3-39 VSフォレオ7
「あなたの実力は十分理解しました。今度はこちらの番です。どうぞ、味わうと良いのですよ!」
そう言って張られた弾幕はやはり拳銃とは思えないほどに厚い。
一発一発の威力は雷盾で防げる程度だが、やはり拳銃でも弾丸は操れるみたいだ。
四方八方から飛んで来る弾丸に集中を切らせばやられてしまいそうだ。
それにしても……。
「くそ、ずっと思ってたんだが弾切れしないのか? 一体何発入ってるんだよ、それ! 本当に拳銃か!?」
「ふふふ、良いところに気付きましたね、お兄さん。この拳銃はウルガスに造ってもらった私専用の拳銃なんです。フォレオスペシャル二号。カッコよくないですか?」
「フォレオスペシャル二号? いや……ネーミングセンスはこの際置いておくが、一号があるのか?」
「ありますよ? 最初に使ってた狙撃ライフル。あれが一号です」
「ははは、じゃあガトリングとかショットガンとかは三号、四号ってか? 一体幾つまであるんだよ」
「それは……お楽しみってやつですね」
その言い方、まだ見てないのがあるんじゃないだろうな。
というか思わずツッコんじゃった所為で話が逸れたけど、特別製とか関係なくないか? 結局、弾はどれだけ入ってるんだよ。
その時、ふとあることに気が付いた。
おかしい、無い、無いぞ。
周りを見てもあるはずのあれが無いのだ。
「全部弾いてるのに……弾丸が一つも落ちて無い?」
「あれ、やっと気付いたんですか? 今うちが撃ち出してるのはただの弾丸じゃなくて水の弾丸なんです。ふふふ、ちゃんと圧力を掛ければ、水だって充分な威力になるんですよ」
「……っ!」
なるほど、そういえば銃撃音もほとんど無い。
もっと早くに気付くべきだった。
そうだとすればこの弾はフォレオの能力で作ってる物。
フォレオの主武器は銃だけじゃなくて、銃と水を操作する能力の複合だったのか!
つまり、フォレオは生命力が切れるまでは撃ち続けられる。
これでは弾切れは望めそうにないな。
「くそ、これ以上は耐えられないか」
「ほらほら、守ってばかりじゃ勝てませんよ」
周囲に展開している雷盾に段々と穴が空き始める。
ずっと集中を続けるのはなかなかに厳しい、雷盾を維持出来ない。
このままでは結局何も出来ずに終わってしまう。
そうなるくらいなら……、一か八かもう一度接近する!
「すぅ、はあああぁぁぁ! 授雷砲!」
「え? いきなり何なのです!?」
俺は手で銃の形を作ると可能な限りカナムを指先に集め、前方に向かって解き放った。
即席でやったとはいえ、充分な威力を発揮するカナムの奔流が迫る水弾を蒸発させながら突き進んでいく。
しかし、流石に全てというわけにはいかず、巻き込む事が出来なかった数発の水弾が足に当たる。
「ぐぁ! ま、だぁ!」
しかし、走る痛みに耐えて地面を強く蹴る。
視界を埋め尽くしていたカナムの奔流は一瞬で遠ざかり、視線の先には体勢を崩しつつもそれを躱しているフォレオが見えた。
授雷砲が通り過ぎたのを確認すると、こっちに視線を向けたフォレオはすぐに体勢を立て直してこちらに銃を向けた。
その立て直しの速さは流石の一言だ。
だが、それでも距離は詰まった。
「威力は凄いみたいですが、当たらなければ意味ないですよ!」
「ご忠告どうも、知ってるよ!」
再び放たれる水弾を跳び上がって躱し、空中に足場を作って縦横無尽にスーパーボールが密室で跳ね回るかのように高速で跳び回る。
結構難しいし体への負担もあるが、狙い通りフォレオはこちらの動きに対応し切れていない。
誘導出来る弾丸も補足出来てなければ意味がない。弾丸は一発も掠りすらしない。
「その動き、やっぱり厄介ですね。まるで曲芸です!」
「捉えたぞ!」
一度躱されていることを鑑みて、フォレオの斜め後ろ上方から跳び掛かり、しゃがんでも避けられないように攻撃を仕掛ける。
「これで、って!?」
「悪いですが、うちは銃専門じゃありません。接近戦も出来ますよ。ほらっ!」
無防備な背中を切りつけようとしたのだが、今度は躱すことなく、振り返りすらせずに器用に拳銃で受け止められてしまった。さらには、いきなり拳銃の先から刃が飛び出して腕を掠めた。
隠し刃!?
接近戦も織り込み済みと言うのは嘘ではなさそうだな……。
だとしても、ここで引くわけにはいかない。
フォレオが対応出来ようが、ここが俺の間合いだ。ここでやらないでどうするんだ!
俺は逃げないように自身に喝を入れたのだった。




