3-17 波島誠也と二人の親衛隊
「さて、どこから説明したものかな。すぐに本題に入るのもいいけど、……色々と気になってるよね?」
部屋の奥にはいかにも高級そうなソファに腰掛け、いつも通りヘッドホンをしている生徒会長と、なぜ私室にいるのか非常に疑問だがベレー帽にネックウォーマーが特徴的な少女、天音光葉がいた。
二人とも俺にとってはもはや顔馴染みの生徒会の二人だが、一体隼人とどういう関係があるのだろうか?
「もちろんです。隼人がどうして俺を襲ってきたのか、生徒会長とはどういう繋がりなのか、……教えてもらえますか?」
「そうだね。簡潔に言ってしまうとね。隼人と光葉、二人は僕直属の部下なんだ」
「はい、その通りです。私の身は、誠也様のためにあります」
天音さんは生徒会長の言葉に間髪入れずにそう言った。
そんなセリフ……漫画くらいでしか聞いたことないんだが?
生徒会長のことを敬い過ぎではないだろうか?
対する隼人はと言えば、軽い感じで言った。
「まぁ、あれだ。いわゆる親衛隊って奴だな」
「親衛隊?」
「てっきり隼人君が実は生徒会に入ってたってだけなのかと思ってました」
その回答に俺達は一瞬呆然とする。
親衛隊ってなんだよ。これまた漫画くらいでしか聞いた事の無い単語だぞ。
いや、親衛隊だとしても同じ家に住んでいるのはどうなんだ?
全く腑に落ちていない事を俺達の顔から察したのか生徒会長が続けて補足する。
「細かい話はプライバシーとかがあるから出来ないけどね。二人はうちで雇っているんだよ。住み込みって奴さ」
「住み込み……なるほど。それで隼人君の家はここというわけですか」
「二人とも……。何か事情があるってことですね?」
「そういう事。まぁ、察してくれ」
隼人が笑いながら言う。
俺達にだって言いたくないことはあるからな。
そこをこれ以上掘り下げるのは無粋というものだろう。
俺達がとりあえず納得をしたのを見計らって生徒会長が続けた。
「光葉には常に僕の側についてサポートをしてもらってるわけなんだけどね。隼人にはちょっと特別な仕事をしてもらってるんだ」
「……それが情報収集ですか?」
「ご明察。その通りだよ。何となく分かっているかとは思うけど、彼はナンバーズの一人で少し特別な力があるんだ。それを役立ててもらっているわけだよ」
やっぱりナンバーズだったのか。
かなり強力な力だったし、薄々そうじゃないかとは思っていたが。
そして、隼人が諜報を行っていることは会長と隼人に繋がりがあることが分かった時点で推測が出来た事だ。問題は……。
「そこでここからが本題なんだが……雷人君、君は宇宙人の存在を信じるかい?」
「っ!」
宇宙人?
会長は今、宇宙人と言ったのか?
これはどう捉えるべきなのか。
宇宙人がいる事を既に知っていて、それを匂わせているのか?
それとも、何かしらの情報を掴んでいて俺達から聞き出そうとしているのか。
しかし、話を出すタイミングからして……。
恐らく顔に出ていたのだろう。
生徒会長が笑いながら言う。
「ははは、君達には隠し事は向いていないね」
「……どこまで知ってるんですか?」
隼人の力で情報を探っていたのならば、最悪全て知っている可能性も考えられる。
……どうなんだろうか?
正直、会長に知られてしまった事がどのくらいまずい事なのかもよく分からない。
宇宙人の存在を隠しているのはパニックにならないようにするためだとは思うが、邦桜……国自体が関わっている事だ。
その内情までは知る由もない。
漫画だと国の暗部みたいなのが口封じに動く場面だが。
現実にそんなものが存在するのだろうか。
「僕も常に隼人に見張らせていたわけじゃない。とはいえ、SSC、ホーリークレイドルの存在と、君達がそれに加わった事。邦桜が何者かの襲撃を受けている事は知っているよ。とりあえず、安心して欲しい。この話はここにいる僕達三人でしか共有してないからね」
「ほとんどご存じという事ですね……。こんな話をするんです。何か要求がありますよね?一体どんな要求を?」
咄嗟の事に言葉に詰まる俺と空を後目に唯が尋ねる。
こういう時の彼女の胆力には驚かされるな。
それに対して会長は笑って答えた。
「別に脅しているわけじゃないよ。邦桜の危機に関しては僕達の危機でもある。そちらについては必要とあらば、協力は惜しまないということさ。ちょうど良かったから話しただけで、ホーリークレイドルの方々や君達をどうこうしようという気はさらさらないよ」
「そ、それじゃあ、何の目的で?」
空が緊張したように尋ねると、会長が珍しく真剣な顔で答える。
「ちょっと、君達に手伝って欲しい事があるんだ」




