一章プロローグ
子供のような小さい体、幼さの残る顔立ち、だというのにそれに合わない大人びた雰囲気を持つ女性。彼女は、それを見ていた。
ぼんやりとしている。明瞭でない夢。
いや、それは夢であって夢ではない。
「ごめ――さい。それでも――――――生きていて欲しいの」
「―――! ――て、俺は―――――」
一人の少女が、涙を流しながら歩いていく。
その少女に向かって叫ぶ男、だが、その顔も、姿も、不明瞭で不確かだ。
ただ、その少女の姿ははっきりとしていて、それは確かな存在だと感じられた。
少女が光る。
神々しいほどに眩しい光。
光が闇を照らしていく、世界から闇を遠ざけていく。
「――――――――。さようなら」
「――。――――――。―――!!」
闇が消えた後には男と少女のみが残った。
しかし、少女の体が光の粒に変わっていく。
少女の体が、世界に溶けていく。
男はただ、何かを叫んでいる。
しかし、その内容もそれが誰なのかも、女性には分からない。
そして、少女は最後に優しい、しかし、どこか悲しい笑顔で言った。
「愛してる」
男が伸ばした手は、腕は空を抱く。
ぼんやりとして不明瞭、しかし、その想いは伝わった。
そして、どれくらいの時が経過したのか、世界は滅んだ。
その女性は見ていた。
不明瞭で不確かで、時間さえも分からないが確かに見た。
何という悲しい夢、何という恐ろしい夢、何という――。
「未来でしょうか……」
女性は、涙を流し、ゆっくりと瞼を開いた。
今日の午前中に6話分更新します。
連載頑張るので、宜しくお願いします!