3-46 何ですかそれ……
話が終わり倉庫を出てフォレオと共に待機所へと向かう。
なんだか柄にもないことを言ってしまった気がする。
今更の事ながら恥ずかしさが込み上げてくる。
少しでもフォレオの支えになればと言葉を紡いだ結果、もしかしたら変な事を言っていたかもしれない。
でも、思ってもない事を言ったつもりはない。
実際の所、この問題はフォレオ程に大きく捉えてはいなかったが、少なからず自分も思っていたことだ。
思ったことをそのまま言っただけだが、これで少しでもフォレオの心が軽くなったり、フィアとの仲が良好になったりするのなら幸いだ。
そしてなんだかんだ数分で待機所に着き、中に入るとシンシアさんだけがいた。
シンシアさんはすぐにこちらに気が付くとニコッと笑いながら手を振って来た。
「あ、おはようございます。雷人さん、フォレオ」
「おはようございます、シンシア」
「おはようございます」
「そういえば今朝、呼びかけがあったって聞きましたよ。応答出来なくてすみません」
「あぁいえ、こっちが朝早かったのが悪いので、それにちゃんと休まないとシンシアさんの方が心配ですから」
「いやぁ、一応は自動応答プログラムがあるんですけど、それをうっかり付け忘れていたみたいで……ご迷惑をお掛けしました」
「全く、シンシアはうっかりが結構多いんですよ。雷人もそのうち慣れると思いますよ」
「あはは、とりあえず端末からの転送が出来たので良かったです」
「あぁ、それ初期設定がオペレーター事務室だけなんですよね。犯罪者とかはスキャンも兼ねてるのであそこが良いんですけど。またこういうことがあるといけませんから、設定を追加しておきますね」
「ありがとうございます。それにしてもスキャン……なるほど、あそこに出るのにはちゃんと理由があったんですね」
ん? 最初の時にはいきなりここに連れて来られたけど、あれは良かったのか? まぁ、今更だし別にいいか。
そんな事を話していると服の裾をちょいちょいと引っ張られた。
引っ張られた方を向くとフォレオがソファへと歩いて行き、座って向かい側のソファを指差す。
それを見て、俺も歩いて行って促されるままにソファに座る。
「さて、それでは協力の件ですけど、うちは何をすればいいんですか?」
「ああ、そうだったな。えーと、正直な所を言うと……現状何も決まってなくてな。具体的にどうして欲しいとかは特にないんだ」
「……へ? こいつの相手をして欲しいとか、援護して欲しいとかはないんですか? せっかく凄腕のスナイパーが手伝ってあげるって言っているんですよ?」
「そうは言ってもなぁ。作戦を考えるのは会長だし、会長も新しい人員を連れて来るって言ってたからなぁ。そもそも情報が足りなさ過ぎて、どうすべきなのか俺じゃさっぱり分からないんだよ」
「何ですかそれ……」
呆れたような顔でフォレオが見てくるのでなんだか凄く恥ずかしくなってきた。しょうがないだろ。実際何も知らないんだから。
「とりあえず、力を貸して欲しくなったら合図を出すから、近くに待機しててもらうって感じでどうかな?」
「……まあ、別にいいですけど、はぁ……。相手の情報とか場所とか、分かってる範囲でいいので教えて下さい」
若干呆れられつつも説明していると、突然扉が開いて空とマリエルさんが入って来た。
「やぁやぁ、おはようかな。二人とも」
「あれ、マリエルさん? おはようございます。空はもう良いのか?」
俺がフォレオと戦ってる間に空はやることがないからと、ウルガスさんの所を訪れていたはずだ。すると空は拳を突き出して言った。
「うん大丈夫。ちゃんと武器も調整してもらえたからね」
そう言って超振動破砕グローブを見せてくる。
なんか少しデザインがカッコよくなった気がするが……じっくり見た事がないから正直よく分からないな。
「そうそう、マリエルさんがこの後は暇だから訓練に付き合ってくれるんだって」
「え? 良いんですか?」
「オッケー、オッケー。そうだ、久々にフォレオもどうかな?」
「……そうですね。お願いします」
「決まり! それじゃあ、三人で仲良くレッツ訓練かな!」
こうして訓練室に向かった俺達は、マリエルさんの元でビシバシと鍛えられたのであった。




