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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第三章~ナンバーズウォー~
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3-71 天災を砕く臥竜の一撃

 状況ははっきり言って絶望的だ。

 俺の渾身(こんしん)の一撃は失敗に終わり、消耗(しょうもう)も激しい。


 だがまだ道は残っている!

 だったら、やらないわけにはいかないだろ!


「空!」


「何!? 雷人!」


 即座に返事が来る。連絡を待っていたのだろう。

 普段はあれだが、なんだかんだで頼りになる相棒(あいぼう)だ。


「これから何とかして俺があれを(くだ)く! 皆にその破片(はへん)を処理するように伝えてくれ! あれだけの大きさになると破片(はへん)だけでも十分に危険だからな!」


「分かった。雷人……」


「ん?」


「無茶はしないでね」


「……大丈夫だ、任せろ!」


 通信が切れる。

 無茶な事を言っているのに、疑問の言葉一つない。

 この信頼には、応えないとな。


 そして即座に準備を開始した。


 能力はイメージが大切だ。

 イメージが出来ているかどうかでその威力(いりょく)が大きく変わってしまう事は実際に体感もした事実だ。


 それを邪魔しよう、というつもりではないのだろうが天衣さんが(さけ)ぶ。


「どうして諦めないんですの!? なぜそこまでしてこんな危険な力を持ちたいというんですの!? 分からない……分かりませんわ!」


「……俺は能力は人を助ける事が出来るものだと信じてる! それは人を傷つける事もあるだろうし! 心無い人が使えば犯罪にも使われる! だけど! そんなのは能力が無くたって一緒だ! だったら俺は! この力で救える人だけでも救いたい! ただ、それだけだ!」


 今出た言葉、それを実行するために必要なのは、集中だ。

 集中しろ! 極限(きょくげん)までイメージを強くしろ!


 そして、俺は小さく(つぶや)いた。


「展開」


 それと同時に指に着けられた指輪(スキルリング)(あわ)く光り、俺の周りに八本の(つつ)が現れた。(つつ)の中には弾が入っている。


 ついさっきまで忘れていたが、俺は最近レジーナからある指輪(スキルリング)(もら)っていた。特殊な金属を出現させ、好きな形に出来る力。


 そして、レジーナの言っていた武器、レールガン。


 授雷砲(じゅらいほう)はカナムを集めて放出し、その莫大(ばくだい)なエネルギーで対象を()かして(けず)り取るだけだが、これならば重量を(ともな)った威力(いりょく)のある攻撃が出来る。


 つまり、大きな衝撃(しょうげき)を加えることが出来るはずだ。

 さらに素材はレジーナ特製のカナムに合わせて調整された特殊金属。


 (すで)に試した事があるが、ただの鉄に比べて(はる)かに相性(あいしょう)が良かった。

 カナムの通りも良いし、力の影響も受け(やす)くて重量も重い。

 まさに、戦闘に使うには最適の金属だ。


 準備は出来た。

 後はこれを撃ち出すのみだ。


照準(しょうじゅん)!」


 授雷砲(じゅらいほう)を放った時と同様に無数の雷輪(カナムリング)が並び、八丁の銃それぞれの砲身を作り出す。


 数が増えた分だけ非常に制御(せいぎょ)も難しい。

 砲身を構成する輪の数を減らしてはいるが、真面目にギリギリだ。


 少しでも集中が切れたらカナムは霧散(むさん)してしまうだろう。

 だが、出来ないとかそんな事は言っていられない。

 極限までイメージを(かた)めるんだ。


 ギリギリまで力を()める。

 (となり)で天衣さんの(つば)を飲み込む音が聞こえた。息を大きく吸い込む。


「撃っち抜けええええええええぇ!!」


 声と同時に放たれた八つの弾丸は一瞬にして岩山に到達(とうたつ)、巨大な岩山を大きく振動させた。


 岩山を(おお)い隠す程の土煙(つちけむり)が上がり、落下する岩山はすぐにそれを()き分けて顔を出した。


 そして……


「そんな、こんなの……嘘ですわ。嘘ですわ!」


 みるみるうちに大きなひびが全体に広がって行く。

 そして(つい)に、岩山が幾百(いくひゃく)もの破片(はへん)(くだ)け散った。


 それを見て俺はガッツポーズをした。

 それと同時に集中が切れたためか糸が切れたかのように全身を脱力感(だつりょくかん)が襲う。


「よし、やった、やったぞ。はは、もう力がほとんど残ってないな。皆、後は任せたぞ……」


 思わず天衣さんの方を見ると、自分の思惑(おもわく)が打ち(やぶ)られたというのに彼女は(やわ)らかく笑った。彼女は上手く風に乗るとこちらへと近付いてきて、そして俺の手を(にぎ)った。



 ******


 まさか、まさか本当に()()げてしまうだなんて。


 (わたくし)はもはやラグーンシティの消滅(しょうめつ)は必然だと考えて疑わなかった。

 だけど、この少年はその未来を変えて見せた。


 自分で言ったことですもの、認めなくてはなりませんわね。

 花蓮は体を上手く傾けて落下方向をずらし、雷人に近付くとその手を握った。


成神(なるかみ)君。天晴(あっぱれ)ですわ。でも、ごめんなさい。私にはもう、力が残っていませんの。……こんな途方(とほう)もない事を成し遂げても、どんなに凄い能力者でも、それでもあなたは人間ですわ。この高さから落ちて助かる方法がありませんの。(わたくし)があなたに突きつけたのは、死への片道切符(かたみちきっぷ)だったのですわ。……まもなく二人とも死にますわね。あなたも巻き込んでしまった事、心より謝罪しますわ。……なんて、こんな事を言っても、何の贖罪(しょくざい)にもなりませんわね」


「……何言ってるんだよ」


「え? きゃっ!」


 次の瞬間、天衣花蓮(あまいかれん)は目を白黒とさせた。

 さっきまであった風が止んでいる? いや、落下が止まっている?


 見ると自分を抱いた少年が一人。

 その背からは青白色(せいはくしょく)の翼が生えていた。

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