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SSC ホーリークレイドル 〜消滅エンドに抗う者達〜   作者: Prasis
フロラシオンデイズ 第三章~ナンバーズウォー~
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3-18 情報を集めて、場を動かす

「手伝って……欲しい事?」


「うん、僕だって別に置物(おきもの)の会長じゃないって事だよ。雷人君にも(たま)にお願いしてたけどね。生徒会は学校周辺の治安維持(ちあんいじ)も担当しているんだ」


「治安維持って、また不良退治(ふりょうたいじ)でもさせる気ですか?」


「まさか、そのくらいなら君達の手を借りるまでもないよ。もう知っていると思うけど、隼人は強い。同じく、光葉もね」


「当然です」


 強いと言われたのが嬉しいのか、天音さんが胸を張って自慢(じまん)げな表情をする。


 今まではただ、真面目な顔で会長の側に(ひか)えている所しか見た事が無かった。

 だから、真面目でお(かた)い感じの人だと思っていたのだが、意外とお茶目(ちゃめ)な一面がありそうだ。


「それじゃあ何を?」


「説明しようか。実は昨日の(ばん)に、ある能力開発の研究所が襲われたんだ。それで各担当地域を警戒するようにという通達が生徒会にも来た。僕はこれに是非とも対処したいと思っていてね。根回しってやつだよ。国に恩を売っておけば今後動き易くなるだろう?」


 研究所の襲撃(しゅうげき)

 研究所はその性質上、特別厳重な警備の置かれる施設のはずだ。


 他国の者が情報を得ようとする事を警戒して、武装した者が何人も待機しているのが常で、侵入がバレればすぐに特殊治安部隊(スキルナイト)の隊員が駆け付けるなんて話を聞いた事がある。


 そこを襲撃して逃げ延びたというのか? 俺は驚きつつも会長の言葉に思った疑問をそのまま口にする。


「根回しって、そもそもそんな事態なら特殊治安部隊(スキルナイト)の仕事じゃないですか。学生の出る幕は無いはずですよね?」


「もちろんその通りだよ。通達が来たとはいえ、それはあくまで発見次第通報しろと言う意味で自分達で対応しろという意味じゃない。勝手に学生が出しゃばったら特殊治安部隊(スキルナイト)も良い顔をしないだろうね」


「それだと根回しどころか逆効果なのでは?」


 唯が首を傾げながら尋ねると会長は深く頷きながら答える。


「唯君の言う通りだよ。まぁ、根回しっていうはちょっとした冗談(じょうだん)さ。表向きには巡回(じゅんかい)をさせるくらいかな。それほどの(おん)は売れないよ」


(まぎ)らわしい冗談はやめて下さいよ。……表向きってことは、俺達に裏で何かをさせるってことですよね。どうしてそんなことを?」


「今回はちょっと事情が特殊でね。それと今回の襲撃者、なんとも用意周到(よういしゅうとう)だよ。監視カメラを全て(つぶ)したうえに証拠(しょうこ)も残さず消えたんだ。とんでもないやり手だね」


「え? じゃあ、特殊治安部隊(スキルナイト)は犯人が誰かも特定出来ていないって事?」


「何がしたいのか知りませんけど、それだったら俺達だってどうしようもないじゃないですか」


 俺と空は会長に文句(もんく)を言った。

 特殊治安部隊(スキルナイト)に出来ない事を一般人の俺達がどうにか出来るとも思えない。


 指輪(スキルリング)のおかげもあって、そこらの特殊治安部隊(スキルナイト)の隊員よりは強い自信があるが、有名な赤城さんのような隊員にはとてもでは無いが(およ)ばないだろう。


 まして、犯人の特定ともなれば門外漢(もんがいかん)だ。

 こんな少人数の集まりより、組織の力が(まさ)るのは明白だ。


 そのうえ、既に問題を抱えている身としてはあまり時間を()くことは難しい。


 会長は飄々(ひょうひょう)としているが、実際やり手だからな。

 俺達のそんな考えを分かってないはずはない。


 やっぱり考えがあるのだろう、会長は何気ない様子で続けた。


「そうそう、普通ならそうだね。だけど、さっき言ったように僕には優秀な部下がいる」


「……まさか、襲撃者を特定しているんですか? だったら、それを特殊治安部隊(スキルナイト)に通報すればいいじゃないですか。能力研究は重要な機密(きみつ)のはずですし、そうすれば恩が売れますよ」


「いや、それは出来ないね」


「出来ない? どうしてですか?」


「考えてもみたまえよ。そんなことをすればその情報をどうやって手に入れたのか。それを聞かれるのは当然だろう? 僕にそんな力がある事が知れれば、国に目を付けられるじゃないか。それは許容できないね」


 言われてみれば確かにそうだ。

 過度な情報収集能力は国にも忌避(きひ)されるだろう。


 やっぱり会長は意外と考えているんだよな。

 (だる)そうにしているのをよく見ているからか、上で踏ん反り返っている駄目人間にしか見えないんだよなぁ。


 能ある(たか)は爪を隠すか?

 俺は心の中で会長の評価を少しだけ上げた。


「それで自分で捕まえようと……いや、自分達で捕まえても結局どうして犯人が分かったかは探られるじゃないですか。やっぱり根回しにならなくないですか?」


「あぁ、そうだね。さっきも言ったけど、冗談だよ。それ」


「いらない冗談を言わないで下さい」


「ユーモアだよ、ユーモア。まぁ何にしても、僕達は動かなくてはならないんだ。ここからが本当の本題になるね。実は、僕達が積極的に動かなければならない一番の理由でもあるんだけど……襲撃者は五人。全員、我が校、椚ヶ丘(くぬぎがおか)の生徒なんだ」


「な!?」


「それは……」


「嘘!?」


 俺達は驚いた。

 学生が研究所を襲撃?

 前代未聞(ぜんだいみもん)の事態だ。


 会長が内密に解決したいというのも(うなず)ける話だ。

 自分が生徒会長をしている学校から犯罪者が出たとしたら、評判も悪くなりかねない。


 会長は俺達の反応に満足げに頷くと続けた。


「襲撃者五人の名前は、剱持祭(けんもちまつり)天衣花蓮(あまいかれん)五郭心(ごかくこころ)御嵩花南(みたけかなん)、そして……天音光葉(あまねみつは)、我が校が(ほこ)る女子生徒のナンバーズ達だよ」


「え?」


 俺達三人は今日何回目かも分からない驚愕(きょうがく)と共に、(くだん)の襲撃者の一人、会長の側に立つ天音さんを見て、会長を見て、もう一度天音さんを見て言った。


「えーーーっ!?」

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