3-38 VSフォレオ6
「……思ったよりもやるみたいですね。フィアが認めるだけのことはあった、ということですか。これは予想外でした。驚かせてもらいましたよ」
「本当は今ので決めたかったんだが、流石に思い付きじゃ難しかったな」
「うちにここまで接近出来たのは素直に褒めてあげます。ですが、これで勝ったと思ってるなら認識を改める事ですね」
そう言うとフォレオは不敵に笑った。
そして、いつの間にか両手に握られていた二丁拳銃がこちらに向けられ、拳銃とは思えない速度の連射で弾幕が張られる。
「くそっ、息をつく暇もないな」
俺はバックステップで足場から飛び降りると、足場の鉄骨を掴んで体を振り、そのまま鉄骨のジャングルを跳ね回る。
足場は能力で作れるので、落ちる心配は全くない。
とにかく今はフォレオの死角に入り込む事だけを考える。
「なるほど、この場所を上手く使っていますね。下からも攻められるこの状況は些かうちに不利ですか」
「そういうことだよ。もらった!」
フォレオの背後に跳び上がった俺は振り向きざまに属性刀で切りつけた。
しかし、読まれていたのかフォレオはそれをしゃがんで回避した。
紙一重の回避、ここまで読まれてるのか!?
「攻撃の一瞬、一番気を抜いてはいけないタイミングですよ!」
フォレオは自身の両脇の間を通すようにして拳銃の銃口を俺に定めた。
腕の長さからして真後ろにいる俺は二丁同時に狙えないはずだ。なのにどうやって……って、親指をトリガーに掛けてる!?
「う、がっ!」
「もういっちょ!」
「ぐあっ! くそっ!」
雷盾でガードしたものの、至近距離で発砲された衝撃で体勢が崩れた。
そこにダメ押しの蹴りを食らい、地面に叩き落される。
「まだまだ行きますよ!」
「だあああぁ! させるかよ!」
上からショットガンを構えたフォレオが落ちて来るのを雷盾で遅らせつつ跳ね起きてその場を離脱する。
くそ、ショットガンをバカスカ撃ちやがって、防御に回した雷盾はものの一秒でハチの巣にされてしまった。逃げるのが少し遅れてたら俺もああなってたな。
「ライフルを使うのは分かってたが、ミサイル、ガトリング、拳銃にショットガンって、銃系統なら何でもありなのか?」
「何を言ってるんですか。使える物なら何でも使えた方が良いに決まっていますよ。せっかく異空間収納なんてチートなものがあるんですから、もっと有効活用するべきですね」
「ごもっともだな。だから俺もこんな使い方が出来る」
俺は属性刀にカナムを纏わせてフォレオ目掛けて投げつけると、同時に全力で走りだした。
「それはただの当てずっぽうって言うんです。武器がたくさんあるからって無駄遣いすればいいってものじゃないんですよ!」
そう言うとフォレオはショットガンを異空間に投げ込み、再び取り出した二丁拳銃による弾幕を張った。
当然投げた属性刀は撃ち落とされるが、込めたカナムが無くなるわけじゃない。
「無駄弾のつもりなんてないね!」
「つっ!? 油断させてからの放電っ!」
「もう一発、特大のも食らっていけ!」
属性刀に込めた分では怯ませる程度しか出来なかったが、集めれば十分に一撃必殺の威力になる。
掌に集めて圧縮した、一撃必殺の威力を秘めた球状のカナムを投げるようにして放った。
放電を食らったフォレオはすぐには動けない。
これで終わりだ。
「良い戦法ですね。ですが遅いです。その程度ではうちは倒せませんよ! ウォーターヴェール!」
カナムの球がフォレオとの間に出来た水の膜、というか最早壁に当たると爆発が発生した。
「おわっ!? いたっ! あだっ!」
その爆風で雷人は後ろに転がりビルの壁に激突、水蒸気が周囲を満たして視界を塞いだ。
またも攻撃が防がれてしまったが、あの爆発はフォレオのすぐそばで起きた。
俺よりもダメージがデカいはず……って。
「がっ! おいっ! 嘘だろ!」
肩に、腕に、足に、衝撃が走る。
まさか、まだ俺も体勢を立て直せてないのにもう反撃してきたのか!
「霧が、邪魔だ!」
カナムを薄い壁のようにして払い、霧を吹き飛ばす。
すると、こっちに二丁拳銃を向けたフォレオが現れた。




