3-15 影の主の謀りごと
「何だよ、これ!?」
直径十メートル程の広範囲の陽だまりがそこには存在した。
しかし、そこは別に空き地などではなく、周りには他の場所と同じく木が乱立していて、空を見上げても葉が生い茂っていてまばらにしか陽が差し込んでいる様子はない。
黒い動物、軽さ、不自然な陽だまり。
ここまで揃えば馬鹿でも分かる。
「なるほど、影か!」
俺はそれを理解した瞬間、翼を形成して空に向かって飛び上がった。
それと同時に周囲の木の葉や枝の裏に残っていた影が収束し、槍を形作って襲い掛かって来る。だが、俺の方が幾らも速い。
影の槍は俺の通った軌跡を通り過ぎ、俺は影が追い付いて来る前に枝を突き破って空に飛び上がった。
そして、ある程度の高さに上がったら滞空する。
正直、学校で知られている俺の能力には飛ぶような力はない。
これはさすがに電気で有りえる芸当ではないのは明白だ。
見られたくはなかったが、この状況では仕方がないだろう。
とはいえ敵の能力が影である以上、疑問も氷解したというものだ。
そんな能力があるなど正直驚きだが、考えられる答えは一つ。
「おい、そこに隠れているんだろ? 俺の力は光だって出せる。その影を全て消したら……一体どうなるんだ?」
俺は樹の天辺、そこに落とされた自分の影に向かって話しかけていた。
見ているはずなのに探知出来ず、速く移動しても見られている。
つまり、敵の隠れ場所は……俺自身の影の中だ。
「はははは、まいったな。まさかバレるなんてな! 降参だ、降参!」
「その声……隼人か!?」
影の中から人の腕が出て来て樹の天辺を掴むと、そのまま頭が出て来て、器用に天辺に立った。
それは紛れもなく、友人の新島隼人だった。
「ご明察! ちょーっとばかし遊ぶだけのつもりだったんだけどなぁ。思った以上に強いな。雷人」
俺は頭の中が混乱していた。
隼人がここまでの能力を持っていたこともそうだが、何よりどうして隼人が俺を襲ったのか、それが全く分からなかった。
「色々と聞きたいことがあるんだが……。とりあえず一発殴らせろ。俺の純情を弄んだ罪は重いぞ?」
「あ、いやそれは悪かったって、ほらちょっと待てって……な? ……ここじゃ何だし、別の所で話そうぜ。お前達もそれでいいだろ?」
俺の怒りの理由に思い当たったらしく一歩後退る隼人。
木の天辺に立っているくせに落ちない辺り、なかなか手馴れてるな。
どうやら、俺は隼人の事を全然分かっていなかったようだ。
隼人にも何か理由があるのかもしれないが、それとこれとは話が別だぞ?
そんな怒り八割の思考の中で、ふと隼人の言葉が一つ引っかかったのは奇跡と言ってもいいだろうか。
拳をポキポキと鳴らしながらも俺はふと浮かんだ疑問を口にする。
「……お前達?」
俺がそう言うとガサガサっと木々が揺れ、枝の間から空と唯が顔を出した。
「な、何で二人が!?」
「あはは、ごめん。ちょっと気になっちゃって……。遠くから見てるだけのつもりだったんだけどね」
「もう少し遅かったら割り込んでいました。まさか隼人君だったとは」
全く気付かなかった。どうやら俺の索敵圏外にいたみたいだ。
身体強化を使えば視力も上がるからな……。
危なかった。もし生徒会の用事だと言っていなかったら告白を期待していた事がバレていたかもしれない。
……ん? 二人がいたらバレるから隼人を殴れない……謀ったな!?
「いや、色々と黙ってて悪いな。後で教えられる範囲で経緯は話す。それじゃ、行くぜ。付いて来てくれ」
しぶしぶながら、隼人の指示に従って木の天辺から降りるとその後を付いて歩きだした。
「面白い」「続きが気になる」と感じたら、
下の ☆☆☆☆☆ から評価を頂きたいです!
作者のモチベーションが上がるので、応援、ブクマ、感想などもお待ちしています!




