3-6 新たな指輪
レジーナに手を引かれるままに崖にやって来た俺は、レジーナに促されて崖に足を放り出して座った。その隣にレジーナがちょこんと座る。
「えへへ、綺麗だね。お星さま」
「星? ああ、そうだな。確かに綺麗だ」
さっきまでは全く気にしていなかったので気付かなかったが、見上げてみると夜空一面に星が浮かんでいた。
もちろんこれも仮想空間のシミュレートによるものなんだろうが、綺麗なものは綺麗だ。
わざわざ難癖付ける必要もないだろう。
「今日はありがとね。久しぶりに運動出来て楽しかったよ」
急にレジーナがそんなことを言った。
俺としては速攻で負けただけなのでお礼を言われるようなことは一切していないのだが、そう思ってくれるのならそれでいいのだろう。
「ああ、こっちこそありがとう。いい経験になったよ」
「うふふ」
レジーナの方をふと見ると笑っていた。
その顔は見た目相応の無邪気さを感じさせ、普段の問題児というイメージを忘れさせた。
いや、ちがうか。
どっちもレジーナなんだろう。
「お兄さんさ。電気っぽい能力なんだよね?」
「ん? ああ、そうだな。一応カナムって名前を付けたんだが、確かに電気っぽいで間違ってない。よく分かったな」
「おっちゃんから聞いてたからね。それで、よくは知らないんだけどさ。お兄さんの遠距離攻撃ってそのカナムってやつしかないんでしょ?」
「うん? まぁ、そうだな」
「そしたらさ、これをあげるよ。私が作った指輪」
そう言って差し出された指輪を手を出して受け取る。
まさか新しく指輪が貰えるとは思わなかった。……いや、でもこれレジーナ製なんだよな。これって俺に扱えるのか?
せっかくくれたのに申し訳ないが、着けるかどうかは性能次第なところはあるだろう。
そう思ってレジーナに尋ねる。
「ありがとな。それで、これは何の能力の指輪なんだ?」
「これはねー。金属を出す能力だよ」
「金属? えっと、金属を出すだけなのか?」
金属を出すとはまた何とも言えない能力だな。
金属の性能次第では使い道はあると思うが……、でも言い方からして多分素材としての金属だろうからな……。まぁ、ピーキーすぎて使えないって事がなさそうなのは良いことか。
そんなことを考えているとレジーナが補足の説明をした。
「あ、今使えないって思ったでしょ? これは結構優れモノなんだからね! イメージした通りの形状の金属が出せるし、やろうと思えば金属の種類も変えられるんだよ! しかも、デフォルトは私が調整した特殊な金属にしてあるんだから! そのカナムってやつとの相性は抜群だよ!」
「相性が抜群? 何でそんな事が分かるんだ?」
「あーっと……実は試料をちょっと拝借してさ。おっちゃんには言わないでよ! 私が怒られるんだからね!」
「って事は俺のためにわざわざ作ってくれたのか? そっか、分かったよ。うん、有難く頂くよ」
「えへへ、そうそう! 貰える物はちゃんと貰っておかなきゃね!」
「……それで、これが遠距離攻撃と何の関係があるんだ?」
「もう、お兄さんは鈍いなー。金属作れればそれで弾作って飛ばせるじゃん? ほら、レールガンってやつだよ、レールガン! カナムの弾って多分さ。物理的な威力じゃなくて、その圧縮したエネルギーで焼き切るような使い方でしょ? だったらそのままカナムを飛ばすだけよりも重みのある攻撃の方が良い時もあると思うんだよね」
なるほど、確かにレジーナの言う事は一理ある。
雷弾射撃は焼き切ると言うほどの出力は無いが、授雷砲とかは完全に焼き切る感じの使い方だ。
それの質量重視バージョンが使えると思えば、確かにありがたい。
物理ダメージが重要なことだって多分あるだろうからな。それに……。
「なるほどレールガンね。カッコいいなそれ!」
「でしょ? そうでしょー?」
レジーナは足をブラブラさせながら得意気に笑った。
出来るだけすぐに力が欲しかった俺としては本当にありがたい話だ。
レールガン。実に中二心をくすぐる響きじゃないか!
何と言うか、凄く良いな! また、一つ新たな武器が加わった。
それに金属を作り出す力は他にも応用出来そうだし、汎用性も高そうだ。これは早速練習が必要だな。
「なぁ、レジーナ。しばらくここ借りてもいいか? 少し練習していきたいんだが」
「うん、いいよ。じっくり練習していってよ。目の前で使ってくれたら私が調整も出来るしね」
こうして俺は一日かけて新しい力を得るべく練習に励むのだった。




