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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第三章~ナンバーズウォー~
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3-53 話が違う

 地下フロア一階。

 その中でも比較的広いその部屋に一組の男女がいた。


 周りは金属で作られた壁に(おお)われており、何かの実験でも行っていたのか大きな風洞(ふうどう)の装置が奥に設置されていた。


 そんな場所で床に転がっている少女に少し離れて立っている男が話しかける。


「やあやあ、花南ちゃん。二日ぶりだね」


「突然引っ張られたと思ったら、やっぱりストーカーだったんですね! キモイです! 変態!」


「はは、相変わらずの毒舌(どくぜつ)だな。何にしても君達にこのまま行かせるわけにはいかないんだよな。そういうわけだから、花南ちゃんにはここで俺と遊んでいてもらうよ」


「あなたなんか! すぐにぶっ飛ばして皆を追いかけてやります……ってあなたがいるって事は」


「気付くのが遅かったな。何にしても他人の心配より、今は自分の心配をしなよ」


「ぎゃー! 貞操(ていそう)の、貞操(ていそう)の危機です! (おか)される!」


「いや! そんなことしねーよ! 俺の事なんだと思ってるんだ!」


「キモくて変態(へんたい)のストーカーです!」


「そうだったね!」


 何でここまで嫌われているんだ俺は、何もしてないしする気もないのにこの言われよう。


 ガラスのハートの持ち主の隼人さんは泣きたくなっちゃうぞ。

 あ、涙出てきた。


「もういい、泣かす」


(つい)に本性を現しやがりましたね! 正当防衛! ストーカーはぶっころです!」


 そう言ってどこに持っていたのか、凄く重たそうな鉄球を十個も取り出す花南。過剰防衛(かじょうぼうえい)って知ってる?


 ……本気でやらないと今日が命日(めいにち)になりそうだ。


「殺されてなんてやるもんかよ」


 そして、俺が指を鳴らすと同時に部屋の明かりが消えた。



*****


 風が心地いいです。


 雷人達が施設に潜り込んでいる中、二百メートル程離れた位置にある鉄塔(てっとう)中腹(ちゅうふく)(もう)けられた足場に寝転がっている一人の少女がいた。


 少女は自身の身の(たけ)程もの長さがあるライフルを構えてスコープを(のぞ)き込んでおり、その光景は非常に異質なものだったが、ここにはそれを指摘する者など誰もいない。


 少し強めの風に髪がなびき、首筋をくすぐる。

 ここに来てしばらく監視(かんし)(おこな)っていますが、確認出来たのは入っていった五人の少女のみ。


 恐らく彼女達が雷人の言っていた今回の目標だと思いますが、肝心(かんじん)の雷人達が中に入って行った様子は確認していません。


 少し前に突然身を(ひそ)めたと思ったらそれっきり……、ちゃんとやっているんですよね?


 今回の事態についての詳しい説明を受けてないですから、状況がさっぱり分かりません。それにしても……。


「もしかして……戦闘はあの建物の中でするんですか? 頼まれたのは雷人達がピンチになった場合の手助けでしたが、これじゃあうちは何も出来ないじゃないですか……」


 うちの主な攻撃方法は遠距離からの狙撃。

 目標からは存在を知られていないはずですから、奇襲(きしゅう)を仕掛けるのは容易だと思っていました。ですが、そもそも戦闘が屋内で行われるのならこちらからは様子の確認すら出来ません。


 端末を使えば連絡も出来ますが、中の様子が分からない以上は下手に連絡をすればそれが悪手(あくしゅ)となる可能性も否定出来ないですし……。


 一応、必要になれば向こうから連絡をしてくる手はずにはなっていますが、いくらうちが弾道を変えられるとはいえ、状況の分からない屋内を狙い撃つのは不可能なのです。


 もしかしてこれ、うち、いらないのでは?


「……せっかく手を貸してあげようと思ったのに、やる気にさせておいてこれはあんまりではないですか? ずっと見張ってるのはさすがに疲れますし、(ひま)だな……」


 そう(つぶや)いたフォレオはスコープから目を離して、そのまま仰向(あおむ)けにごろんと転がった。空は青く()んでいて綺麗だ。


 最近あんまり休めてなかったし、連絡が来るまでこうしていよう。

 そう考えたフォレオはゆっくりと目を閉じた。

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