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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第四章~スクールフェスティバル~
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4-1 隼人の相談

「んーさすがに疲れたな」


 授業が終わり放課後、俺は机の上に突っ伏してそうぼやいていた。

 この前は冗談(じょうだん)じゃなくラグーンシティを救ったからな。


 あの一件で新聞やニュースはまたもや(さわ)いでいるみたいだし、世間(せけん)ではやはり超能力は危ないのでは? という声も上がっているらしい。これ以上面倒事にならないといいが。


 その他にも、事件解決後の一週間ほどはS級社員との特訓をしていた。

 マリエルさんからは剣術の指南(しなん)を受けたし、(おおかみ)の獣人である人見知りの少女、ルイルイさんとも戦闘訓練を行った。


 ルイルイさんはスピード重視の短剣使いで、俺と同じように空中に透明な足場を作り出しての立体的な動きが得意だった。


 どうやら足場は本人の能力ではないらしく、浮遊の指輪(スキルリング)の代わりに使っているようだ。


 足場自体の耐久力はあまり高くないようでルイルイさんが()る度に割れていたくらいだったが、動きの速さゆえに俺のように壁として使わなくても十分攻撃は(かわ)せるみたいだった。


 回避(かいひ)重視というだけのことはあり、ルイルイさんの動きの切れは素晴らしく、非常に参考になった。


 ……それと、戦闘中の彼女は普段に比べて強気……というか非常に楽しそうだった。テンション上がってる時みたいな。


 普段あんなにびくびくしていたのが噓のようだった。あれが闘争本能(とうそうほんのう)って奴なのか?


 二人には何回か相手をしてもらったものの、二人とも忙しいので一回の訓練の時間自体はあまり取れなかった。

 だから本格的な特訓は出来なかったが、単純に強い人との訓練はそれだけで良い経験になる。


 それをなるべくものにするために自主練とかをすると……まぁこうなるわけだ。


「おっ、どうしたよ? なんだかお疲れって感じだな」


「いやいや、隼人は分かって言ってるよね」


「そうだよな。隼人ってそういう奴だもんな」


「そうですね。隼人君はそういう所がありますよね」


「そういうのは思ってても言うなよなー。それにしても唯ちゃんはあんまり疲れてなさそうだな」


「そんな事はないですよ? 疲れて見えないように頑張っているんです」


 顔を少し上げて見てみると唯は背筋を伸ばして(おだ)やかな笑みを浮かべていた。

 何というかいつ見ても絵になるような(たたず)まいだ。


 今ではクラスにも慣れてきたのか、突然話しかけられたりしても慌てた様子も見せないし、まさしく完璧な美少女といった感じだ。


 最初に会った時は心の準備がないと人見知りしてしまうと言っていたし、確かにこの完璧さは努力の結果なのだろう。


 とはいえ、俺達はもう打ち解けた仲だ。ずっと肩肘(かたひじ)張っていたら疲れてしまうだろう。


「俺達は別に気にしないし、だらけてても良いんだぞ。実際、俺達はだらけてるし」


「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、やっぱり学校ではしたない姿は見せられませんから」


「その辺り、女の子は特に気を遣うところだもんな。ところで三人とも、ちょっと相談があってだな」


 隼人のその言葉に俺達の表情が固まる。

 頑張っている唯も自然な笑顔がぎこちない笑顔になっている。

 ……嫌な予感しかしないもんな。


「相談? なるべく面倒事は止めて欲しいんだけど」


「隼人の正体が分かった今としては、(あや)しい事この上ないな。どうせ会長(がら)みなんだろ?」


「お前ら露骨(ろこつ)に嫌がるな―。まぁ、そうなんだけどな」


「まぁまぁ、とりあえず話は聞きましょう。何か力になれるのならなりたいですし」


「唯は優しいなぁ。もっと嫌な顔してもいいんだぞ? 俺はがっつりするけどな。うぇー」


 俺は全力で嫌そうな顔をしてやった。

 なんだかんだで会長絡みの仕事は少し面倒臭(めんどうくさ)い。


 とはいえ、会長の振ってくる仕事は生徒のためになる事がほとんどだ。

 あの人は色々と(たくら)んでそうだが、一応悪人ではないからな。


 やらなかったらやらなかったで、俺の信条(しんじょう)に反するのでやるのだが、このくらいの冗談は許されてもいいだろう。


「雷人はもう少し取り(つくろ)えよ……。とはいえ今回は別に強制じゃないんだけどな。ただの提案だからさ。ほら、今度学祭があるだろ?」


「学祭……っていうと椚祭(くぬぎさい)のこと? もうそんな時期かぁ、最近色々あったから随分(すいぶん)と早く感じるね」


「そうそう、それでちょっとした出し物をな。それを手伝ってもらいたいんだよ。詳しくは会長からってことで、生徒会室まで来て欲しいんだが……どうだ?」


「学祭か……、イベント事を会長が気にするとは珍しいな。まぁ、話しくらいは聞いてもいいかな」


「学祭……! (うわさ)に聞いた事があります! 楽しみですね! あはぁ……」


 唯が手を合わせて目をキラキラと輝かせる。

 見ただけでウキウキ具合(ぐあい)が伝わってくる。


「唯ちゃんいきなりテンション高くなったね。どしたの?」


「はっ……! すみません、こういうのは今までちゃんと参加出来たことがなかったので、ちょっと(あこが)れだったんです。いいですよね! 学生が自分達で作り上げる青春の一ページ。一生の宝物にもなる行事(ぎょうじ)ですよ? ぜひとも成功させたいですね!」


「ははは、そうだな。じゃあその第一歩ってことで、付いて来てくれ」


 そう言って隼人が歩きだすので、重たい体を起こして立ち上がりその後に続く。

 唯は初めての学祭に意気揚々(いきようよう)としているようだが、実の所、椚祭(くぬぎさい)はそれほど盛り上がるイベントではない。


 なにしろここラグーンシティは能力者を集めた島だ。

 能力者以外は気軽に入れる場所じゃない。


 何かあった時に責任が取れないからな。

 人によっては自己責任で誓約書(せいやくしょ)を書いてまでやって来る親とかもいるみたいだが、能力者でない者の入島許可には厳しめの審査(しんさ)がある。


 中でも最も有名なのは特殊治安部隊(スキルナイト)の能力者に思考を(のぞ)かれるというもの……。


 危険を排除するためとはいえプライバシーもへったくれもないので正直如何(いかが)なものかと思うが、とにかくそのような審査を(くぐ)ってまでやってくる者はそれほど多くない。


 故に内々で行われるイベントなので、規模(きぼ)もそれなりなのだ。

 がっかりしないといいのだが……。


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