3-9 そんな心配はしてません!
「そうですか。そんな事が……」
「あぁ、だから空もちょっとどう対応するべきか悩んでるんだよ」
「シルフェは悪い子には見えないんだけどね。どっちかというと天然な子に見えるかな。一応、仲良くはしていきたいと思ってるけど……僕には恋愛とかはよく分からないよ」
俺達は今、学校の演習場にいる。
俺達の通う椚ヶ丘超能力専門高等学校は、専門学校とは言っているが普通の高校と大きな違いは無い。
違いと言えば一日に一時間だけ能力を強化、またはコントロールするために能力を使用出来る時間が設けられていることくらいだ。
今は昼食を終えて五限目の時間。
能力の使用を認められる能力制御の授業時間だ。
授業とは言っているものの生徒それぞれに能力も違うため、特に教員が教えてくれるということはない。
教員は注意喚起と何か起きた時に対応するべく控えているだけだ。
とはいえ、普段は能力を使用出来ない生徒達にとっては数少ないお咎め無しで能力を使える時間なので人気の授業ではある。
こんなでも能力の制御の向上やストレス発散などの効果が期待出来るし、能力者にとっては割と必要な時間だったりする。
そんな中、俺と空は一昨日帰ってからの事情を唯に説明していたのだ。
この授業は広い演習場で行われるので周りに人がいない状況を簡単に作れるし、何もしていなくても怒られることもないので都合が良かったのだ。
「まぁ、良い機会じゃないか。これを機に女子との触れ合いに慣れるんだな」
「そんなこと言って、雷人だって女子との触れ合いになんて慣れてないじゃん」
「なっ! 俺は別に……いいんだよ」
「シルフェさんはスキンシップが激しいのですね……」
唯がこっちを見て顔を赤くしている。恐らく、何かしらを想像したのだろう。
……百合な展開も眼福かもしれないが、芽衣達とのやり取りから無差別って感じじゃないからな。多分、そんな事にはならないだろう。
「大丈夫だよ。スキンシップが激しいのは空に対してだけだからさ。俺や唯が心配することじゃない」
「そ、そんな心配はしてません!」
「僕の心配はして欲しいんだけどな……」
唯は顔を真っ赤にして否定し、空は苦笑いを浮かべている。
なんとも平和な状況に自然と笑みが零れる。
以前は何とも思わなかったが、命の危機に何度か遭った所為だろうか?
当たり前の日常の大切さが感じられるようになったのかもしれない。
多分、俺はこれを守るために戦っているんだろう。
「まぁそういう訳で、とりあえずフィアとシルフェは研修として三日くらいかけて適当な依頼をこなしてくるらしいから、それが終わったら唯も紹介しないとな」
「はい、そうですね。ちょっと楽しみです」
唯が柔らかく笑って見せる。
それを見て改めて久しぶりに平和な時間を過ごしているような感覚になる。
フィア達が来てからというもの、修行や襲撃への対応で忙しかったからな。仕方のないことか。
そういえば、家に帰ってもフィアがいないというのも久しぶりな気がする。
久々にゆっくり羽を伸ばせるな。
そんな事を考えていると、何やら後ろから軽く肩を叩かれたのだった




