹を()かれたにも(かか)わらず、体を(ひね)ってバルザックを(なぐ)ろうとしていた。


 バカ、やめろ! 下がるんだ!

 まずは傷を回復するんだよ! 攻撃なんて後でいいだろ!


「僕、だってぇ!」


「その覚悟(かくご)、受け取ったでござるよ。二刀流、遮那王(しゃなおう)!」


 空の(こぶし)()(くぐ)り、雷弾加速砲(カナムブラスター)も身を低くして(かわ)したバルザックは、そのまま地面を()ると地面に平行な状態で竜巻(たつまき)(ごと)く回転した。


 刀が空気を切り()く音が響く。渾身(こんしん)の一撃を(かわ)された空は体勢(たいせい)が整い切っておらず、加えて巻き起こる暴風(ぼうふう)によろめいた。


 そんな状態でバルザックの一撃を(かわ)し切ることが出来るわけがなかった。

 高速で回転する(やいば)が空の体を何度も何度も切り裂いた。


「っぅああああああ!」


「空ぁ!」


 雷人の目にはまるでスローモーションのように、(ひざ)から(くず)れ落ちる空の姿が見えた。


 空が、切られた。

 昔から一緒だった一番の親友。その、空が……。


 冷静でいなければ、そんな考えを押しやって感情の波が広がっていく。

 今すべきことはただ一つ、脅威(きょうい)を排除することだけだ!


「ああああああああぁぁぁ!!」


「ぬ? (やぶ)れかぶれの突進(とっしん)でござるか? よもや、拙者(せっしゃ)拳法(けんぽう)攻略(こうりゃく)出来ていないのを忘れたわけではござらんな!?」


 身体強化がいつも以上に働いているのか、バルザックの動きがさっきまでよりもゆっくりに見える。


 拳法(けんぽう)の攻略が出来てない? そんなの関係ないんだよ。

 必要なんだ。今超えるしかないだろ。


 全神経が()()まされるような感覚。今なら体が思いのままに動く気がした。

 一刻も早く目の前の脅威(きょうい)排除(はいじょ)して空を助けるんだ。動きを、最適化しろ!


「邪魔だ!」


「な!? (かわ)したでござるか!?」


 (やいば)が当たるすれすれ、ギリギリのところで躱しバルザックの(ふところ)に潜り込む。そして、地面を強く踏みしめた。


 バルザックの顔が驚愕(きょうがく)に染まる。(あせ)りが目に見えて分かる。

 右手を腰の位置に構える狼牙閃(ろうがせん)の構え。ここで、決める。


「ぬおおおおおおおおおお!」


 瞬間、刀を戻すのが間に合わないと(さと)ったのか(ほのお)を吐き出すバルザック。

 だが、今の俺には逃げるという選択肢はない。一刻も早く空を助けるべく、その一撃を止めることはない。


 雷輪(カナムリング)が体の各所に配置され、強力な引力(いんりょく)作用(さよう)する。


 狼牙閃(ろうがせん)雷輪(カナムリング)で強化した一撃。

 フォレオとの戦闘で失敗した瞬閃雷果(しゅんせんらいか)の実用版と言ってもいいその一撃を、俺は無意識のうちに()り出した。


「あああああああああああああぁぁ!」


 カナムを(まと)った属性刀はバルザックの放つ炎のブレスを()き分け、進む。

 ()かれた炎が体を()くが、そんなのは気にせずに属性刀を振り切る。

 一瞬、まさに一瞬だ。それで決着は着いた。


「ぬおぉ? この、感覚……は?」


 (つい)に炎を()き出すのをやめ、何が起きたのか分からないといった様子で後退(あとずさ)るバルザック。そして、袈裟切(けさぎ)り状に左肩から右腰に掛けての切り傷から血が(あふ)れる。


「まさか……我が(うろこ)を……切り()いたのでござるか……ごぼっ!」


 そして、バルザックはそのまま後ろにばたりと倒れた。

 それと同時に土のドームの一部が崩壊(ほうらく)し、月の光が差し込んだ。


 光がバルザックを、雷人を照らす。

 雷人はその様子を刀を振り切った姿勢(しせい)のままで見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ