4-29 改めての自己紹介……ならず
「それで、どうしたんだ? 協力を持ち掛けられたのか?」
返答次第ではこれから一緒に行動する事になるかもしれない。
そうなれば心強い限りだが……そう考えて尋ねる。
すると、これまで黙っていた御嵩さんがおずおずといった様子で、指輪を手の上に載せて見せて来た。
「とりあえず、この指輪とかいう物の援助を受けられる事になりました。一先ず入社する意思はないって言ったんですけど、一応持っておいて欲しいって。どういう事なのか測りかねてるんですけど、念のためとしか言ってくれなくて。皆さんは何か知っていますか?」
その質問にフィア、フォレオ、シルフェの三人が顔を見合わせる。
難しそうな顔をしている辺り、この対応が普通ではないのは確かだろうな。
「……うちらは何も聞いてないです。まぁでも、確かにこの島が危険になる可能性は十分にありますから、貰えるのなら自衛のために持っておくのは悪くないと思いますよ」
「そうね。もちろん、そうならないように頑張るけど。私達は決して万能じゃないから」
フィアが申し訳なさそうにそう言うと天衣さんが頷き、そして頭を下げた。
「えぇ、自分達の国の事ですもの。それぐらいは心得ていますわ。……岩山を落とした件。あれが大事にならなかったのはあなた達の助力のおかげですわ。改めてお礼を言わせて頂きます。ありがとうございました」
「そんなのは……、いや……そうね。好意はありがたく受け取っておきましょうか。どう致しまして。ただこれだけは言っておくわ。今日は楽しかった。私もここが好きよ」
フィアが微笑みながら言うと、天衣さんは頭を上げて表情を崩した。
「そうですか。そう言ってもらえるのはとっても嬉しいですわ。私達、話し合ったんですけど、自分達の国の問題ですから出来る事はしたいですわ。もし何か手伝える事があったら教えて下さいね」
「そうそう。そして、力を合わせるからには仲良くね。そうするには……まずは呼び方から変えましょうか。そういうわけで自己紹介するわね。私は剱持祭。祭って呼んで。あ、もちろん、彼女達だけじゃなくて全員よ? こっちも名前で呼ぶ事にするから」
「それ、良いですわね。私は天衣花蓮ですわ。花蓮でお願いしますね」
「そ、そういうことなら私も! 御嵩花南です! 花南でお願いします」
「ん。五郭心。心で良いよ」
「おや、これは乗る流れですね。友人大量ゲットの大チャンスです。僕は嵐山風人。風人と呼んで下さい。機会があれば是非お手合わせをお願いします」
「友人……。えぇ、友人が増えるのは大歓迎よ。私はフィア・ライナック。フィアが名前よ」
「フォレオ・シレーナ・ライナックです。フォレオで良いですよ」
「私はねー。シルフェリア・ミカエル! 皆シルフェって呼ぶから、シルフェで良いよ!」
各々が自己紹介をし、並び順的には次は……俺だな。よし。
「俺は……」
「あぁ、雷人君達はいいですわ。こっちも全員知ってますし、フィアさん達もそうでしょう?」
「……」
出だしで速攻挫かれたこのやるせなさはどこにぶつければいいですか……?
恥ずかしさで居たたまれなくなっていると、特に気にした様子もなく風人が切り出した。
「それでは、僕達はそろそろ失礼するとします。椚祭はまだ後夜祭が残っています。是非楽しんで行って下さい」
そう言って、丁寧に礼をすると風人達は去って行った。
「……まさか、あいつらがホーリークレイドルと接触してるなんてな」
「まぁ、良い事じゃない。手伝ってくれるっていうんだから。雷人達からしても十分な力を持った子達だったんでしょ?」
「まぁ、能力で言えば十分過ぎるくらいだな。指輪も貰ったなら尚の事だろ」
「それに、友人になってくれましたからね。フィアにとってはこの上ないでしょう」
「あ、あんただって私と一緒で友達少ないじゃないの……」
「うちは今で満足しているので、全く問題ありません」
「ぐぬぬ、まぁいいわ。今はそんな事をしていたら時間がもったいないものね。さ、早く着替えて後夜祭とやらに向かいましょ」
そう言ってフィアが更衣室の方へ一歩踏み出したその時だった。
「さて、話は終わった。という事でいいのか?」
背後の曲がり角から声が響いたのだった。
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