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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第三章~ナンバーズウォー~
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3-50 驚異の潜伏能力

「ふむ、外には警備を配置していないみたいだね」


「邦桜はなぜか研究施設の存在を隠したがっていますからね。(おおやけ)にされてる施設は氷山の一角でしかない。この施設も他の所と同様にカモフラージュされてますから、警備が居たら怪しい事このうえないですよ。あ、でも監視カメラは結構あるみたいですよ?」


「今回の件は見つかるだけでアウトだから、気を付けないとね。困ったものだよ。戦闘になれば気付かれないなんていうのは土台無理な話だからね。雷人君もそう思うだろう?」


 そんな風に隼人と会長が話しているが、全体的に初耳だ。

 隠された研究施設とかがあるの?


「……いや、まぁそうですが、平然(へいぜん)と話してないで下さいよ。これ俺達が見つからないの難しくないですか?」


「あはは、そうだよね」


「人数が人数ですから、隠れるのにも限度があると思います」


「まぁ、例え見つかったとしても口封(くちふう)じをすれば大丈夫でしょう。それよりも、僕はこういったこそこそとしたことをするのは初めてなんですが……ふふふ、思ったよりも楽しいですね」


 空と唯が俺の意見に賛同する中、風人が後ろでワクワクし始めた。

 いや、大丈夫じゃないだろ……。それよりもって、バレればただじゃすまないのにどうしてそんなに気楽なんだ。


 今俺達がいるのはパッと見は廃病院にしか見えない施設、その周辺の草むらだ。

 そこにある背の低い生垣(いけがき)の影にしゃがんで隠れている。


 場所としてはラグーンシティの外周部付近に存在している。

 昔、事件が起きて周辺にあった施設が破壊されてそのままになっている区画だ。


 おおよそいつも俺達が戦っている侵入不可区画と同じようなものだな。

 普通に生活していれば、まず立ち寄らないような場所だ。


 会長からの情報によると、この廃病院の中には地下へと続く入り口が隠されていて、地下にはテレパシー関連の研究施設があるらしい。


 言われてみれば、見た目は(よご)れていてずっと使っていませんと言わんばかりだが、巨大なアンテナのようなものがある。


 病院にあるのは少し不自然だが、テレパシー関連の研究をしているなら不思議でもないか。


 ……しかし、さっきの隼人の言葉通りならカモフラージュのために廃病院に見せかけているみたいだが、わざわざ使われていない施設に見せかけなくてもいいのにな。


 まぁ、全部が全部そうではないんだろうが。

 そんな事を考えていると会長が余裕そうな表情でこっちを見た。


「大丈夫、大丈夫。潜入方法に関しては抜かり無いよ。出来る根回しは全部したし、方法だってある」


「根回し……ただの学生から聞く言葉とは思えないんですが」


「雷人君だって分かってるだろう。僕達は能力者というだけで普通じゃない。学生かどうかなんて大した問題じゃないよ。……それじゃあ、そろそろ動こうか」


 会長がそう口にした瞬間、足元の感触が突然柔らかくなり沈み始めた。

 突然の事態にバランスが崩れて地面に手を付くと何とも言えないドロッとした感触に無意識に体が(ふる)える。


「あ、はぅわっ!? な、何だ?」


「何これ!?」


「ひゃわ!?」


 見ると地面に真っ黒な(ぬま)でも出来たかのように体が沈んで行っている。


 これってもしかして……、そう思って会長と隼人の方を見ると二人も何食わぬ顔で沈んで行っており、隼人は俺の視線に気付くと笑った。


「はは、害は無いから抵抗(ていこう)すんなよ? さぁ、影の世界にご招待だ」


「そういうのはやる前に言え!」


 文句を言っている間に顔の付近まで沈んできた。


 こ、これ息は出来るんだろうな!?

 害は無いって本当だろうな!?

 信じてるからな!?


 そんな事を考えつつも目を(つむ)って息を止める。

 恐ろしく長く感じた数秒間、その不安を()くように隼人の声が聞こえた。


「おっし、お前ら(つむ)ってないで目を開けろ、ほらほら怖くないから大丈夫だって」


 そう言われて目を開けると辺り一面が真っ暗な世界の中に俺達は浮かんでいた。


 真っ暗とは言ってもお互いの事は見えている。

 何とも不思議な感覚だ。


 恐る恐る息を吸ってみると問題なく呼吸も出来る。


「ぶはっ、はぁはぁ、あー怖かった……」


「そうですか? 非常に面白い経験だと思いますが、他人の能力というのは非常に興味深い」


「風人さんは随分(ずいぶん)と心が強いんですね。私はちょっとパニックになってしまいました」


「あはは、それが普通だと思うよ。うん、本当にね」


 影の中、初体験の俺達がそれぞれの感想を漏らして周りを見回していると隼人が上を指差しながら話しかけてきた。


「はい! そわそわしてる諸君(しょくん)、注目! とりあえず落ち着いてもらいたいから簡単に説明をしておこう。ここは俺の能力で創り出した影の世界。息をする事も出来れば、見る事も、話す事も出来る。ここに入っても何も害は無いから安心してくれ。で、特徴的なのはー、上見てみ」


「上?」


 言われた通りに見上げると、さっきいた草むらが見えた。

 隠れるのに使っていた背の低い生垣(いけがき)が見えるから間違いないだろう。


「こんな風に影の外を見る事が出来る。聞き耳を立てれば外の音だって聞く事が出来るぞ」


「……確かに、耳を()ますと風が吹く音が聞こえますね。思った通りです。やっぱりこの力は諜報(ちょうほう)に打ってつけですよ」


 唯の感心するような言葉に隼人が自慢(じまん)げに(うなず)いた。


「そうだろ、そうだろ? ただ、これはあくまで影に(もぐ)っているだけなんだ。中を移動する事は出来るけど、(ひそ)んでいる影の範囲から外には出られないんだよ」


「それって、この空間は外に実際にある影の範囲の分しか広さが無いってことか?」


 俺がそう言うと隼人は指を()らして笑った。


「その通り、影を下に向かって真っすぐ降ろした空間内が範囲だ。だから前に雷人がしようとしたみたいに影を消されちまうと強制的(きょうせいてき)に外に追い出されちまう。光の具合で影の範囲は一瞬で変わるからな。領域(りょういき)ギリギリにいると、光の具合や対象の移動で強制的に移動させられるから注意が必要だな」


 なるほど。あの時の俺の推測はおおよそ当たっていたわけか。


 その時、ふと一つ疑問が浮かんだ。

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