表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第四章~スクールフェスティバル~
224/445

4-41 会心の一撃は硬きを砕く2

「完全回復ですか……ですが、恐らく最初の予想通りそれなりのリソースは掛かっているはずです。巨大な力にはそれ相応のエネルギーが必要なことはこの身で経験済みですから」


 さて、どうしましょうか。そう考えていた唯は立ち上がった人型の影が動いているのを見た。

 そう、この動きは……。


「空君! 攻撃が来ます!」


「え? まだ土煙は晴れてな……うわああああああ!?」


 叫んでいる空の腕を引いて後ろに放り投げると、土煙を()き分けてゴウッ! という大きな音を響かせながら巨大な物体が通り過ぎた。


 さらには狙い()ましたかのように土棘(つちとげ)が無数に襲い掛かってくる。

 聖剣を(まと)う腕でそれらを払い()けるが、外れた一発が聖剣が(まと)っていない(ほほ)(かす)めていく。


「っ!」


 じんわりとした熱さが(ほほ)を焼く。

 すぐさま最後の土棘(つちとげ)を破壊し、見上げるとなにやら土煙の中に途切れ途切れのオレンジ色になりつつある空模様が見えた。


 そこにはなにやら円環状に無数の大剣を展開する雷人と、それに相対するバルザックの姿があった。


 また、雷人君は強くなっているんですね。

 いや、問題はそれじゃなくて……。


 その時、視界を(さえぎ)るように影が差した。

 空虚(くうきょ)としか言いようのない、ただ穴が空いただけのその(ひとみ)でその巨体が二人を見下ろす。


 そして、巨大ゴーレムは身構える唯と空を無視するかのようにぐぐぐと身を(ひるがえ)し、土煙の隙間(すきま)から見えるオレンジの空を見上げた。


「どうして、そっちを……」


 その巨腕が持ち上がる。力を()める。

 その挙動が何をしようとしているかなんて一目瞭然(いちもくりょうぜん)だった。

 バルザックと相対する少年の顔が頭に浮かんだ。


「待ちなさい! 贋作聖剣の影縛り(フェイクス・バインド)!」


 次々と作られる贋作聖剣(フェイクス)が巨体の足元に降り注ぎ、その動きを止めんとする。 しかし、その巨体の()めたる力をとてもではないが抑え切ることが出来ない。


 そればかりか、贋作聖剣(フェイクス)が刺さったそばから土棘(つちとげ)に弾き飛ばされてしまい、完全に(いたち)ごっこだった。


 そして、止めることの出来ない巨腕が振り切られる。


 何とか(かわ)した雷人の姿に安心したのも(つか)の間、次の瞬間にはバルザックが近接し雷人を弾き飛ばしたのが見えた。


「あ……」


 ビルに叩きつけられる雷人。その詳細までは遠くて見えないが、腕を振り上げるゴーレムが何をしようとしているかは一目瞭然(いちもくりょうぜん)だった。


「待って、下さい。そんなことをしたら……」


 それを見た瞬間、最悪の未来がまるで実際に見たかのように想起(そうき)された。


 巨腕(きょわん)に押し(つぶ)される雷人君。

 あの拳は直撃しなくても危険なほどの代物ですよ。そんな物が叩きつけられればどうなるのかなんて、火を見るよりも明らかじゃないですか。


 ゴーレムの腕が振り下ろされるのを見た瞬間、何かが切れるような感覚がしました。

 後から考えれば、恐らくそれは理性の糸だったのでしょう。


 激情(げきじょう)に心を飲み込まれた私は、後のことなど考えずに聖剣を振るっていました。


「あああああああああああああぁ!! 聖なる(セイクリッド)! 光線フォトンレイ!」


 放たれた恐るべき光の奔流(ほんりゅう)は、およそ三十メートルはあろうかというその巨体の上半身を射線上にあった(ことごと)くと一緒(いっしょ)に吹き飛ばした。


 (かろ)うじて残された腕の先はあえなく地面に落下し、その足は力を失ったかのように(くず)れ去った。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ! あ、あはは。また、やってしまいました……」


「唯ちゃん!?」


 急激な生命力(アニマ)損耗(そんもう)(ゆえ)か、(ひざ)が笑い、足が力を失い、そのまま地面に(くず)れ落ちた。


 あぁ、地面に激突(げきとつ)する前に(かろ)うじて空君が(すべ)り込んで抱き留めてくれましたが、どうやらもう体は動きそうにありません。どうしようもない気怠(けだる)さが全身を(おそ)ってきます。


「あはは、最近は、出力の調整、出来てたんですけどね。(いきお)(あま)っちゃいました」


「唯ちゃん……いや、雷人を助けてくれてありがとう。後は僕達に任せて」


「はい、よろしく……頼みます」


 そこまで言ったところで緊張の糸が切れたのか、唯の意識はスーっと(とお)のいていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ