4-28 健闘を称えて
「ありがとな。フィア達のエール、受け取ったよ。柄にもなく感動した」
「うん、そう言ってもらえると嬉しいわね。頑張った甲斐があるってものだわ」
「いつの間に練習してたんだ? しかも、フィア達だけじゃなくて唯まで」
「そうそう、私達は学校に行ってないからその間に出来たけどね。唯は本当に頑張ったのよ? 時間が無い中であそこまで仕上げたんだから」
フィアと俺の言葉に唯は手をぶんぶんと手を振って見せる。唯は謙虚だなぁ。
「そんな。私はワンダーフューチャーの方では能力方面の役割がほとんど無かったですから、だから余裕があっただけです。それに、せっかくですから皆さんのために何かしたくて」
「そう言われちゃうと能力的な役割が無かったのって僕もなんだけど、それなのに余裕が無かった僕って一体……」
「空は踊るの苦手だったもんね。仕方ない、仕方ない」
「まぁ? 何はともあれ、やっぱりうちの歌の力は大きかったでしょう? 皆が練習出来なかった分は十分に埋めたつもりですよ」
力なく笑う空とそれを宥めるシルフェ。
その隣ではフォレオが得意げに胸を張って自分の功績を褒めろとでも言わんばかりだ。
「自分で言わなきゃ掛け値なしに褒められたんだけどなぁ」
「えー、素直に褒めてくれても良いんじゃないですか? 普段は使いどころのない、隠れたうちの自慢の特技なんですよ?」
「はは、まぁそうだな。驚いたし、助かったよ。ありがとな」
「……すんなり褒められたら、それはそれで照れますね」
ライブパフォーマンスが終わり、これから投票を行うらしいが数が数だ。集計には時間が掛かるだろう。
なので、とりあえず着替えるために俺達は控え室に向かっていた。
そして、控え室の前に着くと生徒会メンバー以外のチームAの面々が待っていた。
「ん、来た」
「おや、今回の主役達の到着みたいですね」
「主役? 何の話だ?」
突然の言葉にこっちが疑問を口にすると風人が手を前に出して言った。
「謙遜しなくてもいいんですよ。あれだけのものを見せられたんです。観客達の心を掴んだのがどちらかなんて、火を見るより明らかですよ」
「まさか、能力をあそこまでふんだんに使ってくるとは思わなかったわね。私達もやれば良かったかしら?」
「こちらも会長と風人さんの力は使っていましたわ。それに、私達の能力ではあそこまでの派手さは出せませんわよ」
「ん、その通り」
「そういうわけで、投票結果を待たずとも僕達の負けという事です。ここまで完璧に負けてしまうと、悔しさよりも称賛の気持ちの方が先に立ちますね」
勝負をする前に発破を掛けられたのを思い出すと少し思うところもあるが、ここまで言われたら返す言葉なんて一つしかない。
何より、あのパフォーマンスが出来たのはAチームのおかげだ。
でなければ、俺達は今頃素晴らしいパフォーマンスを学生レベルの踊りで塗り潰した者達として晒されていただろう。
まぁ、フォレオの歌があるからそれでも何とかなった可能性はあるが。
「はは、皆のおかげで良い思い出が作れたよ。ありがとな」
「あなた達も凄かったわよ。もしこれが純粋な音楽として対決だったなら、きっと私達じゃあ勝てなかったもの。評価の方法が違えばそっちに軍配が上がったはずよ」
「……そういえば、あなた達って宇宙人なんですわよね?」
突然、ふと思い出したくらいの気軽さで天衣さんがとんでもないことを口にした。
どうしてそれを知っている? まさか……。
「……会長か?」
「いえ、違いますわ。あの人はなんだかんだでその辺のガードは堅いですもの。ただ、私が暴走した岩山の破壊の件、あれだけの事があれば多少は疑問も持ちます。それで、あの後少々調べていたのですが、うちの学校の教師が顔を出しまして」
「……あぁ、夕凪先生か」
最近話す機会が無かったから完全に忘れていた。
というか、今更だが邦桜内の事件に何で首を突っ込んでいるんだ?
俺がフォレオ達を巻き込んだからだろうか?
「それで、話を聞こうとしたら逆に色々と聞かれたんですの。なんだか、宇宙人が関わっている可能性があるから注意するようにとか。荒唐無稽な話だと最初は思いましたが、その可能性を否定する証拠もありませんでしたから。とりあえず信じてみる事にしたのですわ」
「そしたら、ホーリークレイドルって宇宙の会社を紹介してくれたわ。SSCとか言う宇宙の警備会社なんだっけ? あなた達の会社なんでしょ? 聞いた時は驚いたけど、実際に見ちゃえば信じる他ないものね」
その話を聞き、フィア達の方を見るが首を振る。
どうやら、フィア達は知らなかったようだ。
夕凪先生といい。ホーリークレイドルといい。
こちらから存在をバラすなんて何を考えているんだ? 機密だとか言っていたのはそっちだろうに。
それとも、前に天衣さんが言っていた少年とやらをそれほどまでに重要視しているのだろうか? だとすれば、俺も気にかけておいた方が良いかもな。




