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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第三章~ナンバーズウォー~
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3-32 端末の機能

 次の朝、けたたましいアラームの音に腕を伸ばして目覚ましを止める。


 朝の六時三十分、いつもよりも大分早いので意識もどこか朧気(おぼろげ)だ。

 だが(まぶた)(こす)って頭を左右に振り、眠気をどうにか吹き飛ばす。


 猶予(ゆうよ)は今日一日だけだ。

 のんびりと休んでいる暇はない。


 俺はすぐに着替えて空の部屋の前まで行くとドアをノックした。

 三秒待ったが返事がないので、カナムで(かぎ)を開けて中に入る。


 空は朝に弱い。外から起こしていたのでは時間が掛かってしまう。

 幸せそうに眠っている空から容赦(ようしゃ)なく布団を()ぎ取り、体を()する。


「空、起きろ。猶予(ゆうよ)は一日しかないんだぞ」


「んぇ? ちょ、激しい! 揺すり方が激しいよ! 起きる、起きるから!」


 空が起きたのを確認したら急いで一階へ行き朝食の準備をする。


 昨日の夜はシチューにしたので、それを温め直して食パンに付けて食べる。

 うん、お手軽だけどかなり美味(うま)い。


 一応急ぐ気はあるらしく空もがつがつと食パンに食らいつく。

 時間は大体七時くらいか、良い感じだな。


「よし、今日一日が勝負だ。やっぱりフィア達はまだ帰って来ないし、とりあえずはフォレオの説得だな」


「それと、出来れば特訓もしたいね。皆かなり強いみたいだし、少しでも強くならないと」


「だな。シンシアさん聞こえますか? シンシアさん!」


「……」


「あれ? 応答がない……もしかして朝早過ぎたか? いつもはもう少し遅いからな……」


「え? じゃあもしかして早起き(ぞん)? そんなぁ……」


 今までシンシアさんが呼びかけに(こた)えなかったことがなかったので気にしていなかったが、よくよく考えればシンシアさんだって人間だ。休憩もすれば眠りだってするし、休みの日もあるだろう。


 じゃあ……どうやってホーリークレイドルに向かえばいいのだろうか?

 そんな事を考えて端末をじっと見る。


 今までは特に必要が無かったので押したことがなかったが、端末には一つボタンが付いている。


 淡い期待を抱いてそれを押してみると目の前に突然ホログラムウインドウが現れた。

 技研にある仮想空間のあれみたいなやつだ。


「わ! こんな機能があったんだね」


「俺も初めて知ったけど……と、これはメニュー画面か」


 目の前にはずらりとアイコンが並んでいる。

 一画面に九個のアイコンが並んでおり、フリックすることでページが切り替わる仕様のようだ。


 会社の規定やお客様リスト、社員のアドレスリストなど項目は様々ある。

 メールや通信の機能もあるみたいなので、アドレスで調べればシンシアさんを(かい)さなくても他の社員との連絡も可能なのだろう。


 ただ開いてみると何やらロックが掛かっているのか使えなかった。

 使用するのに必要な権限でもあるのだろうか?


 まぁ、今はそれは置いておいて……あった。

 目当てのアイコンを見つけた。


 転送。


 これが可能ならばホーリークレイドルにも行けるはずだ。

 ロックが掛かっていないといいが。


「空、転送の項目があったからこれを使ってみるか」


「え? そんなのがあったの? じゃあ、今までシンシアさんに頼んでたのって?」


「さぁ? 何か理由があるのかもしれないが、それはまた後で聞くとして、とりあえず行こう」


「……うんそうだね。準備オッケーだよ」


 空のその言葉を聞き転送のボタンを押すと、視界が光に包まれた。



 *****


 目を開けるとそこは無数にモニターやキーボードのようなものがある少し薄暗い部屋だった。

 少し離れた所に椅子(いす)が三つあり、それぞれに誰かが座ってキーボードを打っている。


 見た事ない部屋だったので、きょろきょろと見回していると野太(のぶと)い声が飛んだ。


「ん? お前達、転送門に突っ立って何してるんだ? 俺達に何か用でもあるのか?」


 そして目の前の椅子(いす)が一つくるりと回った。


 その上にはピンク色の丸々と太った生物が乗っかっていた。

 インカムを付けてはいるものの、その見た目は手足の生えた卵と言ったところか。

 ここまで人型から離れた人と話す機会はあまりないから、何か緊張するな。


 隣で固まる空が腕を握って来た。

 確かにびっくりする見た目だけど、驚き過ぎるのは失礼だぞ。


「すみません。オペレーターと連絡が取れなくて、端末の転送を使ったのですが初めてだったもので」


 するとこっちを見たピンクの彼? の大きな目が細められた。


「ん? 少年どこかで……あぁ、嬢ちゃんのところのやつか!」


 ん? 会ったことはないと思うが……。

 そういえば、よく忘れてしまうがフィアは社長令嬢(れいじょう)だったな。

 そのフィアと一緒(いっしょ)にいれば知られててもおかしくはないか。


「多分そうです。それでフィアの待機室へ向かいたいんですが、道を知らなくて」


「なるほどな。今案内図を送ってやるからちょっと待ってろ」


「ありがとうございます」


 すぐに状況を理解してもらえて助かった。

 そして、送られてきた案内図に従って自分達の待機室へと向かうのだった。


 *****


「あれ? おはようございます、お兄さん達。例の問題はうちの力が無くても解決出来ましたか?」


 待機室に入ると同時に、こちらに気付いたフォレオが話しかけて来る。

 見回してもいるのはフォレオのみでシンシアさんの姿はない。


 フォレオはソファに座っていたが、(ひざ)の上には毛布が掛かっている。

 もしかしてソファで寝てたのか?


「おはよう、随分(ずいぶん)と早いんだな」


「おはよう、もしかして僕達を待っててくれたの?」


「……待ってなんていませんよ。と言うか、早く質問に答えてくれませんか?」


 そう言うと()ずかしかったのか、少し(ほほ)を赤く()めて早口で言い返してくる。


 協力してもらいたいし、仲良くしていきたいので怒らせても得はない。

 少し悪戯(いたずら)心をくすぐられるが、下手に茶化すのは止めて答えることにする。


「いや、思った以上に相手が強くて失敗したよ」


 俺がそう答えると、少し(けわ)しくなっていたフォレオの顔が(ゆる)んだ。

 なんだか嬉しそうだな。


「ふーん、そうですか。それで、うちに力を貸して欲しいわけですか。いいですよ、特別にうちが手伝ってあげます」


「いいの? やった!」


「ただし、約束通りうちと戦ってもらいますからね」


 空が喜びの声を上げると、フォレオは不敵(ふてき)な笑みを浮かべてそう言った。

 いやまぁ、そうくるのは分かってたことだけどな。


「そこに(こだわ)るんだな。何か理由があるのか?」


「……別に、気になるとかじゃないですよ。ただ、仮とはいえうちのチームに属するならうちの方が上だって教えておきたいですから」


 今のは気になるからってことで良いのか?

 なんか素直じゃなさそうなんだよな。


「俺はフォレオの方が上だと思ってるんだが」


「……ごちゃごちゃと言ってないで、さっそく戦いますよ」


 そう言うと立ち上がってフォレオが出て行くので、その後に続き仮想訓練室に向かう。

 この戦いだって訓練の内だ。


 まだものに出来ていないので使っていなかったが、実は時々マリエルさんを捕まえて教わっていた剣術。


 これもそろそろ実戦レベルにしておきたい。

 実戦で使えるかどうか、フィア以外のA級を相手に出来るまたとない機会だ。


 今回の相手は生徒なので使うこともないと思うが、出来ればこの機会に試しておきたい。

 そんな思惑(おもわく)と共に俺はカプセルに入って目を閉じた。

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